1990 年代前半までは 1000 万人を下回っていた非正規雇用者は、その後ほぼ一貫して増加が続きアルバイト・パートや派遣社員、期間従業員など、いわゆる「非正規労働者」は2016年には日本に2000万人超(2017年総務省労働力調査)。全労働者に占める割合は約38%まで高まっています。

非正規雇用が拡大した背景には、多くの非正規雇用を抱える産業が伸びたことがあります。非正規雇用比率の水準は産業によって大きく異なる(図表 6)。すべての産業で 10 年前と比べ非正規雇用比率は高まっているが、2014 年時点で水準が高いのは「飲食店,宿泊業」や「生活関連サービス業,娯楽業」などです(三菱UFJリサーチ&コンサルティング2015 年 7 月 31 日)。

非正規社員の「比率が高い」500社ランキング(東洋経済オンライン2015年02月26日)によれば、上場企業の非正規社員比率を割り出して、上位500社をランキングしたところ、それを平均すると約45%であるというのです。

その企業を見ると、聞いたことがある企業がずらりとならんでおり、驚くべきことは上位の企業の非正規社員比率は90%超にも達しているのです。

例えば、1位は小僧寿し(非正規社員比率は94.5%)、3位は丸亀製麺のトリドールホールディングス(93.5%)、4位は‎「かつや」かつ丼のアークランドサービス(93.1%)、5位はベーカリーレストランサンマルクのサンマルクホールディングス(91.6%)といった状況です。

こうしたアルバイトを中心とした非正規社員比率が高い企業にとって、どのようにしてサービスや仕事の質を上げていくかが最重要といってもよい経営課題なのです。

このサービスや仕事の質を上げるために、障害となるのが高い離職率です。

離職率が高い原因は、企業それぞれにまた業界として様々ではありますが、飲食業を例にとって幾つかを挙げてみましょう。

出典:Airレジマガジン 2017年1月27日
負担になる勤務体系
飲食店は土・日・祝日に多くのお客様が来店するため、世間一般の休日に休みが取りにくいです。会社員の友人との予定が合わない、週末のイベントに参加できないなど、我慢する場面が多くなります。同僚が急な休みを取った時には、別の従業員の補充は難しく、人員不足のまま働かなければなりません。ピーク時以外にもお客様が引かない場合は、そのまま延長勤務になることもあり、気が付くと長時間労働していたということも少なくありません。曜日の制約、仕事のしわ寄せ、長時間労働などを負担に感じて辞めてしまう人が多いのです。

従業員同士のコミュニケーション不足
多くの飲食店では、正社員よりもアルバイトやパートの方が多いのではないでしょうか。それぞれがシフト制で働いているため、顔を合わせることが少なくコミュニケーションがとりにくくなります。夜の清掃が不十分なことにより、朝の仕事が増えることがあり、要望を伝えることもできずに負担と仕事に対する不満が増えるということもあります。

やりがいにつながりにくい
飲食店の仕事はルーチンワークになることが多く、賃金も上がりにくいのが現状です。評価体制もしっかりしておらず、やりがいを感じることが少なくなり、将来の不安から離職へとつながります。

こうした企業では、サービスや仕事の質を上げようとしても、離職率が高いため従来の日本的終身雇用に支えられた従業員満足度向上等の手法は有効ではありません。

こうした経営環境下で、近年従来の従業員満足度的手法に代わるものとしてエンゲージメント手法が注目されております。

従業員満足の視点では、従業員は会社から給料や福利厚生などを「求め」、企業は従業員に労働を「求め」ます。しかしエンゲージメントでは、従業員は会社に価値を「提供」します。企業は、従業員の提供した価値を評価し報酬などを「提供」を約束するのです。

