マスメディアで報道されている日が無いほど注目が集まっているのが、働き方改革です。

多くの企業は、電通の過労死事件が社会の注目を浴びた結果、まず長時間労働の是正に取り組んでおります。

しかしながら、様々な取り組みが報道される中、長時間労働是正が目的化している懸念があります。

各企業は、今働き改革の本当の目的を再確認する必要があると私は思います。

今回は、「厳しくとも働きがいのある会社」を目指し、働き方改革の諸施策を推進している伊藤忠商事を紹介したいと思います。

伊藤忠商事では、社員に喜んでもらうことが働き方改革であるとは考えてないとするのが、伊藤忠商事 人事・総務部企画統轄室長 西川 大輔氏です。

出典 顧客視点の働き方改革伊藤忠商事が朝型勤務で得た真の成果とは
ダイアモンド クオータリー オンライン 働き方フロンティア

改革には事業の状態や会社の規模によって、いろいろな目的があって、そこに向かった方法があると思います。もちろん、他社の取り組みからヒントを得ることは重要ですが、一つはっきりしているのは、当社は「働きやすい会社」を目指してはいないということです。

 仕事の進め方の自由度を高めたり、働きやすい職場環境をつくったりして、社員に喜んでもらうことが働き方改革であると当社は考えていません。会社が追求すべきは、社員に一生懸命働いてもらって、会社全体のパフォーマンスを上げていくことです。どんどん働いて、どんどん成果を上げていってほしい、ただし効率的に──。それが、会社が社員に望むことであり、働き方改革はそのプラットフォームをつくるためのものです。その結果として社員が得られるのは、「働きやすさ」ではなく「働きがい」であると考えています。

 そういう意味で当社は「厳しくとも働きがいのある会社」を目指し、働き方改革の諸施策を推進しています。(中略)
全ての施策はその方向で考えられなければなりません。会社がどうなりたいか、どこに行きたいか、会社が成長するために社員は何をすべきか。それらを軸とすべきであって、「社員が喜ぶ」ことが軸になってはならないと思います。社員は喜んでいるが、会社の生産性は上がらない。そんな状態は本末転倒ですし、長期的に見て、そのような取り組みは社員をハッピーにはしないと私たちは考えています。

さて、総合商社といえば、世界中を飛び回り大きな仕事を成し遂げるあこがれのグローバル企業ですが、長時間労働もいとわない激務を要求される職業でもあります。

その中で、三菱商事や三井物産と共に総合商社トップ3の一角を占めるのが、伊藤忠商事です。

その伊藤忠商事で深夜10時以降の残業禁止と朝残業を始めたのは、「働き方改革」が話題になるよりずっと前の2013年10月からだ。

伊藤忠「朝残業」で挑む374万円の壁
出典 日経ビジネスオンライン 2013年12月12日
 伊藤忠商事が本社と国内拠点の社員を対象に働き方を見直してから約2カ月が経過した。深夜10時以降の残業禁止と、早朝5時からの勤務に割増金制度を導入するのが柱だ。業務の効率化により、社員の間では着実にワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が進んでいるが、収益体質の強化や成果主義人事の浸透に向けた課題も浮き彫りになってきた。(中略)
 伊藤忠本社(東京・青山)では地下の社員食堂で午前8時まで無料で果物やヨーグルトなどの軽い朝食が振る舞われる。バナナは、もちろん今年約1300億円で一部事業を買収した米青果大手ドール・フード・カンパニーの商品だ。
(中略) 
午後8時以降の残業は原則として禁止になった。午後10時にはほぼ全フロアの照明が消える。(中略)
 従来の深夜残業は一般社員で固定給の50%の割増金、早朝(午前5~9時)勤務の割増金は25%から50%に引き上げる。従来ゼロだった管理職級の早朝割増金も新たに25%に設定する。

