今回は、働き改革に取り組む企業が多い中、サービス業でもあるにも関わらず既に残業年間44時間を達成している先進的事例を紹介したいと思います。

その企業は丸井グループです。丸井グループは、エポスカード(昔はマルイカードでしたが)とファッション関係のマルイ店舗で有名ですが、2017年度ではグループ総取扱高が1兆9,336億85百万円、従業員数5,732名の一流企業です。

この丸井グループの青井社長は、2008年から働き改革を始めて2016年には残業が年間44時間まで減り、「日本で最も残業が少ない会社」と言われていると説明します。

「残業が大嫌いになった」丸井グループの社長は働き方をどう変えたのか
出典 ダイアモンドオンライン 2018.3.29
青井 僕は日本の労働観があまりよくないと思っているんです。「日本で働く人の約7割が自分のやっている仕事と働いている会社が嫌い」というショッキングなアンケート結果を見たことがあります。これは先進国の中でも最悪です。そういった労働観が変わらないと、20年以上停滞している経済も良くならないんじゃないか、と。
小室 7割が自分の仕事と会社が嫌い!なんと……。
青井 労働観を良くして、仕事をもっと楽しく創造的にするにはどうしたらいいか。そう考えたとき、きっかけづくりとして残業削減が大きいと思いました。(中略)
小室 2008年には有志が集まって「働くプロジェクト(ハタプロ)」をスタートしていますよね。(中略)現在、社員の平均残業時間はどれくらいになったのですか?
青井 2016年には年間44時間まで減りました。
小室 年間!?
青井 年間です。月間とよく間違われるんですけれども……。なので、「日本で最も残業が少ない会社」と言われているんです。

残業代を生活費と認識していた中堅社員もいたが、店舗できめ細かなシフトをきちんと組むなど取り組みをしながら、時間をかけて解決していったといいます。

「残業が大嫌いになった」丸井グループの社長は働き方をどう変えたのか
出典 ダイアモンドオンライン 2018.3.29
青井 まずは仕事の段取り、店舗で言えばきめ細かなシフトをきちんと組むこと。商売柄、朝早くお店を開けて、夜遅くまで営業しているので、通し勤務が難しい。だから店長たちがシフト勤務を50パターンぐらい作ってくれたのです。シフトを組むのはすごく大変だと思いますが、きめ細かくマネージしてもらっています。
何か方針を出して徹底させるとか、守らなかった人を怒るといった手法は採っていません。「もともと残業をしたい人はいない」というのが僕の発想なんです。だから、店長、部長、役員は、残業しないで回っていくようにファシリテートしてあげればいい。(中略)当初は、やっぱり残業が長く続いていたので、残業代が給与に組み込まれてしまっていた。残業代を生活費と認識していた中堅社員などは、やっぱり「ちょっと勘弁してよ」という気持ちがあったと思います。(中略)長時間労働体質にしたのは会社の責任でもあるわけだから、時間をかけて解決することですよね。一気にやると大変なので、少しずつ合わせてもらうことに尽きます。

丸井グループの青井社長は、最大の成果はイノベーションを創出できる会社になってきたことと話されております。これは、従業員がより主体的・創造的に仕事に取り組めるようになり、やりがいとか楽しさが出てきたからだというのです。

「残業が大嫌いになった」丸井グループの社長は働き方をどう変えたのか
出典 ダイアモンドオンライン 2018.3.29
小室 働き方改革の道のりを振り返ったときに、ビジネスにおける最大の成果は何だったと思われますか?
青井 イノベーションを創出できる会社になってきたことかなと思います。残業には、やらされる負担感がありますが、それが減ってきたことで、より主体的・創造的に仕事に取り組めるようになり、やりがいとか楽しさが出てきたからだと感じています。(中略)今、当社は「インクルージョン」をテーマに、「LGBT」「女性活躍」「健康経営」といったことにプロジェクトを通じて取り組んでいます。プロジェクトは、社員が自主的に手を挙げて参加するんです。面白いことに、健康経営の人気が高く、50人の募集に対して約5倍の260名が手を挙げました。志望動機を書いてもらって、選考したんですけど、ものすごくやる気がある人ばかり集まりました。

また、ダイバーシティに対しても先進的です。「女性だけのチームで車をつくりました」というのはダイバーシティ第一段階。丸井グループの青井社長は、おじさんだけの会議では「あれ、女性が1人もいないよね。これじゃ会議ができないから、仕切り直そう」というのです。