即ち「エンゲージメント」とは、従業員と企業の関係を示しており「相互に貢献し成果を出す幸せな関係」という意味が近いのです。

企業と従業員の新しい関係「エンゲージメント」について
出典 HRPro 2012/06/01
ケラー 従業員満足度とエンゲージメントの違いは「求める」と「提供する」の違いです。従業員満足の視点では、従業員は会社から「給料を求め」、福利厚生などの「便益を求め」企業は従業員に「労働を求めます」。しかしエンゲージメントでは、従業員は会社に自らの能力によって「価値を提供」します。企業は、従業員の提供した価値を評価し、それを最大化できるような「環境や報酬や機会の提供」を約束します。エンゲージメントは組織と従業員とが相互に「貢献する」ことを約束することなのです。

エンゲージメント導入で、8割がアルバイトにも関わらず、自発的に顧客に感動体験を提供すのがスターバックス コーヒー ジャパンです。

「スターバックスコーヒー」と聞いて思い浮かぶのは、メッセージが書かれたドリンクカップなど、顧客一人ひとりに合わせたきめ細やかなサービスです。こうしたサービスは、実はマニュアルには書かれていないのです。

「パートナーがさまざまな形で一人ひとりのお客様のニーズに応えようとした結果」と久保田 美紀さん(スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 人事本部 人事部 部長)は説明しております。

顧客を感動させるサービスは従業員の「内発的動機」から生まれる
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか
出典 日本の人事部 2017/09/07
スターバックスには、サービスに関するマニュアルがほとんどありません。ドリンクカップへのメッセージもマニュアルにはなく、パートナー(従業員)が自発的に行っているものです。最近はメッセージとともにかわいい動物のイラストが描かれていたりして、若い人の個性がどんどん発揮されているな、と感じています。

メッセージに限らず、パートナーはさまざまな形で一人ひとりのお客様のニーズに応えようとしています。注文を迷っている方にはおすすめのドリンクの紹介や、「このドリンクにヘーゼルナッツシロップを入れるとおいしいですよ」といった、カスタマイズの提案もしています。そうすることで、そのお客さまだけのオリジナルドリンクが出来上がるのです。

待ち時間を長く感じさせないような工夫も行われています。レジカウンターにお客さまが並んでいる時にはメニュー表をお渡ししたり、ドリンクを提供するカウンターでお客さまに話しかけたり。もちろんこれもマニュアルにはなく、パートナー一人ひとりが考え、意見を出し合った結果です。

では、どうしてパートナー(従業員)はお客様に自発的にこうしたサービスを提供するのでしょうか?

日本国内のスターバックスに働く3万3千人を超えるパートナーの8割以上はアルバイト。こうした自発的な対応は「マニュアル」ではなく、パートナーの「エンゲージメント」にあるというのです。

顧客を感動させるサービスは従業員の「内発的動機」から生まれる
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか
出典 日本の人事部 2017/09/07
日本国内のスターバックスでは3万3千人を超えるパートナーが働いていますが、その8割以上はアルバイト。アルバイトは若い世代が多く、働く動機もさまざまです。新しい世代の価値観や個性は変わり続けていくのが常だと思いますが、そうした中で企業として一体感を醸成していくには、核となるものが必要です。私たちはその核が「マニュアル」ではなく、パートナーの「エンゲージメント」であると考えています。
(中略)
注目すべきは「強い欲求(Strong Desire)」という言葉を用いている点。スターバックスのパートナーは「顧客のため、店舗のため、地域のために何かをしたい」という強い欲求を持って働いてくれています。この欲求によって、パートナーは常にお客さまが求めていることを考え、自発的に行動することができるのです。

パートナーたちのエンゲージメントは、スターバックスとパートナーとの「関わり方=つながり」を感じることで生まれます。つながりとは、スターバックスという会社が大切にしている価値観と、個人が大切にしている価値観が重なり合い、共感することで芽生えるもの。つながりがあることで、パートナーはスターバックスを自分の居場所だと感じ、スターバックスとともに成長しようという、内発的動機になるのです。

