今多くの企業で注力しているのが、働き方改革だ。

多くの企業は、電通の過労死事件が社会の注目を浴びた結果、まず長時間労働の是正に取り組んでおります。

しかしながら、特に労働集約的サービス産業での長時間労働是正の達成は非常に難しいのが現状です。

典型的な例が、長時間労働が当たり前な、旅館業。

今回は、労働集約的サービス業でも働き方改革はできるという好例を取り上げてみたいと思います。

それが、休日を30日増やし残業を減らしても利益率は10%にアップした温泉旅館「グランディア芳泉」なのです。

温泉旅館「グランディア芳泉」は、福井県あわら市にある、1963年に開業した旅館。

「忙しいときは毎日11時間も働いて、月に6日しか休みがない。もう耐えられません」と数年前まで、そんな社員の愚痴を聞くのが日課だったのが、今はブツブツ言う社員がいなくなった。人手不足は解消され、完全週休二日制を実現したうえ、残業は週に2時間程度。さらには経常利益率が10%まで上がったという。

では、その取組を見てみましょう。

「グランディア芳泉」山口専務は、「無駄な作業を省き、その分余った力で顧客に質の高いサービスを提供すれば、労務効率と顧客満足度向上は両立する」ことを信じて、始めに食事時間の2部制を廃止したというのです。

出典 日経ビジネス 「休めない職場」から完全脱却した旅館の秘策 2017年10月30日
実際に取り組んでみると、面白いように成果が上がった。その一つが、食事時間の2部制の廃止だ。従来、夕食のスタート時間は午後5時半と午後7時半の2パターンがあり、お客を振り分けていた。100人分の席しかないところに、一度に200人が来たら十分な対応ができないからだ。

 このため、社員は営業開始の2時間前には出勤して、1部と2部の座席レイアウト表を作成。席ごとに座るお客を決め、事前にテーブルセッティングしておいた。

 一見、効率的に思える。だが、お客は気まぐれだ。午後5時半と申告していたお客が午後7時半に変更してほしいと言ってきたり、3人と聞いていたお客が5人で現れたりすることもある。そうなれば、座席表の組み替えが必要だ。お客を待たせるうえ、何より事前の準備がすべて無駄になる。

 そこで思い切って2部制をやめて、お客に好きな時間に来てもらう方式に変えた。事前のセッティングをしないので、社員はオープンの15分くらい前に来ればよくなった。1日約2時間の時短だ。

「事前準備しておかないと、お客様に迷惑をかけてしまうと思い込んでいたのは誤解だった」と山口専務は述懐しております。

そして、食事の2部制の廃止には、接客時間が増えよりきめ細かなサービスができるようになるという、思わぬメリットもあったというのです。

即ち、「事前準備はお客様のため」と誰もが思い込んでいた業界の常識(根拠のない仮説)を疑って、検証して、初めてこの仮説は事実でないことがわかった訳です。

つぎにチャレンジしたのが、予約確認の電話の廃止です。

「もしも連絡なしにキャンセルするお客様がいたらどうするのか」と担当者はこぞって反対する中、「1週間だけやってみよう。すべて俺が責任を取る。」と説得したというのです。

 それまで予約確認にかけていた時間は2、3時間。つながるまで1人に3、4回電話することもざらだったが、その時間がゼロになった。「自分も含めて感覚がまひしていた。やめたら顧客満足度が下がると思い込み、無駄を無駄と思わなくなっていたようだ。業界の常識や思い込みを排除することで先が見え始めた」(同出典)。

予約確認の電話もまた「根拠のない仮説」だったのです。

山口専務は次々と仮説検証をしていきます。

次に、完全週休二日制実現のための切り札にしたのが、複数の業務を掛け持ちする「マルチタスク」だったのです。

マルチタスク化への移行の障害になるのが、北陸地方で50年以上続いていた独特の「奉仕料制度」。団体客の世話をする仲居にのみ適用されていたもので、他の社員と異なり、ほとんど歩合給で支払われていたという、どの旅館にもある長年の慣習です。

なんと、山口専務はこの50年に渡る慣習をも変えようとしたのです。

出典 日経ビジネス 「休めない職場」から完全脱却した旅館の秘策 2017年10月30日
最初にマルチタスク化への移行の障害になりそうなルールを修正した。北陸地方で50年以上続いていた独特の「奉仕料制度」がそれだ。団体客の世話をする仲居にのみ適用されていたもので、他の社員と異なり、ほとんど歩合給で支払われていた。

 この併存していた賃金制度を16年に一元化。仲居以外のスタッフが宴会の仕事を手伝ったり、仲居がレストランで働いたりするようになった。

 また宴会、フロント、レストラン、料亭など担当する職務により縦割りで部署が分かれていたのを「サービス部」に一本化した。それまでは客数にかかわらず、各部門で働く社員はいつも同じ人数。客数に合わせてシフトを調整したり、違う部署のスタッフが垣根を越えて手伝ったりすることがなかったため、実際の仕事量よりやや多めの人員を配置していた。

また、工場で行われているカイゼン手法も旅館に適用したのです。

出典 日経ビジネス 「休めない職場」から完全脱却した旅館の秘策 2017年10月30日
「空いた時間にお膳の準備などをするのはいいが、通常業務もある。その分の時間を捻出しないといけない」。半導体メーカーから転職してきた業務部の高間直樹課長は考えた。そこで前職で培った、決まったもの(定品)を、決まった数(定量)だけ、決まった場所(定位)に置く「3定」や、職場環境の維持・改善で用いられる整理、整頓、清掃、清潔、しつけの「5S」のノウハウをフル活用した。

