働き方改革を推進する企業の多くがまず取り組んでいるのが長時間労働是正。

そのため、まずは業務改善や会議の仕方の見直しを手掛けることも多いと思います。

こうした小さな改善を積み上げる手法がある一方、最新テクノロジーを導入して一気に仕事量を削減するという大胆な改革をする企業も現れてきました。

しかしながら、最新テクノロジーは、長時間労働是正どころか、人さえも不要にしてしまう可能性もあるのです。

その最新テクノロジーとは、RPAロボットと人工知能AIIの2つです。この2つが協業することで、今まで手付かずであった事務作業の大幅な効率化と無人化が可能となるのです。

始めに取り上げるのが、RPAロボットです。

今までは、ロボットといえば、自動車産業などで導入されていた溶接や重量物を持ちあげたりする作業用ロボットでしたが、RPAロボットとは目に見えないロボットで、従来の作業ロボットが苦手としていたPC作業を自動化するものです。

アビームコンサルティング社によれば、97件のRPAロボット導入実績調査によれば、「RPAを導入した企業の97%が5割以上の業務工数削減を実現しており、47%が完全自動化を達成」しているというのです(ITmedia 2018年03月13日)。

さて、そのインパクトの大きさがマスコミを驚かせたのが、3大メガバンクのリストラ計画です。

「姿なきロボット」がメガバンク行員数万人の仕事を奪う
出典 週刊ダイヤモンド2017.11.10
銀行業界に「大リストラ時代」が再び訪れる――。この1~2週間、メディアの報道の中でそうした見出しが何度も踊った。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクグループは今後、大規模な店舗の統廃合や人員・業務のスリム化に取り組み、コスト構造改革に本腰を入れる。その結果、三菱UFJFGで9500人、三井住友FGで4000人、みずほFGで1万9000人、3社合計で3万2500人もの人員を浮かせる算段だ。
(中略)
 そして、その浮かせた人員が今までやっていた仕事を代わりにこなすのは、ロボットだ。しかし、私たちがイメージしがちな人型ロボットでも、工場で溶接や組み立てなどを行う産業用ロボットでもない。RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる、ホワイトカラー職の業務をソフトウェア内で自動処理する「姿なきロボット」なのだ。

ここでいうRPA(Robotic Process Automation)とは何でしょうか。

出典 RPA Technologies
「RPA」とは、ロボットによる業務自動化の取り組みを表す言葉です。「デジタルレイバー(Digital Labor)」や「仮想知的労働者」とも言い換えられ、人間の知能をコンピューター上で再現しようとするAIや、AIが反復によって学ぶ「機械学習」といった技術を用いて、主にバックオフィスにおけるホワイトカラー業務の代行を担います。
人間が行う業務の処理手順を操作画面上から登録しておくだけで、ソフトウェアはおろか、ブラウザやクラウドなどさまざまなアプリケーションを横断して処理します。
(中略)
RPAは、人間の知能をコンピューター上で再現しようとするAIや、AIが反復によって学ぶ「機械学習」といった技術を用いたロボット(ソフトウェア)で、人間が行う業務の処理手順をPCのウェブブラウザのような操作画面上から登録しておくだけで、ソフトウェアはおろか、ブラウザやクラウドなどさまざまなアプリケーションを横断して動かすことができるのです。

このRPAロボットは、金融業界だけでなく、一般の企業のPC作業も自動化してしまうのです。

例えば、サッポロビール社の営業支援部門です。この部門ではかつて、小売業から提供されるPOSデータをダウンロードするという業務が毎日ありました。欲しい商品データをダウンロードするには、各小売企業のウェブサイトで回数の多い操作をする必要がありました。しかも、ビールやワイン、焼酎など、20カテゴリーごとにしなくてはならず、それが7小売企業分もあったのです。

そこでロボットを導入して小売企業のウェブサイトを自動で巡回してPOSデータをダウンロードできるようにした結果、年間約5,700時間分の作業を自動化できました。また、全てのカテゴリーを毎日ダウンロードできるようになり、きめ細かい分析や提案ができるようにもなりました。さらに、繰り返し作業から解放された担当者は、営業支援業務の方へシフト。年間の事務コスト削減は約1,100万円となり、導入コストは1カ月未満で回収できたというのです(内田洋行ITフェア20172017/11/29)。

もはや、働き方改革は、業務改革や会議を減らそうなどというレベルではなく、事務職の人が行っているPC作業をRPAロボットに置き換えて人が不要になってしまう日も遠くないのかもしれません。

