さて、前回は様々な角度から情報を収集しました。

今回は、収集した情報から仮説を作ることを考えたいと思います。

収集した情報を見ると、何が問題かということが浮かび上がってくるはずです。

ここでの作業は、様々な問題をまず列挙するということです。

始めは、あまりこだわり先入観を持たずに、データが示すまま、なるべく数多く問題を列挙することが必要です。

多少変かもしれないとか重要でないかもしれないといったことも切り捨てずにまず取り上げるのです。

この結果、もしかすると10以上の問題が列挙されることになるかもしれませんが、それでよいのです。

何故ならば、始めから問題を選択してしまうと、今後の判断できる範囲が狭まってしまい、判断を誤ることになりかねないのです。

さて、10以上の問題点が列挙されたとします。

ここで仮説を作るには、次のような手法があります。

1 帰納法
2 KJ法

帰納法は、多くの事象に共通点を見出して、法則化していく推論法です。

帰納法
出典ナビゲートナビゲート ビジネス基本用語集の解説
類似の事例をもとにして、一般的法則や原理を導き出す推論法のこと。演繹法の対義語で、帰納的推論ともよばれる。 例えば、次のような推論が帰納法に当てはまる。 (a)このカラスは黒い(事例1) (b)そのカラスも黒い(事例2) (c)あのカラスも黒い(事例3)      (d)ゆえに、カラスは黒い(法則) ここでは3つの事例(a)(b)(c)について言えることを一般化して(d)の法則を導き出している。ただし、この法則はありうる事例をすべて調べて導き出したものではないため、例えば「白いカラス」といった、法則の例外が出てくる可能性は十分にある。それゆえ、帰納法で得られる法則は必ず正しいというものではなく、ある程度確かであるというに留まる。

10以上の問題点があった場合、その内容を分析していくと、共通の原理・理由がわかってくることがあります。

この共通した原理・理由を列挙していけば、本質的な問題の仮説を作ることができます。

即ち、帰納法を適用することで、多くの観察事項(事実)から類似点をまとめ上げることで、結論を引き出すことができるのです。

出典 オールアバウト ロジカルシンキングの代表的な手法とは?
例えば、「A社は新製品が出ていない」「A社の従業員が多くやめている」「A社から支払いの先延ばしがあった」といういくつかの事実から、「A社は経営難に陥っている」という結論を引き出すというものです。帰納法は、複数の事実を元にして論理を展開するため、客観的で説得力のある理由付けができるようになります。観察事項(事実)を積み重ねて結論を出すところは、「理科の実験」的な考え方といえそうです。
帰納法では「納得感」が大事です。観察事項が適切でなかったり、少ない観察事項からむりやり結論を引き出そうとすると、「納得感に欠けてしまう」ことがあります。

次に、収集した情報が、ばらばらで関連性が見つけにくい場合はどうしたら良いでしょうか?
この場合は、KJ法がとても有効な手法です。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
KJ法とは、文化人類学者川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)がデータをまとめるために考案した手法である。データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめてゆく。KJとは、考案者のイニシャルに因んでいる。共同での作業にもよく用いられ、「創造性開発」(または創造的問題解決)に効果があるとされる。
川喜田は文化人類学のフィールドワークを行った後で、集まった膨大な情報をいかにまとめるか、試行錯誤を行った結果、カードを使ってまとめてゆく方法を考え、KJ法と名付けた。またチームワークで研究を進めてゆくのに効果的な方法だと考え、研修方法をまとめ、『発想法』(1967年)を刊行した。それ以降、川喜田が企業研修や琵琶湖移動大学などで指導を行い、普及を図った。
次第にKJ法の名称も一般化し、企業研修や学校教育、各種のワークショップなど様々な場面で広く用いられるようになった。(大学で経営工学などを専攻するとカリキュラムの中で集中的に取り上げられることもある)
フィールドワークで多くのデータを集めた後、あるいはブレインストーミングにより様々なアイディア出しを行った後の段階で、それらの雑多なデータやアイディアを統合し、新たな発想を生み出すためにKJ法が行われるのが一般的である。

KJ法は発想法として紹介されることが多いのですが、定性的データの分析手法としても大変優れた手法です。

KJ法を適用することで、一見関連性が無いように見える事象が実は深いところでつながっていたりすることが理解できるようになります。

次に、幾つか仮説ができた場合、その重要度順に並べる必要があります。

こうした時に、活用できるのが、内因性と対偶です。

まず、内因性を考えてみましょう。

一般的に解決しようとする課題は実は複雑であり、数多くの問題点が関わっているのです。
そして、問題点が列挙されるということは、どれもが、少しずつ解決しようとする課題にたいして寄与率を持っていることを表しています。