社員1人あたりの生産性を上げることが必要不可欠として、岡藤正広社長は、「朝残業」だけでなく、フレックス制度を廃止、飲み会を1次会で午後10時までにやめる『110運動』の導入等、会議と資料をかなり減らし、斬新な改革を次々と導入してきました。

伊藤忠が不夜城から「朝型勤務」に変わった理由
出典 プレジデントオンライン2016.10.17 岡藤正広:伊藤忠商事 社長

 私は繊維部隊に所属し、大阪勤務が長かった。そして、たまに東京本社に出張で来ると、「おかしいな」と感じる習慣がたくさんあった。たとえば社員の出社時間。伊藤忠も同業他社と同じく、フレックスタイム制をとっていた。コアタイムは午前10時から午後3時。従って、多くの社員が午前10時に出勤し、夜遅くまで働いていた。

 しかし、特に繊維や食料部隊の国内のお客さまは、朝が早い会社が多い。午前8時半出勤という会社は、珍しくもなんともないのだ。朝一番に「荷物がまだ来ていない」とお問い合わせをいただいても、「担当者が10時にならないと出社しません」と返事をするようではいかがなものか。伊藤忠を含め、総合商社大手の給与水準が高いと言われている。30歳そこそこで1000万円近くももらっているケースもあるのに、朝電話してもいないのでは、お客さまから苦々しく思われて当然だ。

 そこで私は社長就任後、朝型勤務を取り入れようと決めた。お客さまへの対応はもちろん、夜にダラダラ残業をするよりも、朝早く仕事をするほうが効率的であると考えていたからだ。

 担当部署からは「長年フレックスで来ましたから、きっと労使で揉めます」と言われたため、まずは非組合員である課長クラス以上から、朝9時に出社するように促してみた。当然ながら、課長が9時に来れば、部下たちだって9時に来るようになる。半年も経てば、ほぼ全員に9時出社が定着した。その後、労働組合とも話し合いをし、正式にフレックスタイム制を廃止することができた。

もっとも、私はただ「課長以上が9時に出社するんだから、全員倣えよ」と強制したわけではない。早朝に出社したくなるように、さまざまなインセンティブを用意した。たとえば、午前5時から8時の「早朝勤務時間」に出社した時間管理対象の社員には、9時まで深夜残業と同等の5割増賃金を支払う。また、無料でパンやおにぎり、スープや飲み物などの朝食も用意している。結果的に、今では9時どころか、8時までに来る社員が40%を超えている。

 私は関西人だからか、「金銭」や「損得」に敏感だ。だから、前述したように、お客さまたちから、高給取りと言われている商社マンがどう見られているかを常に考えるし、朝型勤務一つ取ってみても、社員たちが「自分の持ち出しになったり、犠牲を払ってルールに従わなければならない」と思うことのないように心を配ってきた。

 もちろん、金銭や損得が人生のすべてではない。しかし、トップが理想を掲げて、社員たちに「志を高くしてついてこい」と強要するようなマネジメントでは失敗するだけだ。会社のエゴを社員に押し付けるのではなく、「しっかり働いて会社が良くなれば、きちんと報いてくれる」と社員に信用されることが大切なのだ。
(中略)
 また、朝型勤務の結果、夜の残業は大きく減ったが、オフィスでの仕事だけでなく、飲み会も同様だ。商社マンと言えば、夜は飲み会が当たり前。しかも2次会、3次会に行って酔いつぶれる、というのが昔からの伝統だが、もうそんな時代ではない。

今時のお客さまで、本当に深夜まで延々と飲みたいと思っている方が、果たしてどれくらいいるだろうか?よほどカラオケが好きな方は別として、商売の話を1次会で十分にして、後はお開きにしたいと思っておられる方が多いのではないかと感じる。

 商売の話につながらないだけではない。2次会や3次会に行くと、酔いが回るし、体はどんどん疲れてくるから、さまざまな問題が起きるものだ。ケンカも起きやすくなるし、翌朝は疲れて仕事にならない。挙げ句に家庭はギクシャクするというように、メリットよりもデメリットの方が、遥かに大きい。

