最近は働き方改革に大きな関心が寄せられており、毎日のように様々な取り組みが報道されております。

働き方改革の課題として長時間労働の是正がありますが、働き方改革が実行されると、8.5兆円とも言われる残業代が無くなってしまうという深刻な問題があります。

出典 東洋経済オンライン 働き方改革、「残業代が8.5兆円も減る」の衝撃 2017年09月14日
いわゆる「働き方改革」関連法案に関連して、これまであるようでなかった試算を、大和総研のエコノミスト・小林俊介氏が最近公表し、大きな反響を呼んでいる。
「仮に罰則付きの残業上限が導入されれば、所定外給与(残業代)の削減を通じて、年間8.5兆円の雇用者報酬が下押しされるリスクがある」
8.5兆円は年間に日本人が受け取る給与など263兆円(雇用者報酬、2015年度)の約3%に相当する大きな金額だ。2%分を引き上げるのに四苦八苦している消費税率に換算すると、3%強分になる。
よく知られているように、日本は先進国の中でもとりわけ労働時間が長い。パートタイム労働者を含んだ年間総実労働時間は、年々減少しているが、これはパートタイム労働者の比率が上昇していることが一因だ。一般労働者についてみると、年間労働時間は20年前とほとんど変わっていない。
小林氏の試算は、月220時間以上働いている人の残業時間を産業別に積み上げた。時間数にすると1カ月当たり約4億時間に達し、それに単価と月数をかけて8.5兆円という金額を弾き出した。

即ち、長時間労働だけを是正したとすると、従業員の収入は激減することになるのです。
企業側としては、経費が減るという観点からは、残業費が減ることは歓迎すべき状況です。

一方、社員側は残業が無くなることに、賛成でしょうか?

実は、「残業費をもらって生活費を増やしたいから」という社員が全体の3分の1もいるうえ、残業を今より増やしたい社員が2割もいるのです。

残業する理由第1位は「生活費」 残業を今より増やしたいという強者も2割存在 
出典 キャリコネニュース 2017.3.2 
政府や企業が長時間労働を是正に向けて動いているが、実際にはみなどの程度残業しているのだろうか。エンジニア向けウェブマガジン「fabcross for エンジニア」は3月2日、残業に関するアンケート調査の結果を発表した。(中略)
同調査は、20歳~59歳の公務員・会社員1万145人を対象に実施。(中略)
一方で、1か月の残業時間の上限となる45時間以上の残業をしている人は10.9%、100時間以上の残業をしている人も2.1%おり、やはりかなりの長時間労働を強いられている人も一定数いるようだ。(中略)
さらに残業をする理由としては、「残業費をもらって生活費を増やしたいから」(34.6%)が最多で、「担当業務でより多くの成果を出したいから」(29.2%)、「上司からの指示」(28.9)、「自分の能力不足によるもの」(28.9%)が続いた。(中略)
⼀⽅、「平均的な残業時間」よりも、「理想的な残業時間」の⽅が⻑く、もっと残業したいと思っている⼈が22.7%もいることが明らかになった。

即ち、例えば家のローンなどを抱えていたりする社員は多いと思われますが、働き方改革を進めていけば、当然ながら残業は減ることになるわけで、こうした家のローンを抱えている社員は生活できなくなってしまう危惧もあるわけです。

生活できなくなるとわかれば、社員はどのような行動を取ると思いますか?

そうですね、いろいろな理由をつけて、残業を減らすような「働き方改革」が機能しないような行動を取ることになるでしょう。

これが長時間労働是正が成功するかどうかの、本質的な問題点なのです。

では、この企業側と労働者側の矛盾は、どのように解決されるべきなのでしょうか?

IT企業といえばブラック企業の代表選手といわれるなか、残業時間は平均で月18時間で増収増益を続けているSCSKの秘密に迫ってみましょう。

初めに、SCSK中井戸信英会長が社長として就任した当時、SCSKでは昼間の休憩時間と言ったら机の上で寝ていたり、喫茶室のようなところで寝泊まりしている状況だったというのです。

出典 残業しない人に残業代を払う会社 日経ビジネスオンライン 2015年6月16日
 中井戸: 僕が2009年、SCSKに経営者として来た時、従業員は喫茶室のようなところで寝泊まりしていることがあった(編集部注:中井戸氏はそれまで住友商事副社長を務めていた。当時の社名は住商情報システムで、2011年にCSKを買収してSCSKに社名変更した。以下、SCSKと表記)。ひどいのはシュラフ(寝袋)でも持ってきていたのと違うか。昼間の休憩時間と言ったら机の上で寝ているやつもいた。これがやっぱりIT企業の実態なのか。働いている人たちも、それが普通の会社生活、習慣だったんだろうなと思ったよ。

