カジノ法案が衆参両院で可決されました。

カジノ法案成立 与党・維新の賛成多数
出典 日本経済新聞 2016/12/15
カジノを含む総合型リゾート施設(IR)の整備を推進する法案(カジノ法案)が2016年12月15日未明の衆院本会議で自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。
法案は14日夜の参院本会議で修正のうえ可決され、衆院に戻されていた。これを受け22時から開かれた衆院本会議で、14日までだった会期を17日まで再延長することを議決し、15日未明に成立させた。法案に反対する野党4党が提出した内閣不信任決議案は、与党などの反対多数で否決された。

前回は、具体的にどこでカジノを含む統合型リゾート(IR)を設立しようとしているのか、そして予想される経済効果を探りました。

今回は、統合型リゾート導入によるギャンブル依存症問題を取り上げたいと思います。

初めに、ギャンブル依存症とは何でしょうか?

ギャンブル依存症
出典:ウィキペディア
ギャンブル依存症(gambling addiction、ギャンブルいそんしょう、ギャンブルいぞんしょう)とは精神疾患のひとつで、賭博(ギャンブル)に対する依存症である。ギャンブルを渇望する、ギャンブルをしたいという衝動を制御することができない、ギャンブルをするせいで借金など社会生活上の問題が生じているにもかかわらずやめられない、といった状態が繰り返され、身体的、心理的、社会的健康が害されたり、苦痛であったりする。

始めに理解すべきことは、ギャンブル依存症は意思とかの問題ではなく、脳にも明らかな変化が起きる病気であり、8割方はごく平凡な人が罹るということです。

“ギャンブル依存症” 明らかになる病の実態
出典 クローズアップ現代 2014年11月17日
いったんギャンブルにのめり込むと、なぜやめられなくなるのか。
右側の画像は、一般の人の脳が周囲の刺激に対し、赤く活発に活動している様子を示しています。
一方、左側の依存症患者の脳では活動が低下しています。
ギャンブルにだけ過剰に反応するようになり、脳の機能のバランスが崩れてしまったのです。
京都大学大学院医学研究科 医師 鶴身孝介さん
「意志の問題で片づけられてしまいがちだが、脳にも明らかな変化が起きている。
(ギャンブル依存症の)影響は大きい。」
(中略)
ゲスト田辺等さん(北海道立精神保健福祉センター所長)
●脳は具体的にどう変化する?
ギャンブルで勝った体験が、強烈に脳の記憶に刻印されてしまうんですね。
そのために、繰り返しその刺激を求めていくと。
ギャンブルで勝った時の体験がイメージされて、それが強烈な欲求になってくると。
結果として、ほかの娯楽や、ほかのゲームでの快感というものがあまり感じられなくなって、そういうギャンブルに特異的に反応するような、脳の機能変化が起きてくるんですね。
●どんな人がギャンブル依存症に陥る?
8割方はごく平凡なサラリーマン、公務員、主婦、大学生、あるいは年金生活者です。
ギャンブルの問題が始まるまではごくごく普通に生活を営んでいた人が8割方で、2割方には、少しうつのような方もいらっしゃいます。
ですが、ほとんどの方は、このギャンブルの問題が始まるまでは、ごく平凡な主婦であったり、サラリーマンであった。
ですから私のところに相談に来たご家族が、こんなふうなギャンブル依存症なんて病気はなかなか認められない、先生の言うことは信じられない、だけども私の妻がお金を持ち出して、パチンコやスロットをやって、たくさんの借金を作って帰ってくる。
それがだめだと言って、立ち直ると約束しても、まだ陰で隠れてやっている。
あげくの果てにほかの人の玉にまで手をつけようとする、そのようなことを説明するのには、これはギャンブルの病気になったと受け入れるしかないと、そんなふうにおっしゃるんですね。
もちろん息子さんの場合でも、大学生の息子が、高校まではスポーツも学業も、それから生徒会の役員もやってた。
なんであれが、うちの息子なんだろうというような、そういうこともあるんですね。
そのぐらい病前は普通の方が多いです。

では、ギャンブル既存症になるとどうなるのでしょうか?