「女性と外国人を入れればダイバーシティ」という大きな勘違い
出典 ダイアモンドオンライン2018.3.30
小室 御社では、ダイバーシティとしてどんな取り組みを実践されていますか?
青井 たとえば、おじさんだけの会議は行わない。「あれ、女性が1人もいないよね。これじゃ会議ができないから、仕切り直そう」と。年配者だけでも会議をしません。年代と男女のバランス、ダイバーシティがある会議や打ち合わせ以外は流してしまうんです。(中略)
小室 「部長会議」など、その会議に参加する役職に、まだ女性が就いていないということはなかったですか?
青井 あります。あるんですが、役職を超えていいからやろうよ、と。そのほうが若手の育成にもなるということで、どんどん参加してもらいました。

いまだに長時間労働から発想を転換できない経営者にたいして、丸井グループ青井社長は「いずれやらなければいけないなら率先してやったほうが楽しい」とメッセージを送っています。

「女性と外国人を入れればダイバーシティ」という大きな勘違い
出典 ダイアモンドオンライン2018.3.30 
青井 僕は、事件と事故が起こって強制的にやらざるを得ない環境、状況に追い込まれてから嫌々やるのはすごく不本意だと思っているんです。いずれやらなければいけないのは、みんなわかっています。だったら、もう率先してやったほうが楽しいんじゃないか、と。(中略)ダイバーシティがあったほうが楽しい。時間は短くて効率的に仕事をしたほうが、その後の過ごし方も含めて楽しい。本来楽しいものなので、楽しくやりましょうというのがメッセージですね。

今回は、残業が年間44時間で「日本で最も残業が少ない会社」がイノベーションを目指す丸井グループを取り上げました。

働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。

さて、丸井グループ青井社長は、1人の中の多様性をいかに作るかが大事だと指摘しております。それは、1人の中の多様性ができると、自ら深めてきた知と外部の知を組み合わせてイノベーションを起こして、新しい価値が生み出せるからだというのです。

「女性と外国人を入れればダイバーシティ」という大きな勘違い
出典 ダイアモンドオンライン2018.3.30 
小室 御社では、働き方改革を続けてきた地道な活動の結果として、社内にもダイバーシティがあって、1人の人間の中にもダイバーシティがあった。だから外から入ってきたアイデアを素直に受け入れられたわけですね。
青井 今おっしゃった、「1人の中に多様性ができる」というのが、違う意見をインクルーシブに受け入れられることだと思います。だから、1人の中の多様性をいかに作るかが大事です。これができると、自ら深めてきた知と外部の知を組み合わせてイノベーションを起こして、新しい価値が生み出せる。

「1人の中の多様性をいかに作るかが大事」という考え方に私どもはもろ手を挙げて賛成いたします。

質は、私どもではこれをひとりディベートと呼んでいます。

物事には、一般的に良い点と悪い点、或いは好きなことや嫌いなことなどの両面性があります。

そこで、賛成と反対の両面から冷静に議論を検証してより良い結論を出す手法のことを、ひとりディベートと呼んでおります。

一般的に、誰でも自分の支持する立場が好きです。その為、自然と、誰もが自分の支持する立場に重きを置いて、問題解決を図ろうとします。

しかしながら、よく陥る罠がここにはあります。

それは、あまりにも自分の立場を擁護するために、ある意味「偏見」が強くなってしまい、バランスの欠けた議論に陥ることなのです。

例えば、誰かが問題点を示すと、そんなことはたいしたことではない、と十分に議論しないまま終わらしてしまったり、あるいは、極端な場合は、自分の意見を受け入れないことで感情的に反発をしてしまったりすることもあります。

こうした議論は、残念ながら説得性に欠ける可能性がとても高くなります。

また、一方的な考え方で構成された論理は、飛躍が多く、容易に否定されたり、あるいは、後で重要な問題が発覚する危険性もあります。

こうした危険性は、誰でもが問題の両面を同時に見ることで、自ら排除することができるのです。

つまり、自分の支持する議論に対して、自ら疑問を呈し、時にはその論理を修正することで、より説得性のある論理が構成できるようになるのです。

これが、「ひとりディベート」をお勧めする理由なのです。

ひとりディベートの事例は次のリンクから。

また、ひとりディベートを体得するのに効果的な企業研修は次のリンクから。