長時間労働是正を目標に掲げる企業が多い中、2017年4月から、味の素は朝8時15分始業、午後4時30分終業の1日7時間15分勤務に変更。所定労働時間を徐々に短縮し、実質的な賃上げにもなっている。20年までに所定労働時間7時間を目指すというのです。
なぜ終業が午後4時半か。15年に社長に就任した西井孝明氏は「ダイバーシティを進める」と説明しております。
味の素が午後4時半終業に踏み切ったワケ
出典 プレジデント ウーマン 2017年12月号
「ダイバーシティを進めるために、日本では特に女性の活躍が不可欠です。育休や時短など、いくらサポートする制度があっても、辞めていく人もいた。やはり特定の女性だけではなく、全体の時間を短くして早く終業できるようにする。それなら、心苦しくなく、堂々と早く帰ることができますよね」
西井氏は、目指すべきは「グローバル基準並みの1800時間労働による生産性の高い働き方」。ネスレやダノンのようなグローバルトップ10を狙うことだというのです。
味の素が午後4時半終業に踏み切ったワケ
出典 プレジデント ウーマン 2017年12月号
「働き方改革」はただの時短目的ではない。日本的な「専業主婦がいる男性中心の働き方」では、ダイバーシティが実現しないから、働き方改革が必要になってくるのだ。
同社では、効率化での利益はすべて人材に投資している。残業削減で残業代が減るという不安を払拭(ふっしょく)するために、先行投資として基本給を1万円引き上げた。所定労働時間の短縮で実質的な賃上げもした。軽量のモバイルPCも配り、セキュリティを整備して「どこでもオフィス」(テレワーク)ができるようにした。評価と報酬、そして顧客の巻き込みが働き方改革の本気度の表れなのだが、西井社長は4時半終業も含め、各地に飛んでは顧客に「働き方改革」への協力を求めている。
グローバル人事部マネージャーの菊地さや子さんはその効果が目に見えて表れているという。
「もともと残業が当たり前という風土で、07年度の総実労働時間は2039時間、営業利益は605億円でした。08年度から労使での取り組みを始め、15年度は1947時間で908億円です。16年度からは西井社長が改革を加速し、57時間短縮されて、20年度に1800時間が目標だったのですが、前倒しにして18年度に達成する目標になりました」
ダイバーシティの力を信じると西井社長が言いきるのは、ブラジルの現地法人社長としての2年間の体験があるからなのです。
味の素が午後4時半終業に踏み切ったワケ
出典 プレジデント ウーマン 2017年12月号
「同質なメンバーで仕事をしているから、目的やテーマが曖昧なままスタートしがち。ブラジルで学んだことは、仕事というのは最初に課題、目的、やり方、すべてをダイバーシティの中で侃々諤々(かんかんがくがく)議論して決めるべきだということ。その過程で非常にユニークないい意見が出るんです。もんでから着手するので、すごい勢いで進む。こちらのほうがずっと効率がいいんじゃないかと。だから日本に帰ったらダイバーシティが生まれるような環境にしようとずっと決めていました」
ダイバーシティとはジェンダーや国籍だけではなく、キャリアのダイバーシティでもある。
西井氏は、持続的な成長のためには、当然イノベーションが必要。さまざまな経験、キャリアを持つ人が集まれば、いい発想や活動が生まれると考えているのです。
味の素が午後4時半終業に踏み切ったワケ
出典 プレジデント ウーマン 2017年12月号
「持続的な成長のためには、当然イノベーションが必要。でも長時間、生産性の低い仕事をし続けていてはイノベーションが生まれにくい。社員には、短い時間で集中できる環境をつくり、残りの時間はさまざまなキャリアのために使ってほしい。育児も大事な人生のキャリア。無駄な残業で、キャリアが犠牲になる。今は共働きの男性も4時半に帰って、子育ての一翼を担うわけです。ダイバーシティとはジェンダーや国籍だけではなく、キャリアのダイバーシティでもある。さまざまな経験、キャリアを持つ人が集まれば、いい発想や活動が生まれると信じています」
また、この働き方改革で魅力的な会社となり優秀な人材が集まるというメリットがあるのです。
味の素が午後4時半終業に踏み切ったワケ
出典 プレジデント ウーマン 2017年12月号
西井社長は働き方改革をする理由の1つとして「人材の獲得」を挙げた。
「どの企業でもほしいと思う特定分野の人材は、どんな人気企業でも獲得が難しい。魅力的な会社にしないと優秀な人材が集まりません」(中略)
味の素は現在130カ国・地域とビジネスをし、社員約3万3000人のうち、日本にいるのは1万人だ。働き方からグローバル企業にならなければ、海外の人材は働きにきてくれない。
働き方改革でダイバーシティを実現して、イノベーションを起こしグローバルでの人材獲得競争にも勝つという、味の素の働き方改革は一般の企業とは一味も二味も違ったものなのです。
働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。
さて、ダイバーシティを確保しようとも一般の企業ではなかなか実現できません。
その場合に、効果的なのは自分自身でダイバーシティを持つことです。
私どもでは、これをひとりディベートと呼んでいます。
物事には、一般的に良い点と悪い点、或いは好きなことや嫌いなことなどの両面性があります。
そこで、賛成と反対の両面から冷静に議論を検証してより良い結論を出す手法のことを、ひとりディベートと呼んでおります。
一般的に、誰でも自分の支持する立場が好きです。その為、自然と、誰もが自分の支持する立場に重きを置いて、問題解決を図ろうとします。
しかしながら、よく陥る罠がここにはあります。
それは、あまりにも自分の立場を擁護するために、ある意味「偏見」が強くなってしまい、バランスの欠けた議論に陥ることなのです。
例えば、誰かが問題点を示すと、そんなことはたいしたことではない、と十分に議論しないまま終わらしてしまったり、あるいは、極端な場合は、自分の意見を受け入れないことで感情的に反発をしてしまったりすることもあります。
こうした議論は、残念ながら説得性に欠ける可能性がとても高くなります。
また、一方的な考え方で構成された論理は、飛躍が多く、容易に否定されたり、あるいは、後で重要な問題が発覚する危険性もあります。
こうした危険性は、誰でもが問題の両面を同時に見ることで、自ら排除することができるのです。
つまり、自分の支持する議論に対して、自ら疑問を呈し、時にはその論理を修正することで、より説得性のある論理が構成できるようになるのです。
これが、「ひとりディベート」をお勧めする理由なのです。
ひとりディベートの事例は次のリンクから。
また、ひとりディベートを体得するのに効果的な企業研修は次のリンクから。