ディベートを志すものとしては、有力新聞紙の社説を読み比べることはとても良い勉強になります。

其の例として、今回は、東京オリンピック新国立競技場問題を取り上げてみたいと思います。

さて、新国立競技場の旧建設計画について、文科省の第三者委員会が検証報告書を文科相に提出したことは、皆様もご存知のことと思います。

出典 産経新聞 社説2015年9月24日

「五輪招致決定後に白紙撤回すべきだった」 責任は文科、JSC双方のトップ 第三者委が検証報告書
総工費が膨れあがり、今年7月に白紙撤回となった新国立競技場の旧整備計画問題を検証してきた文部科学省の第三者委員会(委員長・柏木昇東大名誉教授)は24日、東京五輪招致が決まった平成25年9月から同年末までに計画をゼロベースで見直すべきだったとする検証報告書を取りまとめた。混乱を招いた責任については、適切な組織体制を整備できなかった日本スポーツ振興センター(JSC)と文科省の両組織トップにあると断じた。

第三者委は同日中に下村博文文科相に検証報告書を提出。下村氏とJSCの河野一郎理事長は自らの責任問題について判断するとみられる。
(中略)
第三者委は8月7日以降、計3回の会合を開いたほか、下村氏やJSCの河野一郎理事長ら延べ30人以上から聞き取りをしてきた。

有力紙である、朝日新聞と読売新聞は、報告書の指摘する文科省と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の責任を厳しく問う内容を評価しております。

出典 読売新聞 社説2015年9月25日

文科省と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の責任を厳しく問う内容だ。コスト膨張の主因だった巨大アーチ構造に固執し、批判を浴びたことを考えれば、納得のいく結論である。
(中略)
文科省と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の責任を厳しく問う内容だ。コスト膨張の主因だった巨大アーチ構造に固執し、批判を浴びたことを考えれば、納得のいく結論である。

出典 朝日新聞 社説2015年9月25日

問題を検証した文部科学省の第三者委員会による報告書が公表された。約1カ月半という短期間での検証だったが、その内容はもっともな指摘である。
(中略)
報告書は、旧計画の責任の所在として、下村文科相と山中・前文科事務次官、JSCの河野理事長を列挙。検証委の委員長は「巨大事業に対して組織体制が伴わず、ミスマッチを放置した結果責任」と述べた。

しかしながら、組織トップだけが責任を問われるという内容には、どこか腑に落ちない気持ちがありました。

そこで更に調べて行くと、毎日新聞が「JSCが設置した有識者会議が利益代表者による陳情の場と化していた」と重鎮の名前まで出して報告書より踏み込んだ発言をしておりました。

出典 毎日新聞 社説2015年9月25日

私たちはJSCが設置した有識者会議の運営方法などに問題があると以前から指摘してきた。

メンバーは日本ラグビー協会の要職にある森氏をはじめ、超党派のスポーツ議員連盟に所属する政治家、日本オリンピック委員会や日本体育協会、サッカーなど競技団体の幹部や著名作曲家ら「各界の重鎮」が並び、会議は利益代表者による陳情の場と化していた。開閉式の屋根を備えた8万人収容のスタジアムという基本構想はここから生まれた。

同様な観点から、東京新聞は「第三者委は元委員の石原氏はもとより、日本ラグビー協会前会長で、五輪大会組織委員会会長の森喜朗氏ら歴代有力委員の聴取をしていない」と名指しして、問題が十分に深掘りされていない状況を指摘しております。

出典 東京新聞 社説2015年9月25日

旧計画がなぜ破綻したのかを問うなら、その源流にまでさかのぼり、検証を尽くすべきだ。

石原慎太郎知事の時代に、二〇一六年東京五輪はじめ、サッカーやラグビーのワールドカップ(W杯)の招致活動が盛んだった時期がある。六年前の七月に先んじて勝ち取ったのは、一九年ラグビーW杯の日本開催だった。

ラグビーW杯の成功を目指す議員連盟は、一一年二月に旧競技場の八万人規模への再整備を決議した。四月には石原氏が二〇年東京五輪招致の意欲を示し、旧競技場を主会場とする機運が高まった。

まるで都民、国民不在のまま旧競技場の改修という選択肢が外され、建て替え路線が固まった。影響力を持つ政界やスポーツ界などの「重鎮」は、JSCの有識者会議委員に収まっていたのである。

報告書は当然「JSC理事長の諮問機関にもかかわらず、実質は重要事項の意思決定に関する承認機関となっていた」と問題視した。

なのに、第三者委は元委員の石原氏はもとより、日本ラグビー協会前会長で、五輪大会組織委員会会長の森喜朗氏ら歴代有力委員の聴取をしていない。時間不足は理由になるだろうか。

私は、残念ではありますが、一次情報を持っておりませんので、自分自身の持つ知識だけではどれが本当なのかは分かりかねるのですが、こうした新聞社など信頼の置ける情報を集めることで、推察をすることは可能です。

今回は、別段誰が責任を問われるべきだ、と犯人探しをすることは考えておりません。

もしろ、ここで強調しておきたいことは、一般的に言って、マスコミ各社も自身の調査能力や立場の違いで、記事の内容が異なることが多いことです。

その為、仮に1紙からの記事だけで他を調べなければ、もしかすると偏った見方で終わってしまうかもしれないということです。

ディベートを志すということは、様々な情報を集めることで、多面的な見方をして物事を考える習慣を身につけると言っても過言では有りません。

こうした習慣を身につけるためにも、一度弊社のウェブサイトで、ディベートについて学ばれることをお勧め致します。

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