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ディベート解説 応用編

ディベート解説 応用編【TPP】

ディベート教育の考える応用編とは、理論編で学んだディベート思考の基本を、実際の複雑な問題に適用の仕方して、深く問題を考察するものです。

社会やビジネスで毎日皆様が遭遇する問題は、いつも大変複雑なものです。 しかしながら、その複雑な問題は、基本をひとつづつ適用していけば、理解しやすくなります。こうして、一見複雑そうに見える問題を、具体的に問題を深く掘り下げて理解することができるのです。

ディベート思考を身につけるには、多くの問題に触れて、その応用の仕方を学ぶことが大切です。具体的な事例を一緒に考えながら、是非ディベート思考を身につけてください。

ここでは、TPP参加のメリットと問題点を考察していきましょう。

TPPの定義と参加のメリット

環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を表明へ

出典: 読売新聞 2011年10月9日

野田首相は、11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を表明する意向を固め、関係省庁に参加表明に向けた準備に着手するよう指示した。

 複数の政府関係者が8日、明らかにした。APECの加盟国のうち、米国など9か国がTPPの大枠合意を目指して交渉を進めており、首相は、ルール策定段階から日本が関与することが必要だと判断したとみられる。

 TPP参加を巡っては、関税が下がることで国内市場が外国産品に席巻されることを懸念し農業団体などが反発している。与党内では農業関係議員らが 議員連盟を結成し参加反対を求める署名活動を行っている。政府内でも、鹿野農相らが交渉参加に慎重な構えを崩していない。首相が今後、政府・与党や関係団 体をどう調整するかが焦点になる。

さて、TPPという言葉がマスコミで取り上げられることが多くなりましたが、皆様はご存知でしょうか?

ディベートの基本として、TPPとは何か調べてみましょう。

TPPとは

出典: 新語時事用語辞典

別名:環太平洋経済協定、環太平洋連携協定、環太平洋戦略的経済連携協定、環太平洋パートナーシップ、環太平洋パートナーシップ協定、太平洋間戦略経済連携協定、トランス・パシフィック・パートナーシップ
英語:Trans-Pacific Partnership、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement

2006年にAPEC参加国であるニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4ヵ国が発効させた、貿易自由化を目指す経済的枠組み。工業製品や農産品、金融サービスなどをはじめとする、加盟国間で取引される全品目について関税を原則的に100%撤廃しようというもの。2015年をめどに関税全廃を実現するべく協議が行われている。

2010年11月現在、すでに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの5ヵ国がTPPへ参加、次いでコロンビアやカナダも参加の意向を表明している。

定義が理解できたところで、何故今TPPの議論が必要なのか見てみましょう。

TPP参加のメリット

まずは、TPP参加のメリットから考えてみます。

物事を検討する場合、現状を変えるには大きなメリットがないとやる気が出ませんね。

とにかく現状を変えるには抵抗勢力と戦わなければなりません。

その為には万難を排してもやり遂げるに値する大きなメリット、あるいは大義名分が必要となります。

では参加することによってどのような具体的なメリットがあるか見てみましょう。

経済的メリットについて、経済産業省が試算をしています。

FTAAP、TPP等に参加した場合の経済効果

出典:包括的経済連携に関する資料(平成22年10月27日)経済産業省試算 

「FTAAP及び日EUEPA」、「TPP、日中EPA及び日EUEPA」において、全ての参加国が100%関税等を 撤廃して締結した場合:
日本側のセンシティブ分野の国内生産にマイナスの影響が発生する一方、他の分野の国内生産でそれを 上回るプラスの影響。総合すると日本の実質GDPは1.23~1.62%(≒6.1~8.0兆円)増加。

ここで注意したいのは、この試算はTPP単独の経済的メリットではなく、FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)を含む点です。

TPP参加の是非を判断するには関税撤廃の経済効果だけではないと、三菱UFJリサーチ&コンサルティング 片岡剛士氏は指摘をしています。

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)はなぜ必要なのか

まず一つ目の理由は、TPPはモノの貿易自由化を含む広範な領域の自由化を含んだものであるという点です。モノの貿易と合わせて、世界のサービス貿易は大きく拡大しています。特にサービス貿易の自由化がもたらす経済効果は大きいものと考えられます。貿易円滑化や投資ルールといった分野を加味すると更に影響は大きいでしょう。