 
 
SCSK中井戸信英会長が残業削減に本格的に取り組みだした1年目はほとんどが成果なかったが、その理由が残業代が、総収入に占めている割合がものすごく多いため、よしんば残業時間が減ったとしても『そんなことしたら俺、収入が減るやないか』『ローンにも影響する』と真剣に社員が取り組まなかったからなのです。

出典 残業しない人に残業代を払う会社 日経ビジネスオンライン 2015年6月16日
残業削減を掲げる企業は多いですが、なかなかうまくいかないケースが多い。
中井戸:こんなものは、日本企業の大昔からのテーマでしょう。今、政府も声をあげたりして、朝型勤務にするとか色々なことをやっている。そういうやり方もあると思います。でも、うちのやり方はちょっと違う。うちの場合は1年目(残業削減に本格的に取り組みだした2012年度)は似たようなことをやって、ほとんど成果なしやった。
 そもそも、労働時間のコントロールが対象になっている人たちは、そんなに年も取ってない。まだ収入が少なくて、家族もできて、生活がしんどい。教育にもお金がいるし、ローンもあるわな。
 IT産業の人たちは、長時間の残業が常態化しているから、残業代が総収入に占めている割合がものすごく多い。もちろん(従業員には)、無理やり残業して生活の足しにしている、なんて認識はないよ。でも、これが自分の生活であり年収なんや。僕だって組合員のころには、残業代の方が多い時があったよ。
 残業は悪である。君らやめたまえ。もっと早く帰れ。経営者がそんなこと言っても、(従業員の)頭の整理としては、『そう言われても、それでは仕事が回らない』ということになる。もう1つは、よしんば残業時間が減ったとしても『そんなことしたら俺、収入が減るやないか』『ローンにも影響するで』と思う。

そこで、逆転の発想で、SCSK中井戸信英会長は当時減った残業代は全て支払うという決断をしたところ、従業員が自主的に効率的な働き方を工夫しだしたというのです。

出典 残業しない人に残業代を払う会社 日経ビジネスオンライン 2015年6月16日
確かに、残業削減だけを言われると、会社が業績を上げるために社員に負担を強いていると感じてしまいそうですね。
中井戸:そうでしょう。残業を減らせば給料も抑えられて、経費も販管費も減る。だから、残業を減らせと言っているんだろうと。これが、まず人間、頭に浮かぶことなんですよ。
 だからウチは、50時間の残業を20時間に短縮できたら、30時間の残業代は全部翌年のボーナスで戻すと言った。だから、収入、経済上の心配は一切するなと。会社は『ぽっぽないない』はしませんから、安心して残業のあり方を考えてくださいと。中井戸:給料を担保しているのだから、効率的に働いたら自分の健康にもプラスになる。仕事のあり方を従業員が自分で考えてくれ、という動機付けをしたのが、大きなポイントや。
 残業を減らせと言われたら、給料を抑えて販管費も減らしたいからかと。俺ら、大変なんだと、好きでやっとるのと違うねんというのが、まず人間、頭に浮かぶことなんですよ。だから、そこまで触れてやらないと、本当に自分たちの健康のことも考えてくれているんだという気持ちにはならないでしょう。
 そうしたら部長も、課長も、リーダーも、チームも自分で考えるよ。『今までのようなやり方でやっていたら、あるチーム員が失敗したら、全員がみんなまた元へと戻ってやり直しやと。それよりこうやった方がいい』と。こういうことを自ら考えさせる。経営者はそんな(現場の)ことまでは分からないんだから。いい方に回転しだしたら、みんな自己増殖していく。そうしたら、案外やれるやないかと。早く帰って寝られるから体も楽や。お子さんが起きている顔を見て相手ができる。なかなかいいじゃないか、ということにみんなが気付き始めた。
 会社というのは、10億円とか15億円とか残業削減で浮いて、営業利益に上積みしたらものすごく助かるのや。でもそれはしない。皆さんの健康の原資だから、信じられないかもしれないけど、それは皆さんに戻す。残業しなくても残業代を払うから、心配しないで効率を考えてくれ、健康を考えてくれと。健康を害されたらもうどうしようもない。