寄与率を持っているということは、問題を引き起こしているある程度原因であるということです。

しかしながら、寄与率の低い問題を対策しても、大して改善は期待できません。

それは、寄与率が低い、つまり、その原因がなくなっても、問題のほんの少ししか、解決ができないからです。

これは、自分やグループメンバーで重要度を判断することです。

可能性がある原因を重要順に並べ替えて、例えば上位3つを採用するのです。

ただ、闇雲に判断しても良い結果が出るとは限りません。

内因性を考えるということは、本当にそれが原因か、を掘り下げていくという方法です。
例を挙げてみましょう。

ある製品の売り上げが減少しているとします。

ある人が、「売り上げ減少の原因は、競合他社から新製品が出たからだ。だから、我が社も新製品導入を検討すべき」だと主張をしたと仮定します。

ここで内因性を考えると次のような質問をすれば良いのです。

「他社新製品が、当社の売り上げの何パーセントを奪ったのですか?」

当然、他社新製品が原因で売り上げが減少したことは事実でしょう。

しかしながら、重要なのは、それが大きな寄与率を持っているかを見極めることです。

もしかすると、新製品自体ではなく、短期的な価格政策、広告、店頭プロモーションの提供が大きな影響を与えているかもしれないのです。

例えば、新製品導入時にキャンペーン価格を導入した場合、キャンペーン終了後、売れなくなってしまうこともあります。

広告も露出が多いと当然製品を購入する割合が増えます。しかし、広告終了後はどうなるのでしょうか?

また、店頭プロモーションが功を奏して、一時的に販売が増える場合もあります。店頭プロモーションが終了したらどうなるのでしょうか?

こうした様々な要因を分析して、何が寄与率の高い原因かを深く検討することが必要なのです。

このように内因性に着目すれば、深く物事を追求できるのです。

重要性を判断するもう一つの手法が対偶です。

仮に、あなたが新製品の導入の責任者であるとします。

しかしながら、あなたの担当の新製品の売り上げが上がらなかったとしましょう。

そして、その原因を分析しているとき、宣伝広告を担当している人が、原因を宣伝広告の予算が少なかったからと決め付ける発言をしました。

「店頭プロモーションが不十分だったので、新製品の売り上げが予定の数字まで行かなかった。私はもともと宣伝広告の費用を50%増やすように要請をしていたのだが、それが認められなかったからね。」

あなたは、この発言が正しいかどうか判断しなければなりません。

では、どんな質問をしたら良いですか?

多くの場合、多数の要因が、少しであってもそれぞれ寄与率をもっているケースが多いのです。
そのなかで、最も寄与率の大きい要因を見つけ出すことが重要となります。

もし、ある要因、例えば、店頭プロモーション、の寄与率が大変大きかったとすれば、次の質問にYesと答えられるはずです。

「では、店頭プロモーションを50%増やせば、新製品の予定した売り上げを達成可能だったのですか?」
この質問は、実は「対偶」という手法を使っているのです

では、対偶の定義をまず見てみましょう。

たいぐう 0 【対偶】
〔数・論〕〔contraposition〕一つの命題「 p ならば q である」に対して、その後件の否定を前件とし、前件の否定を後件とする命題「 q でなければ p でない」をいう。ある命題が真ならば、その対偶も必ず真である。(三省堂提供「大辞林 第二版」より)

かなりわかりにくいですね。
具体例でこれを解説してみましょう。

まず、今回の問題提議の発言をもう一度見てみましょう。

「店頭プロモーションが不十分だったので、新製品の売り上げが予定の数字まで行かなかった。私はもともと宣伝広告の費用を50%増やすように要請をしていたのだが、それが認められなかったからね。」

この場合、pとq及び「pでない」と「qでない」は次のようになります。

p:「店頭プロモーションが不十分」
q:「新製品の売り上げを未達成」

pでない:「店頭プロモーションが十分」
qでない:「新製品の売り上げを達成」

よって、次が成り立ちます。

「 p ならば q である」:「店頭プロモーションが不十分」なので、「新製品の売り上げを未達成」だった

「 q でなければ p でない」:「新製品の売り上げを達成」するには、「店頭プロモーションが十分」であればよい

対偶は、命題「 p ならば q である」を直接証明するのが難しいとき、「ある命題が真ならば、その対偶も必ず真である」ことを利用して、対偶が成立するかを見ることで、命題が真であるかを確認するときに良く使われます。

つまり、「 p ならば q である」が真であるかをチェックするのに、対偶である「 q でなければ p でない」が成立するかを見ればいいのです。

では、対偶をもう一度見てみましょう。

「 q でなければ p でない」:「新製品の売り上げを達成」するには、「店頭プロモーションが十分」であればよい

状況によって、この答えは、Yesでもあるし、またNoでもありうると思います。

しかしながら、本当に「店頭プロモーション」が寄与率の大きな要因でない限り、Yesの答えを出すのは難しいでしょう。

以上、仮説を作るための手法として帰納法とKJ法、重要度を判断するための手法として内因性と対偶を紹介しました。

次回は、再調査をしながら、その仮説を検証することを取り上げてみましょう。

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