そして二つ目の理由は、後に新興国が TPPに加わった場合に要求される貿易自由化度を設定できるという点です。たとえば中国がTPPに後で加盟する場合に、90%台後半の自由化度を実現する ということになれば、そのことで得られる経済効果は大きなものとなるでしょう。

三つ目の理由としては、TPPがもたらす貿易創造効果に関するものです。現状のTPPの枠組みに日本が入った場合、その影響はTPP域内国にまず及びますが、日本企業は東アジアの生産ネットワークの中で事業を行っています。例えば日本からの最終財の輸出が進めば、それは部品を提供する他国からの購入が進むことも意味しますし、米国の輸入が増加すれば日本の輸出のみならず最終財調達先としての中国の輸出も増えるでしょう。中国の最終財輸出が増えれば、東アジアの生産拠点における資本財や部材の生産も拡大します。

以上のようにFTAは域内国のみならず域外国も含めた間接的効果があります。この間接的効果も合わせて考慮する必要があると考えられます。

日本が参加すべきだと思う人は61%との世論調査の結果もあります。

日本が参加すべきだと思う人は61%

出典:読売新聞 2010年11月8日

読売新聞社の全国世論調査で、関税の原則撤廃を目指す環太平洋経済連携協定(TPP)に、日本が参加すべきだと思う人は61%で、「参加すべきでない」18%を大きく上回った。

国民の多くはTPP参加を支持しているようだ。党内に反対派を抱える民主党の支持層では、「参加すべきだ」が71%に上った。

TPPに参加しない場合のデメリット

一方参加しない場合のデメリットを考えてみましょう。

デメリットは、上記メリットの裏腹な関係が当然考えられますが、経済産業省の試算を紹介したいと思います。

2020年 に日本製品が米国・EU・中国で市場シェアを失うことによる関連産業を含めた影響

出典:包括的経済連携に関する資料(平成22年10月27日)経済産業省試算 

日本がTPPに不参加のままではEU・中国とのFTAも遅延するとの仮定の下、日本がTP P、EUと中国のFTAいずれも締結せず、韓国が米国・EU・中国とFTAを締結した場合、

自動車、電気電子、機械産業の3業種(3市場向け輸出の5割相当)について、2020年 に日本製品が米国・EU・中国で市場シェアを失うことによる関連産業を含めた影響を試算
⇒ (結果) 実質▲GDP1.53% 、雇用減81.2万人(うち米国市場関連1.88兆円減)

実は上記の懸念する状況が明白になってきました。

先般、韓国とEU(欧州連合)の間で、自由貿易協定(FTA)が暫定発効した時も、日本メーカーは、自動車や液晶テレビなどEUに無税で輸出できるようになった韓国メーカーと比べて大きく不利な状態になることが現実となってしまいました。

なお、韓国と米国はFTAに既に署名済みです。

韓国・EU間で自由貿易協定(FTA)が発効!――日本企業は韓国に流出するか

出典:東洋経済オンライン

この7月1日に韓国とEU(欧州連合)の間で、自由貿易協定(FTA)が暫定発効した。一部、今後EU加盟国の締結手続きが必要な事項(知的財産権(刑事執行)および文化協力に関する議定書)を除き、関税を含めほぼすべての品目につき韓国とEUとの間で自由貿易が始まる。
(中略)
EUは小型車、中・大型車ともに10%の関税を課していたが、これがゼロとなることにより、日本メーカーは、EUに無税で輸出できるようになった韓国メーカーと比べて大きく不利な状態になる。
 
 液晶テレビも同様で、韓国からは無税でEUに輸出できるが、日本からの輸出には14%の関税がかかる。これから、ヨーロッパに輸出する製品を作る工場はどんどん有利な国に移って(流出して)いくだろう。

 今、政治に声を上げているのは、自由貿易反対派ばかりだ。筆者は、もっと日本の経営者に自由貿易推進の声を上げてもらいたい、と訴えている。そうしなければ、国内の一部の利益を保護するために各国とのFTA/EPA交渉が進展せず、日本企業が他国企業に対し不利な立場に取り残され、国内の雇用と日本の競争力がどんどん失われてしまうことになる。