 それまで、お膳準備に必要な器や固形燃料などがどこにあるかは仲居しか知らず、しかも置き場所も収納ケースもバラバラだった。

 そこで棚卸しを実施し、必要なものを1カ所に集め、何がどこにどれだけあるかを一目で分かるようにした。また、どの器をどこに配置すればいいかが分かるように写真で示したマニュアルも作成(下の写真を参照)。これなら経験のないスタッフでも短時間でお膳の準備ができる。

こうしてマルチタスクを実行して創業初の休館日を10日ほど設けた上、毎年夏休み期間は人手が足りず雇っていた10人程度の派遣スタッフをゼロしても、「人手が足りない」は死語になったというのです。

出典 日経ビジネス 「休めない職場」から完全脱却した旅館の秘策 2017年10月30日
16年には、創業初の休館日を10日ほど設けた。ゴールデンウイークや夏休みの直後など、例年稼働率が低い日に設定した。社員が休めるだけでなく、館内のメンテナンスなどが効率よくできるという利点もある。
(中略)
 毎年夏休み期間は人手が足りず、派遣スタッフを10人程度雇うのが常だったが、今年はゼロ。今や社内で「人手が足りない」は死語になった。グランディア芳泉の売上高は25億4000万円。収支は数年前までトントンだったが、改革後は10%までアップした。

こうして着想からわずか半年で、グランディア芳泉は顧客満足度を維持・向上しつつ、人や残業を増やさず、休みを多くするという難題をクリアしました。

誰しも働き方改革に躊躇するであろう、労働集約なサービス業。
それに対して、誰もが疑わなかった慣習という仮説を次々と検証しては廃止していったのです。

さらに、50年以上続いていた独特の「奉仕料制度」を打ち破ってまで変革して、実現したのが、休日を30日増やし残業を減らしても利益率は10%にアップという果実です。

この事例を通して、勇気づけられる経営者や働き方改革の担当者は多いことと思います。

是非とも、現状にチャレンジして仮説検証して改革を進めていってほしいものです。

働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。

働き方改革を進めるには人財への投資が必須です。企業研修は次のリンクから。

なお、ここで率直な疑問があります。

残業も激減し週休2日になり、時間に余裕ができた従業員はどうしたのでしょうか?

温泉旅館「グランディア芳泉」は、また素晴らしい先例を見せてくれました。

なんと、休みを増やす過程で、社員が自分の頭で考えるようになり、さらに休みを自己啓発に充てる社員も出始めたというのです。

出典 日経ビジネス 「休めない職場」から完全脱却した旅館の秘策 2017年10月30日
 ほかのホテルや旅館、レストランを実際に利用して学んだり、仕事にも役立つ習い事を始めたりするほか、観光庁まで足を運び、担当者と会ってインバウンドの勉強をしてきたという社員もいる。

 「自分の給料や休みを有効活用して自己啓発に励める人こそ、これからの会社を引っ張ってくれる社員だと思う。『休みが増えても、することがない』とこぼすような社員は要らない」(山口専務)。

そうです。私も諸手を挙げて賛成致します。

従業員は、自ら自己啓発に励めるべきなのです。

ただ、全てを従業員の自主性に頼りすぎるのも少々行き過ぎではないかと思う次第です。

やはり、会社側もこの浮いた時間を使って、従業員に対して、更なる生産性向上のためのスキル研修をすべきと思います。

では、どのようなスキル研修をすべきでしょうか?

私がお勧めするのが、ディベート研修です。

ディベート研修

研修には、二通りの内容があります。

一つは、業界や企業ごとに特有のスキルで、もうひとつは、マネジメントスキルのように、どの業界のどの企業にも共通して必要とされる共通スキルです。

当然ながら、共通スキルにおいても、様々な研修が考えられます。

私が提案をしたいのが、ディベート研修です。

ディベートとは欧米でビジネスの基本中の基本とも言えるスキルで、従来の慣習にとらわれず、より良い結論を効率的に導き出す手法です。
ディベート研修も様々なタイプがあるのですが、特にディベートの試合に基づいた研修をお勧めします。

何故ならば、このディベートの試合に基づいた研修では、課題に対して、事実を調査・分析し(ロジカルシンキング)、課題を発見し、解決策を策定して、提案する(プレゼンテーション力)、そして全てのプロセスをメンバーと協力して単時間で達成するチームワーク力などの多様なスキルが同時に体得出来るからなのです。

ディベート研修のポートフォリオ

体験ディベートセミナー
本格的ディベート研修の導入前に、ディベートを半日で体験するセミナーです。
体験ディベートセミナー

ディベート研修:総合的ビジネス力習得
ディベートの試合を中心とした本格的ディベート研修です。ビジネス力を総合的にかつ効率的に習得することを目指します。

ディベート研修:切れる英語力習得
海外勤務や英語でビジネスする人材の英語力を短期間に劇的に向上させることを目指します。

ディベート研修:管理職向け
管理職を対象としたディベート研修です。

ディベート研修:役員(経営者)向け
日々多忙な社長、上級取締役、取締役を対象としたディベート研修です。2時間で、ディベートのエッセンスと役員(経営者)に必須のビジネスの本質をつく質門力の習得を目指します。

ディベート教室:地方自治体及び住民代表向け
行政に携わる地方自治体行政に関わる方々或いは住民代表側として社会行政問題に関わる方々に対して、懸案問題に対して賛成と反対の両面から検討することで、問題の本質を掴み、内因性を理解することで、合理的で本質的な解決策を見出していくことを目指す、ディベート教室をご提案致します。

さて、働き方改革は、日本の産業を強くして競争力を取り戻すための絶好のチャンスです。そのための課題は、従業員一人一人が時間当たり労働生産性を向上させること、そして収益性の高いビジネスを開拓することです。本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきです。

詳細は次のリンクを御覧ください