その結果として、残業は減る一方、メンタルの問題も減り、増収、増益、増配が出来たというのです。

出典 残業しない人に残業代を払う会社 日経ビジネスオンライン 2015年6月16日
 (残業が減ったら)いろんな統計が良くなってきて、メンタルの問題も減ってきた。ありがたいことに、みんなが頑張って増収、増益、増配ができた。経営者としても驚くほどの成果や。やっぱり従業員が自らの勤務や業務、時間管理のあり方、すなわち効率的な業務のこなし方をしようという気持ちにさせない限り、本質的に残業なんて減らない。これは、もうあまねくどこの産業もそうだと僕は思う。

これが、本当の長時間労働の対策なのです。

皆様の会社では、働き方改革で長時間労働是正を目指していることでしょう。

その場合、減少した残業代は従業員に還元されていますか?
還元されてないとしたら、収入が減って従業員はさらに長時間労働是正を続けるインセンティブはどこにあるのか、考えてみたら良いのではないかということをSCSKの事例は示しているのです。

働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。

さて、私は、日本の産業を強くして競争力を取り戻せるための課題は、従業員一人一人が時間当たり労働生産性を向上させること、そして収益性の高いビジネスを開拓することだと考えます。

当然ながら、企業は、持続的な成長と中長期的に企業価値を向上させる必要があります。

そして、どの企業にとっても、人財は企業の成長や企業価値向上の要となるものです。

究極的なことをいえば、社員が自ら効率的に働いてより良い成果を継続して出していけば、自ずと企業の成長や企業価値向上が達成できることになります。

IT機器や製造設備は、投資をした瞬間から価値が下がってきます。それは、摩耗したり故障が多くなったり、或いは進歩したIT機器や製造設備が次々と創り出されて来るからです。

一方、人財は投資をすればするほど、価値が上がっていくのです。

これが、同じ投資でも人財への投資が機器や設備の投資と異なる点です。

そこで、私は、本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきと考えております。

ディベート研修

研修には、二通りの内容があります。

一つは、業界や企業ごとに特有のスキルで、もうひとつは、マネジメントスキルのように、どの業界のどの企業にも共通して必要とされる共通スキルです。

当然ながら、共通スキルにおいても、様々な研修が考えられます。

私が提案をしたいのが、ディベート研修です。

ディベートとは欧米でビジネスの基本中の基本とも言えるスキルで、従来の慣習にとらわれず、より良い結論を効率的に導き出す手法です。
ディベート研修も様々なタイプがあるのですが、特にディベートの試合に基づいた研修をお勧めします。

何故ならば、このディベートの試合に基づいた研修では、課題に対して、事実を調査・分析し(ロジカルシンキング)、課題を発見し、解決策を策定して、提案する(プレゼンテーション力)、そして全てのプロセスをメンバーと協力して単時間で達成するチームワーク力などの多様なスキルが同時に体得出来るからなのです。

ディベート研修のポートフォリオ

体験ディベートセミナー
本格的ディベート研修の導入前に、ディベートを半日で体験するセミナーです。
体験ディベートセミナー

ディベート研修:総合的ビジネス力習得
ディベートの試合を中心とした本格的ディベート研修です。ビジネス力を総合的にかつ効率的に習得することを目指します。

ディベート研修:切れる英語力習得
海外勤務や英語でビジネスする人材の英語力を短期間に劇的に向上させることを目指します。

ディベート研修:管理職向け
管理職を対象としたディベート研修です。

ディベート研修:役員(経営者)向け
日々多忙な社長、上級取締役、取締役を対象としたディベート研修です。2時間で、ディベートのエッセンスと役員(経営者)に必須のビジネスの本質をつく質門力の習得を目指します。

ディベート教室:地方自治体及び住民代表向け
行政に携わる地方自治体行政に関わる方々或いは住民代表側として社会行政問題に関わる方々に対して、懸案問題に対して賛成と反対の両面から検討することで、問題の本質を掴み、内因性を理解することで、合理的で本質的な解決策を見出していくことを目指す、ディベート教室をご提案致します。

さて、働き方改革は、日本の産業を強くして競争力を取り戻すための絶好のチャンスです。そのための課題は、従業員一人一人が時間当たり労働生産性を向上させること、そして収益性の高いビジネスを開拓することです。本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきです。

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