以上、TPPを推進する側の意見を見ました。

でも、ここで別の意見も聞いてみる必要があります。

賛成側は勿論参加することがどれほど良いかをよく考えているので、説得性がありますが、一方参加すべきでないとする反対側だってきっと十分傾聴に値する理由があるはずです。

これがひとりディベートのバランス感覚なのです。

TPPの問題点:農業問題を経済的視点から考える

TPPに関して最も大きな懸念を示しているのが所謂農協です。

農協は日本が参加すべきだと思う人は61%とする世論調査に反旗を振りかざすかのように、1120万人の署名を集め反対の姿勢を強めています。

1120万人のTPP反対署名

出典:農業協同組合新聞 (2011.06.10)

 5月末で約1120万人の署名が集まった。当初目標の1000万人を大きく上回った。

 茂木会長は同日、談話を発表。国民の10人に1人に相当する署名が寄せられたが、運動期間の間に東日本大震災のために取り組み中断を余儀なくされた地域もあったなかで「これだけ多くの署名が全国のあらゆる地域から寄せられたことは国民のTPP反対の声がいかに大きいものであるかを証明するもの」と強調し「政府は国民の声を真摯に受け止めTPP交渉参加を断念すべき」、「復興の足かせにしかならないTPPへの交渉参加検討をただちに中止すべきである」と強調した。

では、何故反対なのか経済的側面から見てみましょう。

反対の根拠となっているのが、TPP参加の結果、国内総生産(GDP)減少額 7兆9千億円程度で就業機会の減少数 340万人程度とする農林水産省試算です。

国境措置撤廃による農産物生産等への影響試算について

出典:農林水産省試算

【農産物の生産減少額】 4兆1千億円程度
  コメ 生産減少額=197百億円
  小麦粉 生産減少額=8百億円
  甘味資源作物 生産減少額=15百億円
  牛乳乳製品 牛乳乳製品全体の生産減少額=45百億円
  牛肉 生産減少額=45百億円
【食料自給率(供給熱量ベース)】 40%→14%程度
【農業の多面的機能の喪失額】   3兆7千億円程度
【農業及び関連産業への影響】
  国内総生産(GDP)減少額  7兆9千億円程度
  就業機会の減少数       340万人程度

これを受けて、日本共産党は、TPP参画は例外なき関税撤廃が求められ、日本の農業は壊滅、関連産業も廃業に追い込まれると指摘をしています。

TPP問題 市田書記局長の質問

出典:2010年11月20日(土)「しんぶん赤旗」
市田氏 例外なき関税撤廃が求められ、日本の農業は壊滅、関連産業も廃業に追い込まれ、地方の雇用は失われる。日本の農山村地帯は見る影もなくなるだろう。
(中略)
1戸当たりの農地面積は北海道20・5ヘクタールに対し、EUは13・9ヘクタール。肉用牛飼養頭数は同178頭に対しアメリカは84頭―。市田氏は、すでにEUやアメリカ並みの経営規模になっている北海道農業でさえ壊滅的打撃を受けるとのべ、「“両立”は不可能だ」と強調しました。

 政府は日本の農産物関税率は11・7%とアメリカに次いで2番目に低くなっていると報告。

 市田氏は、「(政府は)農林水産物を中心に“鎖国”状態になるかのようにいうが、“鎖国”どころか十分すぎるほど開かれている。関税率の低さが日本農業の疲弊、困難の主要な原因だ。TPPへの参加は、崖(がけ)っぷちに立っている人を突き落とすようなものだ」と述べると、他党議員からもいっせいに「そうだ」の声があがりました。

一方、こうした試算に意義を唱える意見もあります。

例えば、この農林水産省試算は意図的に被害額を多くした作為的と意義を唱えているのが、キャノングローバル戦略研究所研究主幹 山下一仁氏です。

農林水産省試算は意図的に被害額を多くした作為的なもの

出典:2010.11.12「TPPと農業問題」キャノングローバル戦略研究所研究主幹 山下一仁

 しかし、この試算は意図的に被害額を多くした作為的なものです。

 第一に、データのとり方です。生産額の減少のうちの半分の2兆円が米についての影響です。米農業は安い海外からの米によってほぼ壊滅するとしています。しかし、海外の米の価格について意図的に低い価格を採っています。日本が中国から輸入した米のうち過去最低の10年前の価格を海外の米の価格として採り、内外価格差は4倍以上だとしています。しかし、中国から輸入した米の価格は10年前の60キログラム当たり3000円から直近の2009年では1万5百円へと3.5倍にも上昇しています。一方で国産の米価格は1万4千円くらいに低下しており、日中間の米価は接近しています。内外価格差は1.4倍以下です。