パートナーのエンゲージメントには会社をも再生する力があります。

実は、2007年頃アメリカ本国の業績悪化からスターバックスが再生できたのは、パートナーとの間に感情的な心の絆を取り戻したからだったのです。

顧客を感動させるサービスは従業員の「内発的動機」から生まれる
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか
出典 日本の人事部 2017/09/07
かつて、一度退任したハワード・シュルツがCEOに復活した時の話はご存じかもしれませんが、2007年頃、アメリカ本国では業績悪化が止まらない状態にありました。その状態からスターバックスを再生するため、何よりも重視したのが、パートナーとの間に感情的な心の絆を取り戻すことでした。人々の考え方が多様化し、ビジネスステージが変わり続けていく中でも、スターバックスが正しいと思ったことにパートナーが共感しているか、パートナーが本気でやりたいと思っているか、そんな感情的なつながりがビジネスへも大きく影響します。ユニークかもしれませんが、そんな風にエンゲージメントをとらえることが、スターバックスの経営の根幹にあります。

従業員をパートナーと呼ぶのも、ともにスターバックスをつくりあげていく対等な立場だと考えているからです。そのためハワード・シュルツは、経営陣が集まる役員会の場でも常に、「その場にもしもパートナーやお客さまが座っていたら、どのように考え、発言するかを意識すべきだ」と言っています。。

皆様の会社では、従業員は「顧客のため、会社のため、地域のために何かをしたい」という強い欲求を持って働いているでしょうか?

今回は、従業員の8割がアルバイトにも関わらずエンゲージした従業員が自発的に顧客に感動体験を提供するスターバックス コーヒー ジャパンを取り上げました。

働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。

働き方改革を進めるには人財への投資が必須です。企業研修は次のリンクから。

人材に投資をすることで企業の売り上げは増加するのです。

厚生労働省による平成17年度「能力開発基本調査」によると、過去数年の間に人材育成費を増やした企業のうち、売上高が増加している企業の割合は51.2%と半数以上を占めている一方、人材育成費を減らした場合、売上高が増加している企業の割合は24.1%にと留まっていることから、人財投資をすることは企業業績を向上させることがわかります。

では、従業員の能力向上のためにどのような企業教育をすべきでしょうか?

私が提案をしたいのが、ディベート研修です。

ディベートを学ぶことで、働き方改革を実現するために不可欠な6つの基本能力を獲得することができます。

1.論理的思考力

ディベートの基本は、「ロジック3点セット」。
全ての主張は、証拠と理由に基づかねば説得力を持ちえないという原則です。
「ロジック3点セット」がディベートの基礎であり、これをマスターすることで、あなたの議論はグローバルに通用するものとなります。

2.分析力

全ての議論を「ロジック3点セット」に照らし合わせて分析することで、その議論の強みと弱みをあぶりだすことができます。
また、「立論構成の最適化」の考え方に照らし合わせて議論構成をチェックすることで、その議論を的確に改善・強化できます。

3.洞察力

相手のロジックを推察する洞察力が身につくことで、相手のロジックを乗り越え、さらに高みのある議論に発展させることができます。

4.質問力

質問によりロジックを掘り下げ、議論をさらに深堀する技術。これをマスターすることで、実務現場で議論を推進し、より深みのある解決策を発見することができます。

5.問題解決力

ディベートの最終目的は問題解決。問題解決策をソリューションプランとして企画・立案できる能力を獲得できます。
原因分析に基づく解決策の提案で重要なコンセプトが「立案構成の最適化」。
これを学ぶことで、相手のニーズに合わせて、最も効果的なプランを提案できるスキルが身につきます。

6.コミュニケーション能力

ディベートでは実際に試合、あるいはプレゼンテーション、質疑応答といった演習を通じて総合的なコミュニケーション能力をブラッシュアップできます。思いがけない反論や、時間のプレッシャーの中で、いかに効果的に議論を進めてゆくべきかについて、身を以て学ぶことができます。

さて、働き方改革は、日本の産業を強くして競争力を取り戻すための絶好のチャンスです。そのための課題は、従業員一人一人が時間当たり労働生産性を向上させること、そして収益性の高いビジネスを開拓することです。本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきです。

詳細は次のリンクを御覧ください。