もう一つの最新テクノロジーは人工知能AIです。

人工知能AIを導入することで1万4000人の社員数を2年で半減させると宣言したのがソフトバンク宮川潤一専務取締役です。

ソフトバンクが“AIリストラ”
出典 週刊ダイアモンド2018/02/10
「ITを駆使して、2年で人員を半分にします」。昨年6月に東京・有楽町で開かれたソフトバンクの社員大会で、宮川潤一専務取締役がぶち上げた経緯表明はAI時代を迎えた経営者の焦りの証ともいえた。
ソフトバンクの社員数は1万7000人。このうち宮川専務が統括するテクノロジーユニット(技術部門)は、臨時社員を合わせて1万4000人の巨大組織で、これを2年で半減させる計画だ。」

この人員削減を実現する技術が、人工知能AIなのです。

ここで、人工知能AIとは何でしょうか?

出典 Weblio辞典
AIとは、人間の知的営みをコンピュータに行わせるための技術のこと、または人間の知的営みを行うことができるコンピュータプログラムのことである。一般に「人工知能」と和訳される。
コンピュータがAIと呼ばれるには、人間が用いる自然言語を理解したり、論理的な推論を行うことができたり、経験から学習して応用することができたり、といった知的で発展的な作業をこなすことが要求される。

この人工知能AIの能力が画期的に向上したのが、ディープラーニングという技術です。

このディープラーニングという技術は、コンピュータの計算力の大幅な向上と、インターネットなどを介して大量のデータを収集できるようになったことで、この数年で実用レベルに達してきたのです。

このディープラーニングを適用することで、人工知能AIが自分で学習することができるようになったのです。

ソフトバンクの宮内謙社長は、この人工知能AIを活用して業務時間を短縮したり仕事の流れをスムーズ化するのが、ソフトバンク流の働き方改革だとして、具体例としてコールセンターの窓口業務の生産性向上を説明する。

人工知能AIツールのIBM製のWatsonを適用することで、6000席のオペレータを2000程度に削減するというのです。

コールセンターへの適用が進むIBM Watson
出典 IT LEADERS 2017年5月2日
 具体例として説明したのが、コールセンターの窓口業務。同社では6000席のオペレータが1件あたり平均10分かかる問い合わせ対応を日々こなしている。2016年からここにWatsonを適用した結果、2015年度比で対応時間を15%削減できるようになったという。回答候補の上位5件に正解が含まれる割合(回答精度)も、16年6月の78.3%から17年3月には94.3%に向上した(図1)。
 「過去9カ月で蓄積したデータは4万5500件。AI専任の学習チームがいて、応対時の情報をWatsonに覚え込ませている。今後、回答精度をさらに高め、対応時間を短縮するには時間がかかるが、まずは効果があることを実証できた。2、3年後には対応時間を15年度比で半減させ、チャットボットも組み合わせてコールセンターの席数を2000程度にしたい」。コールセンターだけではない。6月から直営ショップや量販店の売り場にも展開。新人の店舗スタッフを補完する計画だ。

また、ネットワーク保守も、アラーム確認から対策手順の確定に要する時間を23分から2分半へと10分の1減らし、追加動員件数も137件から60件に半減できたというのです。

コールセンターへの適用が進むIBM Watson
出典 IT LEADERS 2017年5月2日
 もう一つ、ネットワーク保守への適用例も説明した。「半年前、社内に『IoTやAIのアイデアを出せ、使いこなせ』と号令をかけた」という。その中から出てきたのが、24時間365日止められない仕事に携わるネットワークの保守部隊の案件だった。約2万あるネットワークノード(サーバー)を常時監視し、何かあると保守に出動する、緊張を強いられる仕事だ。
 そこでサーバーの膨大なログ(アラーム)を自動監視して分類し、順位付けする業務をWatsonでできるようにした。この結果「アラーム確認から対策手順の確定に要する時間を23分から2分半へと10分の1減らした」(図2)。追加動員件数も137件から60件に半減し、部署スタッフの満足度は83%になったという。

また、人事採用でもIBM製のWatsonを適用することで、成果を上げています。

新卒採用時のエントリーシートの判定という作業で、これまで人間しかできないと考えられていた作業が、AIを取り入れたことで従来の4分の1に削減することができたのです。

