今回は、MBAが教える経営者研修の第二章「経営の本質」を説明いたします。

初めに経営者の方に質問です。

御社の資本コストは何%ですか?

特に上場企業であれば、経営者としては即答できなければなりません。いかがでしたでしょうか?

では、この理由を説明していきたいと思います。

初めに、理解しておきたいのが、「会社は誰のものか」です。

日本では歴史的に「会社は従業員のものだ」などの経営理念を持つ経営者が少なくありません。

しかしながら、これでは会社はそもそも誰がどのように設立されたのか、に回答できないのです。

ご自身で会社を設立された経営者であれば、ご自身で資本金を振込み会社登記した思い出があるはずです。

そうなのです、会社は株主が所有するものなのです。

従って、会社は株主に対するリターンを重視すべきことは理解できますね。

この代表的指標がROE(=当期純利益/株主資本)なのです。

ROEとは企業が株主資本(株主の投資)をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標となります。

そしてROEを向上させるためには、いかに分子である当期純利益を増やすかが重要です(財務的手法もありますが本質的でないため割愛いたします)。

では、当期純利益を増やすには、どうしたらよいでしょうか?

これは、前回「財務諸表を理解する」で説明しましたが、P/Lを見るとわかります。

どう売上を伸ばすか、原価や営業費用・一般管理費をどう減らすか、という発想は従来からあるものです。

こうした地道な努力と同時に考えるべきなのが、新たな投資です。

投資には、現状の設備を効率の良い設備へ更新する投資、新規事業への投資、M&Aなどがあります。

この投資の可否を判断するのに重要なのが、資本コストなのです(資本コストの詳細はここでは割愛させていただきます)。

結論から言えば、会社は資本コストを超えるリターンがなければ投資をしてはいけないのです。

何故ならば、資本コストは株主に対する最低レベルのリターンだからなのです。

さて、投資をすべきもう一つの理由があります。

それは、近年投資家や機関投資家から指摘されている、現金及び現金等価物の問題です。

リーマンショック以降、多くの企業では利益向上に努め、その結果として利益剰余金が積み上がっております(これを内部留保と呼ぶ場合もあります)。

これ自体はさほど問題ではないのですが、その内部留保が適切に使われずに現金及び現金等価物として積み上がっていることが問題なのです。例えば、現金及び現金等価物が総資産の3分の一に達する企業も散見するのです。

何故これが問題かというと、現金及び現金等価物は、株主に対する最低レベルのリターンである資本コストを上回る利益を生んでいないからなのです。

低金利政策下の現在では、現金を預金しても0.1%に満たない利息しか受け取れません。これは、資本コストを大幅に下回ってしまうのです。

そのため、投資家や機関投資家からは、企業価値向上のために積極的に投資をするか、もし投資案件がないならば、株主還元(配当や自社株買い)すべきとの声が高まっているのです。

株主や機関投資家からの要請にこたえるべく、各企業は配当だけでなく投資を重視する姿勢に変わってきておりますが、ここで投資判断に必要なのが資本コストということになります。

以上が、経営者が自社の資本コストを理解していなければならない理由なのです。

さて、この経営者研修第二章では、資本コストの構成要素や計算の仕方から投資判断で資本コストでなくハードルレートを使うべき理由、そして投資判断の基本である現在価値(PV)、IRR、正味現在価値(NPV)、NPV計算に必要な割引率等について、具体例を使いながら説明をいたします。

今回は、MBAが教える経営者研修(取締役及び執行役員向け):第二章「経営の本質」を説明いたしました。

MBAが教える経営者研修の詳細は次からご覧ください。
MBAが教える経営者研修: 取締役及び執行役員向け