 さらに、日本の農家の平均的なコストと輸入価格を比較しているようです。しかし、肥料や農薬など米生産のために実際にかかったコストの平均値は9800円ですが、0.5ヘクタール未満の規模の小さい農家の1万5千円から15ヘクタール以上の規模の大きい農家の6500円まで大きな格差があります。関税がなくなって国内の米価が下がれば、コストの高い規模の小さい兼業農家は農業を止めるでしょうが、規模の大きい農家は存続できます。それだけではなく、農業を止める兼業農家から農地を借りうけてますます規模を拡大するとコストはさらに下がり、日本の米農業の競争力が増します。

さらに、「輸入が増えれば国産が減り、輸入が止まれば国産が増える」という見方も事実ではないと指摘する意見もあります。

「TPP不参加で農業を守れる」は幻想だ

出典:浅川芳裕(月刊『農業経営者』副編集長)

 また、「輸入が増えれば国産が減り、輸入が止まれば国産が増える」という意見も事実ではない。

 実際、牛肉が自由化された1991年から5年後、消費量は全体で23万t伸び、国産は20万t増えた。輸入によって牛肉は日本人の食生活に完全に定着し、国産の需要も引き上げられたのだ。

 一方、BSE(牛海綿状脳症)問題でアメリカ産の輸入を停止した2005年、輸入が300万t超減ったにもかかわらず、国産出荷量も10万t近く減ってしまった。輸入牛肉の需要が豚肉や鶏肉に移行し、国産を含む牛肉消費が冷え込んでしまったのである。
(中略)
 そして、すでに関税の低い農産物が壊滅したかといえば、事実は逆だ。

 コメを超え、農業生産額の22%を占める野菜の関税は、多くの品目で3%しかない。FTA(自由貿易協定)を結んでいる国とはゼロにさえなっている。現在、関税より円高のほうが野菜農家の経営に影響を与えているくらいである。

 花卉は初めからゼロ%だが、現在も90%が国産で、世界3位の生産額を誇っている。

 果物もほとんどが関税率5%から15%程度であり、海外産と直接競合する品目は、輸入自由化後も生き残っている。典型がリンゴで、輸入解禁後、逆に国産が外国で人気となり、主産地の青森県では生産量に占める輸出割合は1割を超えるまでになっている。

 日本でつくっていない品目が輸入され、刺激される農産物もある。温州みかんはオレンジの自由化で壊滅すると語られたが、ミカンをはじめとした小玉系柑橘類の生産量は、いまだ世界4位をキープしている。

 サクランボも、アメリカン・チェリーの自由化後、市場は30%拡大した。アメリカン・チェリーとの併売によって売り場の“チェリーシーズン”が長期化され、サクランボが消費習慣として根付いたのだ。

以上、TPPが引き起こす農業問題の是非を経済的視点から見てみました。

TPPの問題点:医療問題 から考える

今まで農業問題を見てきましたが、TPPで影響をうけるのは、農業に限定されているわけではなく、サービス分野もあると指摘されております。

暮らしが危うくなる? TPP参加

出典:日経BPネット 浅田里花

ここでもっと広く見なければいけないのが、TPPで協議される分野は24もあるということです。「サービス」だけでも5分野あり、そこには私たちの生活に大きく関係する教育、医療、金融などが含まれてきます。これらをすべて自由化するとは、自国民と同様の権利を相手国の国民および企業に対し保障し(内国民待遇)、第三国に対する優遇処置と同様の扱いを現在および将来において約束する(最恵国待遇)こと。自由貿易を推進するわけですから、障壁となる規制はすべて撤廃しなければなりません。