 もちろん、「絶対に禁止」とまでは言わない。どうしても必要なときは許容するが、普段は1次会10時まで。これを「110運動(1次会まで、10時までに切り上げる)」と名付けた。
(中略)
 社員の言う事をすべて聞こうというのではない。そんな経営ができるはずもない。しかし、伊藤忠は単体の社員数が4000人超。三菱商事や三井物産より約3割以上も少ない。だから、社員1人あたりの生産性を上げることが必要不可欠なのである。

 こうした事情があるから、社員が効率よく働けるようにサポートすることを惜しむべきではない。これからも、社員の生産性向上につながる職場環境の整備には、とことんこだわる。できる限りの努力はする。経営陣がここまでがんばるのだから、社員たちには働きぶりで返してもらいたい。
(中略)
もう一つ、私が改革をしたのは会議だ。

 多くの大企業と同じように、伊藤忠も会議ばかりの会社になっていた。期初から年間見通しを予測し、その裏付けとなるようなデータをかき集め、分厚い資料を作って会議に臨む。1年どころか、たった半年で経済環境が激変することもあるというのに、これは無意味なことだ。

 さらに、発表する現場の人間は、居並ぶ役員など上層部からの、多方面にわたる質問に完璧に答えようとするあまり、細かな数字から何からすべてを用意しようとし、会議資料はさらに厚みを増す。
(中略)
 かくして本社の現場はもちろん、関連会社に至るまでが資料作りに明け暮れる。しかし、カラフルな資料を作って、難しい質問に完璧に答えることで、仕事をした気になるようでは困る。これでは、本来力を入れるべき商売がどんどん疎かになっていく。

 社長に就任した後、私は会議の実態を調べることにした。多少面倒ではあるが、こういうことは、きちんと数値化してみるに限る。

 すると、重要会議は2009年度で828回、総会議時間は1448時間、会議資料の厚みは162.2センチであった。そこで社長就任初年度(2010年度)に、開催回数を21%、会議時間を22%、資料の厚みを13%、それぞれ削減をした。以降もこの取り組みを継続し、2015年度では、開催回数は41%、会議時間は50%、資料の厚みは48%も削減されている。

 社員たちには、メモ程度を用意し、自分の言葉でビジネスの要点を、きっちり話せるようになってもらいたい。私自身も、意味のない「意地悪な質問」はしないようにしている。

 ただ、これらの改革を行うときに、私の独断や、一部の人間のみの意見で動かないように心がけてきた。これだけ大所帯の会社だ。ある改革をやったがために、思いも寄らないような副作用が起きる可能性だってある。当たり前のことではあるが、社員、特に末端の人たちの意見をよく聞くこと、そして仮説検証のプロセスをきっちりと踏むことが重要だ。

ここで参考になるのが、働き方改革の観点から新しい制度導入が成功する鍵は、社員たはちが「自分の持ち出しになったり、犠牲を払ってルールに従わなければならない」ことは
が無いように十分に配慮することだと私は思います。

働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。

働き方改革を進めるには人財への投資が必須です。企業研修は次のリンクから。

さて、こうした働き方改革を実施する一方、伊藤忠商事では能力開発を通じて人材力強化を図っているのです。

出典働き方改革研究所 2017.01.23 働き方を見直す
「ワークライフバランス」なんてNG 会社の成長のために働き方改革はある
(伊藤忠商事 人事・総務部 企画統括室長の西川大輔氏)
西川氏:伊藤忠は他の大手商社と比べると、少ない人員で仕事をしています。他社に比べて少ない人数で、絶対に負けないレベルを保ち、勝ち続けなければならないわけです。そのためには、社員のスキルや能力を上げるという能力開発の側面と、健康、からだ、こころを保つという健康力向上の側面の両面があります。働き方改革は、この両面に対するインフラとなる部分と位置づけています。能力開発、健康力向上の両面で、個人のパフォーマンスがどれだけ上げられるか。そこにフォーカスしていくことになるでしょう。
企業人としての能力にも2種類ありますよね。「元々の能力の高い人を採用する」という考えと、「経験を積むことで能力は磨かれていく」という考えです。伊藤忠では、どちらかというと後者の考えです。いかに仕事の経験の中でスキルを上げていくかです。個性を最大化させ、後天的に伸ばすという意味では、会社に入ってからのほうが勝負なのではないでしょうか。それが最終的な人材力強化につながると考えています。