ソフトバンク AI活用で新卒採用業務を75%削減
出典 IBM Offering Information
プロジェクトを始めてから2カ月が経った2017年3月には正しい結果が100%得られるわけではないという点が課題だったが、Watsonが不合格と判定したエントリーシートを人がチェックするという業務担当者ならではの逆転の発想でクリア。5月から運用を開始した。
「AIを取り入れたことで作業時間を従来の4分の1に削減することができました。年間ベースに換算すると、680時間を170時間に短縮できることになります」と安藤氏は成果を語る。

また、損害保険大手の三井住友海上火災保険は2018年度から、営業部門の職員が手掛ける事務作業のうち9割を人工知能AIなどで代替する。保険の契約にかかわる手続きや情報照会の対応などを自動にし、全社ベースで見た業務量を2割減らすというのです。

事務の9割、AIが代替 三井住友海上の営業職
出典 日本経済新聞 2017/12/28
三井住友海上の持ち株会社のMS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)は、17年度中にまとめる次期中期経営計画(18~21年度)に業務構造改革の方向性を盛り込む。傘下のあいおいニッセイ同和損害保険とのシステム統合も進め、最大で年間計160億円のコスト削減効果を見込む。
 営業分野は代理店・顧客向けの照会対応や保険の申し込み手続きの事務にAIなどを使う。手があいた職員は代理店向けの営業支援に振り向ける。従来の営業員は有力代理店の開拓などにあたる。 業務の効率化は保険金支払いなどの全部門で取り組む。国内で働く全社員の約1万5千人について業務を大幅に見直す。営業以外にも、損害査定や商品開発など機械化できない高度な分野に人材を集中する。

では、RPAロボットや人工知能AIという最新テクノロジーが引き起こす大リストラに、私たちはどのように対処すべきでしょうか?

まず、始めにあらゆる産業は、RPAロボットや人工知能AIが人にとって代わることによる影響を避けることはできないと考えるべきなのです。

問題は、既存の仕事が自動化されて無くなることではなく、新しい仕事に就くために必要なスキルと知識を従業員が身につけられるようにすることなのです。

過去、銀行でATM導入により窓口業務が自動化されたとき、従業員がスキルアップしより幅広い金融サービスを販売するチャンスが生まれたのがよい例です。

人間の仕事の将来は、想像力、創造性、そして戦略的思考にある
出典 ハーバードビジネスレビュー 2018年03月06日
テクノロジーは一部の仕事を担当するようになるだろうが、その仕事に従事していた人に取って代わるものではない。経済学者のジェームス・ベスセンは、「問題は失業者が生み出されていることだ。新しい仕事に就くために必要なスキルと知識を、従業員が身に着けられるようになっていないことだ」と指摘する。

 たとえば、オーストラリアでの調査では、銀行の窓口係による仕事の自動化に希望の光が見出された。「窓口係がやっていた多くのタスクがATMに引き継がれた一方、それによって、既存の従業員がスキルアップし、より幅広い金融サービスを販売するチャンスが生まれた」

では、どのようなスキルと知識を身につけるべきなのでしょうか?

機械が得意な管理業務は機械に任せて、マネジャーは判断力を要する業務に専念すべきとするのが、アクセンチュアです。

アクセンチュアは、現場の管理者から最高経営幹部までを含め、マネジャーはどうすればAI時代で成功できるかに関して、14ヵ国1770人のマネジャーにアンケート調査を行い、さらに組織のデジタル変革を担う幹部37人にインタビューして、マネジャーが成功するために習得すべき慣行を特定したのです。

まず、重要なことは、機械が得意なことは機械に任せるべきだと指摘しております。

人工知能が再定義するマネジャーの仕事
出典 ハーバードビジネスレビュー 2017年01月18日
1.管理業務をAIに任せる
 調査によれば、全レベルのマネジャーが、運営上の調整・管理に時間の半分以上を費やしている(たとえば、典型的な店舗マネジャーや養護施設の看護師長は、スタッフの病気や休暇、急な退出などに応じて、常にシフトのスケジュールを調整しなければならない)。回答者らは、AIによってこうした任務が最も変わるだろうと期待している。そして、彼らは正しい。AIはこれらの業務の多くを自動化するだろう。

報告書の作成も、自動化される管理業務のよい例だ。AP通信はAI搭載のソフトウェアロボットの力を借りて、企業の四半期決算に関する記事の数を約300から4400に増やしている。これによって同社の記者たちは、より調査と説明を要する報道に従事できるようになった。

 このようなテクノロジーが、自分のマネジメント報告書を作成すると想像していただきたい。実際、一部の分析報告書については、すでにそれが可能となっている。データアナリティクス企業のタブロー(Tableau)は最近、シカゴを拠点に自然言語生成ツールを提供するナラティブ・サイエンスとの提携を発表した。協業から生まれた無料のクローム拡張機能「Narratives for Tableau」は、タブローの図表に対する説明文を自動的に作成する。

