「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログをきっかけに待機児童問題に再度注目が集まるようになり、厚生労働省が待機児童の解消に向けた緊急対策を発表するなど、待機児童問題が社会問題になっております。
女性の就業率向上や共働き世帯の増加により保育ニーズは拡大しており、都市部を中心に待機児童の発生が大きな問題となっています。待機児童問題は、女性の就業の妨げの1つの要因であり、少子高齢化で労働力人口が減少している我が国にとって、待機児童の解消は喫緊の課題なのです(Mizuho Industry Focus 2014年10月22日)
その待機児童の解消に向け、政府は2015年11月に目標を「50万人」へと10万人増やして、受け入れ枠確保する目標を掲げました(毎日新聞2016年4月24日)。
しかしながら、保育所を開設しようとすると「子どもの声騒がしい」「送迎の車不安」として近隣住民の反対で中止に追い込まれるケースが増えているのです。
皆様は、「子どもの声騒がしい」「送迎の車不安」で保育所建設が中止される事態をどう捉えますか?
住民反対、断念11件 開設遅れ15件 12年度以降 自治体毎日新聞調査
毎日新聞2016年4月24日 東京朝刊
近隣住民の反対などで保育所開設を断念した事例が2012年度以降、全国で少なくとも11件あったことが毎日新聞の調査で分かった。住民の要望を受け設計を変更するなどしたため開設が遅れたケースも15件あった。厚生労働省は待機児童解消に向け保育所などの整備を急いでおり、今後も同様の事例が出ることを懸念。各自治体に「早い段階から近隣住民に丁寧に説明し、途中経過も報告するなど理解を得られるよう努めてほしい」と求めている。調査は、昨年4月1日現在で待機児童が50人以上いる自治体と政令市、東京23区の27都道府県124市区町村を対象に実施し、全市区町村から回答を得た。
一方、地方自治体も努力を重ねておりますが、待機児童が増えているのが現状です。
例えば、待機児童数がもっとも厳しいと言われている世田谷区では、保育定員数を2011年から2016年で4460人増やしたにもかかわらず、認可保育園入園申込者数も2011年の4407人から、2016年の6439人と増加したため、待機児童が増えているというのです。
「子ども人口増」「認可園申し込み者増」を追う「待機児童対策」
出典 保坂展人世田谷区長 2016年03月22日
さて、待機児童数がもっとも厳しいと言われている世田谷区ですが、2011年に1万1265人だったか保育定員数を2016年で1万5925人まで4460人増やしてきました。その間、保育園の数も、198園から257園に増えています。一方で、認可保育園入園申込者数も2011年の4407人から、2016年の6439人と2032人(146%)という急激に増加し、保育園は新たに開園し保育定員も増えているのに、待機児童数は2012年786人、2013年884人、2014年1109人、2015年1182人と増えています。
前回は、「子どもの声騒がしい」「送迎の車不安」で住民の苦情を受けたり保育所建設が中止になった例を見てみました。
今回は、「「子どもの声騒がしい」「送迎の車不安」とする問題を乗り越えた例を見てみましょう。
世田谷区に11年にできた認可保育園では、約1年かけて計10回以上の住民説明会を開いた。当初は怒号が飛び交うほど住民の反対は強かったが、園側は「子どもは地域で育つ。子育てを応援してほしい」と粘り強く説得。住民の不安にも応じ、「自動車の送迎は禁止」「声が漏れにくいよう、窓は二重ガラスに」といった対策も取った。開園後は、住民がお散歩ルートを提案し、園児に声をかけてくれるまでになったというのです(朝日デジタル2016年4月14日)。
また、粘り強く話し合いを続けることで、地域住民と保育園との話し合いの道筋をつけた東京・世田谷区の例もあります。
東京・世田谷区の太子堂地区の保育園では、5年前に建設を計画した時、地域住民の反対の声に直面しました。議論がこう着する中、区と住民に対して、地域のまちづくりの中心メンバーだった梅津政之輔さんは話し合いに際して、区には計画の詳しい説明や住民たちの要望をできるかぎり聞いてほしいと求め、住民たちには不安や不信感を素直にぶつけることを提案しました。話し合いを続けること1年。子どもたちの声がうるさいという意見に対しては、当初、道路に面していた園庭の位置を変え、声が外に直接響かないように変更しました。さらに住民たちの心を動かしたのは、話し合いの場に建設予定の保育園の園長や保育士が率先して参加していたことでした。住民も個人的な反対意見を言うのではなく、地域の将来像について話し合うようになっていったといいます(NHKクローズアップ現代 2014年10月29日(水)放送)
こうした「子供の声」騒音問題の解決のヒントが、作花知志弁護士のブログにはあると思うのです。
ホテルで隣の部屋からピアノの音が騒音と苦情を言った夫婦に、フロントの係の方が「実はあの部屋には,著名なピアニストの方が現在宿泊されているのです。近々行われるコンサートの練習のために,特別に部屋にピアノを持ち込まれて,熱心にコンサートで弾く予定の曲を練習されているのです。」と言ったところ、その後はその夫婦は隣から聞こえてくるピアノの音色を楽しまれた,ということでした(弁護士作花知志のブログ ドイツ・子どもの騒音への特権付与法 2011-06-15)。
この話を裏付けるのが、八戸工業大大学院の橋本典久教授です。うるさいと思うかどうかは音の大きさだけではなく、相手との人間関係も影響する。「遮音壁などの防音対策だけではなく、『うるさく感じない』関係づくりが大切」というのです(朝日デジタル2016年4月14)。
つまり、単純にうるさい、うるさくないというのではなく、お互いが向き合って理解し合える関係を気づきあげることが保育所開設問題の解決に繋がるのではないでしょうか?
今回は、「子どもの声騒がしい」「送迎の車不安」とする問題を乗り越えた例を見てみました。
なお、下記には全文が掲載されております。
「子どもの声騒がしい」「送迎の車不安」で保育所建設が中止の是非について/
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