私は、能力開発を通じて人材力強化を図るという考え方に賛成です。

当然ながら、企業は、持続的な成長と中長期的に企業価値を向上させる必要があります。

そして、どの企業にとっても、人財は企業の成長や企業価値向上の要となるものです。

究極的なことをいえば、社員が自ら効率的に働いてより良い成果を継続して出していけば、自ずと企業の成長や企業価値向上が達成できることになります。

IT機器や製造設備は、投資をした瞬間から価値が下がってきます。それは、摩耗したり故障が多くなったり、或いは進歩したIT機器や製造設備が次々と創り出されて来るからです。

一方、人財は投資をすればするほど、価値が上がっていくのです。

これが、同じ投資でも人財への投資が機器や設備の投資と異なる点です。

そこで、私は、本当の働き方改革実現の為には、長時間労働是正で生み出した時間を使って、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきと考えております。

=== ディベート研修の必要性 ====

研修には、二通りの内容があります。

一つは、業界や企業ごとに特有のスキルで、もうひとつは、マネジメントスキルのように、どの業界のどの企業にも共通して必要とされる共通スキルです。

当然ながら、共通スキルにおいても、様々な研修が考えられます。

私が提案をしたいのが、ディベート研修です。

ディベートとは欧米でビジネスの基本中の基本とも言えるスキルで、従来の慣習にとらわれず、より良い結論を効率的に導き出す手法です。

=== ディベート研修 ====

ディベート研修も様々なタイプがあるのですが、特にディベートの試合に基づいた研修をお勧めします。

何故ならば、このディベートの試合に基づいた研修では、課題に対して、事実を調査・分析し(ロジカルシンキング)、課題を発見し、解決策を策定して、提案する(プレゼンテーション力)、そして全てのプロセスをメンバーと協力して単時間で達成するチームワーク力などの多様なスキルが同時に体得出来るからなのです。

ディベート研修のポートフォリオ

体験ディベートセミナー
本格的ディベート研修の導入前に、ディベートを半日で体験するセミナーです。
体験ディベートセミナー

ディベート研修:総合的ビジネス力習得
ディベートの試合を中心とした本格的ディベート研修です。ビジネス力を総合的にかつ効率的に習得することを目指します。

ディベート研修:切れる英語力習得
海外勤務や英語でビジネスする人材の英語力を短期間に劇的に向上させることを目指します。

ディベート研修:管理職向け
管理職を対象としたディベート研修です。

ディベート研修:役員(経営者)向け
日々多忙な社長、上級取締役、取締役を対象としたディベート研修です。2時間で、ディベートのエッセンスと役員(経営者)に必須のビジネスの本質をつく質門力の習得を目指します。

ディベート教室:地方自治体及び住民代表向け
行政に携わる地方自治体行政に関わる方々或いは住民代表側として社会行政問題に関わる方々に対して、懸案問題に対して賛成と反対の両面から検討することで、問題の本質を掴み、内因性を理解することで、合理的で本質的な解決策を見出していくことを目指す、ディベート教室をご提案致します。

さて、働き方改革は、日本の産業を強くして競争力を取り戻すための絶好のチャンスです。そのための課題は、従業員一人一人が時間当たり労働生産性を向上させること、そして収益性の高いビジネスを開拓することです。本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきです。

詳細は次のリンクを御覧ください