 調査対象のマネジャーたちは、このような変化を前向きにとらえていた。86%が、モニタリングや報告でAIによる支援を望むと回答している。

次に、マネジャーは、機械が苦手とする、「創造的な思考と実験」「データの分析と解釈」「戦略の策定」という3つの判断力に費やすべきとしています。

人工知能が再定義するマネジャーの仕事
出典 ハーバードビジネスレビュー 2017年01月18日
 多くの意思決定事項には、人工知能がデータのみから取り出せるものを超越した、人間の洞察が必要とされる。マネジャーは、組織の歴史や文化に関する自身の知識に加え、共感や倫理的思考も用いる。これが「人間による判断」の真髄だ。経験と専門知識を、ビジネスの重要な意思決定や慣行に適用するということだ。

 我々が調査したマネジャーたちは、この方向へのシフトを意識している。「今後の成功に最も必要となる新たなスキル」として彼らが4つ選んだ中で、3つが判断力を軸とするものだ。「創造的な思考と実験」「データの分析と解釈」「戦略の策定」である。

 米海軍のIT部門でERP(基幹系システム)業務を統括するレイン・トンプソンは、我々にこう語った。「マネジャーはたいてい、自分の仕事は単に規則を適用することではなく、判断、裁量、経験、機転が必要だと考えています。機械学習の有望な可能性の1つが『意思決定を補助する能力』ならば、テクノロジーはマネジャーに取って代わるものではなく、助けになるものと考えるべきです」

人間が得意な分野に特化することで、テクノロジーはマネジャーに取って代わるものではなく、助けになるものと考えることができるわけです。

今回は、RPAロボットやAIという最新テクノロジーを脅威ととらえるのではなく、助けになるものととらえることによって、将来どのようなスキルを身につけるべきかについて、考察しました。

働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。

働き方改革を進めるには人財への投資が必須です。企業研修は次のリンクから。

さて、私は、本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきと考えております。

厚生労働省による平成17年度「能力開発基本調査」によると、過去数年の間に人材育成費を増やした企業のうち、売上高が増加している企業の割合は51.2%と半数以上を占めている一方、人材育成費を減らした場合、売上高が増加している企業の割合は24.1%にと留まっていることから、人財投資をすることは企業業績を向上させることがわかります。

では、どのような企業教育をすべきでしょうか?

私が提案をしたいのが、ディベート研修です。

ディベートを学ぶことで、働き方改革を実現するために不可欠な6つの基本能力を獲得することができます。

1.論理的思考力

ディベートの基本は、「ロジック3点セット」。
全ての主張は、証拠と理由に基づかねば説得力を持ちえないという原則です。
「ロジック3点セット」がディベートの基礎であり、これをマスターすることで、あなたの議論はグローバルに通用するものとなります。

2.分析力

全ての議論を「ロジック3点セット」に照らし合わせて分析することで、その議論の強みと弱みをあぶりだすことができます。
また、「立論構成の最適化」の考え方に照らし合わせて議論構成をチェックすることで、その議論を的確に改善・強化できます。

3.洞察力

相手のロジックを推察する洞察力が身につくことで、相手のロジックを乗り越え、さらに高みのある議論に発展させることができます。

4.質問力

質問によりロジックを掘り下げ、議論をさらに深堀する技術。これをマスターすることで、実務現場で議論を推進し、より深みのある解決策を発見することができます。

5.問題解決力

ディベートの最終目的は問題解決。問題解決策をソリューションプランとして企画・立案できる能力を獲得できます。
原因分析に基づく解決策の提案で重要なコンセプトが「立案構成の最適化」。
これを学ぶことで、相手のニーズに合わせて、最も効果的なプランを提案できるスキルが身につきます。

6.コミュニケーション能力

ディベートでは実際に試合、あるいはプレゼンテーション、質疑応答といった演習を通じて総合的なコミュニケーション能力をブラッシュアップできます。思いがけない反論や、時間のプレッシャーの中で、いかに効果的に議論を進めてゆくべきかについて、身を以て学ぶことができます。

さて、働き方改革は、日本の産業を強くして競争力を取り戻すための絶好のチャンスです。そのための課題は、従業員一人一人が時間当たり労働生産性を向上させること、そして収益性の高いビジネスを開拓することです。本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきです。

詳細は次のリンクを御覧ください。