この影響のあるサービス5分野の中で、TPP参画に大きな懸念を示しているのが、日本医師会です。

今回はその主張のうち混合診療全面解禁について取り上げてみましょう。

日本の医療が危機にさらされている

出典:社団法人日本医師会 2011年1月26日

話題の「TPP」も、医療にとっては大きな問題です
(*何故ならば) 外国人医師の受け入れにも拡大する可能性がある
病院が外資系になる可能性がある(*ことになるからです)
   (*筆者による加筆)
(中略)
なぜ外国資本を含む企業などが日本の医療に参入することが問題かそれは、日本の医療は国民すべてが加入する公的医療保険によって公平に提供されているからです。
日本の公的医療保険では、治療費などは診療報酬で決まっており、営利を目的とする企業や、高額報酬を目指す人材には魅力がない。
外資系を含む営利企業の病院などは、公的医療保険ではなく、高額の自由診療を行なうようになる。お金がなければ、高額の自由診療は受けられない。
高額自由診療の病院が増えれば、その中で淘汰される。
また、病院は自由診療で良いということになると、国は公的医療保険の診療報酬を引き上げない。公的医療保険で診療していた地方の病院などが立ち行かなくなる。
(最終的には)国民皆保険の終焉へ
(中略)
混合診療とは、公的医療保険で認められている診療(保険診療)と、認められていない診療(保険外診療)を同時に受けること。
たとえば、保険診療と国内未承認薬の処方(保険外)を同時に受けると・・・診療は不可分一体なので、混合診療で問題が発生した場合に、公的医療保険の信頼性も損なわれる。そのため現在では、「保険診療の全額自費+保険外の全額自費」を負担する。
これを「保険診療の一部負担(若人なら3割)+保険外の全額自費」にしようというのが、「混合診療解禁」の考え。
患者さんの負担を考えると、混合診療を解禁したほうが良いようですが、すでに、混合診療は一部解禁されています。

日本医師会が反対しているのは、混合診療の「全面」解禁です。
混合診療の全面解禁は、どんな場合でも「保険診療の一部負担+保険外の全額自費」にしようということです。しかし結局のところ、保険外の全額自費を支払えるのは、高所得者に限られます。
混合診療が全面解禁されると・・・先進医療や新薬は、その部分の全額自費で受けられるようになる。ただし、全額自費部分を支払える高所得者しか受けられない。
先進医療や新薬は、公的医療保険にしなくても全額自費で受けられる。
そこで、国は、手間のかかる評価をしてまで公的医療保険に組み込もうとしなくなる。
そして将来ー 公的医療保険で受けることができる医療などは少しだけに。
(中略)
このままいくと・・・医療が自由価格で提供されるようになれば、民間企業や投資家にとって、魅力的な市場が開けます。そうなると、本当にお金がなければならない時代がやってきます。日本人の生命を、外国を含む産業に差し出して良いのでしょうか。
(中略)
日本医師会は、全力をあげて、国民皆保険を守ります

一方、患者側にとって混合診療解禁はどのような意味があるのでしょうか?

闘病記私の生きる道

出典:がんサポート情報センター
がん患者の先端医療に寄せる熱い想いを伝えるために混合診療解禁の旗振り役として奮闘する財界人・草刈隆郎(注:2004年4月より日本郵船株式会社会長)

混合診療(保険診療と保険外診療の併用)の解禁は、がん患者の切なる願いだ。実現すれば、それぞれのニーズにあった先端治療を受けられるようになる。小泉首相も混合診療の禁止は最優先に排除すべき規制と断言している。

しかし、日本のアンシャンレジューム(厚生労働省、医師会)はこれに強く反対し、厚い壁となって立ちはだかっている。この厚い壁を突き崩し医者中心の医療から患者中心の医療を実現すべく奮闘しているのが日本郵船会長の草刈隆郎さん(経団連副会長)だ。草刈さんがこの骨の折れる役目を引きうけたのは、12年前の「肺がん患者」としての体験があるからだ。
(中略)
現時点で、日本では未承認だが、世界では標準治療薬として使われている抗がん剤は30くらいある。これ以外に、標準治療薬になってはいないが世界で広く使われている未承認の抗がん剤は70以上にのぼる。
(中略)
この「混合診療の禁止」という奇妙なルールが存在することで、最も被害を受けているのが「前向きながん患者」たちだ。それだけに、彼らは白熱してきた「混合診療の解禁」を巡る論議の行方を固唾を飲んで見守っている。
(中略)
「医者が、健康保険の使える抗がん剤をいくつか患者にためしてみたが効果がないので、アメリカで治療効果がはっきり認められている抗がん剤を患者に投与した。そのとたん、全ての医療費が自己負担になるんですよ。こんなことが許されていいのか、というのが我々の問題意識の根底にあるんです。ここで、重要なのは、患者はただで医療サービスを受けているのではないということです。それまでどの方も毎月こつこつ掛け金を支払って将来の病気に備えてきたんです。まじめに掛け金を支払っていれば、いざというとき少ない自己負担でまともな治療を受けられると信じているから支払ってきたんです。それなのに、アメリカやヨーロッパで、ごく当たり前に使われている抗がん剤を使ったというだけで、がんの治療費全てを自分で支払わなきゃいけなくなるなんて、とんでもない話です。こんな患者のニーズを無視した規制を続ければ健康保険はなんの意味があるのかという議論にもなりかねない」

こうした患者側の立場にたって、混合診療解禁を支持するのが、経済評論家の勝間和代氏です。

患者本位へ、混合診療解禁を

出典:勝間和代のクロストーク 2010年12月22日

 これに対し、混合診療の解禁派は、混合診療が認められれば、患者の負担が現在より減り、より幅広い層が充実した医療を受けられると反論。厚労省の理屈とは逆に、「医療格差は縮小する」と主張しています。また、混合診療で治療期間が短くなれば、医療保険の給付が節約されるとも指摘します。さらに、がんなどの生死に関わり、治療の時間が限られる病気の場合、患者は先進的な治療法が保険適用になるまで待つ余裕はないと訴えています。混合診療解禁の是非は裁判でも争われ、東京地裁は07年11月「保険外診療の併用により、保険対象の診療分まで給付が受けられなくなる根拠は見いだせない」と混合診療禁止に疑問を示しました。一方、控訴審の東京高裁は09年9月、国の混合診療禁止を適法とし、現在、最高裁で係争中です。

 このように意見は分かれていますが、私は混合診療の原則解禁を求めます。理由は、現在の医療保険制度が医師や患者の実態に合致せず、医療の発展を妨げていると考えるからです。外国で承認済みの先端医療や薬品が日本で保険の適用対象になるまでにはかなりのタイムラグがあり、患者本位になっていません。また、古い医療技術を使って長い時間をかけて治療するよりも、新しい医療技術で短期間で病気を治す方が保険医療全体のコスト節約にもなるはずです。病院は新しい治療法を導入し、切磋琢磨(せっさたくま)すれば、医療サービスの向上も期待できます。

実は、この混合診療全面解禁は過去小泉内閣時代の規制改革の一部として取り上げられ、激論が交わされていたのです。

当時東大・京大・阪大の3大学病院長や日本外科学会が混合診療の導入を求める要望書を提出したことで、医師側の意見にも賛否両論があることも伺われます。

混合診療の導入を求める要望書

出典:神奈川県保険医協会

東大・京大・阪大の3大学病院長が連盟で「特定療養費制度の抜本的改革もしくは混合診療の導入」を求める要望書を11月22日、規制改革・民間開放推進会議(以下、「規制改革会議」)に提出した。要望書では、先端医療や高次医療の開発・実践にあたり現行制度では不十分、保険適用されても「制約が多く」人的・物的資源をまかなう経費が十分保証されないとし、保険診療と自己負担(保険給付範囲を超えた部分が該当)を組み合わせた「高次医療制度」の新設を提言。少なくとも特定機能病院(=全国の大学病院80病院と国立がんセンターと循環器センターの計82病院のこと)での実施を求めている。
(中略)
 これに先立つ11月19日には、日本外科学会(会長:二村名古屋大学教授)も「特定療養費制度の拡張を含む、混合診療に対する規制の大幅な緩和が必要」との意見書を規制改革会議に提出。まずは大学病院を中心とする特定機能病院で実施されることを要求している。

以上、TPPにまつわる医療問題を混合診療全面解禁についての賛否を見てみました。

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