参議院議員山本太郎氏は、ギャンブル依存症恐ろしさを国会で取り上げております。

内閣委「日本はすでにギャンブル依存症の大量生産国。さらに依存症を増やすカジノ法案は論外!」
出典「参議院議員 山本太郎」オフィシャルホームページ 2016.12.08.
精神疾患と捉えた方がいいと本格的な治療を訴えてきた方が精神科医の森山成彬さん。これ、NHKの番組で放送されている中の発言をピックアップしたんですけれども、生易しい病気じゃないよ、ギャンブル障害になったら脳が変わるんだと。同じことおっしゃっていますよね、先ほどの方と。
森山さんは九年前、正確な実態を知ろうと患者百人に対して日本で初めてギャンブル依存症の調査を行った。平均的な姿は、二十歳でギャンブルを始め、二十八歳で依存症の兆候が出始めたりとか借金をし始める。二十歳ぐらいでギャンブルを始めたら、もう人によってこれは個人差あるんでしょうけどね。ところが、病院で受診したのは十年余り、ある方の話なんですね、これはね。とにかく周囲の人が依存症の兆候にいち早く気付き本人に治療を受けさせることが重要なんだけれども、見過ごされていると。この中でも、特に百人の方、いろいろ見ていったら、つぎ込んだ金額が平均一千二百九十三万円、中には一億円を超えてもやめられないという人がいたと。
(中略)
夏場になるといつも流れてくる悲しいニュースありますよね。パチンコ屋の駐車場に車を止めて子供を放置したまま死亡させた件数。ちょっとこれ急に、質疑があるというんで急に国会図書館国会連絡室に連絡しまして、事務所で、二〇〇七年以降、どこか一つの新聞社で結構なので新聞記事になっているそういう事例を教えてくださいといったら、二〇〇七年以降で記事になっているので七十三件ヒットしたと。ならなかったものもあるんですかね、よく分からないですけど。親のくせに子供から目を離して何をやっているんだと、そういう次元の話ではないということだと思うんです。親はギャンブル依存症という立派な病気であった可能性が高いと。
ほかにも、家族を巻き込んだ事件というのも数え切れないほどある。一番分かりやすい例を言うと、二〇一四年の十月、長男がギャンブル依存症から抜け出せず、金を無心され続けた六十五歳の父親が追い詰められ、将来を悲観し長男の首を電気コードで絞めて殺害、犯行後に本人も自殺を図った事件。長男は、病院でギャンブル依存症と診断され入院治療を試みたけれども、途中で退院してしまうなどうまくいかなかった。無心が続く。金をくれ、金をくれ、金を出せ。それによって奥様はうつ病を発症して、そんな中、金の要求は更にエスカレートした、金額は少なくとも一千四百万円に上った。
ギャンブル依存症によって、離婚どころではないんだ、一家離散なんて当たり前と。最悪のケースでは家族内での命の奪い合いにまで発展するおそれがあるのがギャンブル依存症である。経済的、社会的、精神的に破壊的な問題が生ずるにもかかわらず、ギャンブル、パチンコ、スロット、競馬、競輪、競艇などを止めることができない状態、これがギャンブル依存症なんだよ。ギャンブルで勝った体験、強烈に脳の記憶にもう染み付いている、刻印されてしまっている。繰り返しその刺激が欲しい、勝ったときの体験がもうイメージされまくって、それが強烈な要求になっていくんだと。結果として、ほかの娯楽やほかのゲームでの快感というものが余り感じられなくなって、そういうギャンブルに特異的に反応するような脳の機能変化が起きてくると。

こうした依存症を防ぐためには、カジノを日本に導入すべきでないとする意見を紹介します。

主張 ギャンブル依存症「対策」いうならカジノやめよ
出典 しんぶん赤旗
 ギャンブル依存症は長く、個人の道徳性や自己責任の問題ととらえられてきました。ギャンブルの提供者はこの見方に都合よく便乗し、ギャンブルの利益は自分のポケットに入れる一方、それで生じる問題は関係ないという顔をしてきました。
 競馬や競輪など6種の公営賭博の胴元である農水省、経産省などの中央省庁は、公営賭博でギャンブル依存症が生じている事実そのものを認めていません。パチンコ・パチスロの大きな権益を握る警察庁も「のめり込みがあることは承知している」と人ごとのようにいうだけです。
 政府は「カジノを機に包括的なギャンブル依存症対策を行う」といいますが、それならなぜ、いままで手をこまねいてきたのか。これでは、お茶をにごす対策に終わることは目に見えています。
 カジノ解禁推進法は、カジノ施設の目的を「財政の改善に資する」としています。カジノを財源としてあてにするのは危険なのに、これでは国や地方自治体がますます“ギャンブル依存体質”になり、ギャンブル利用者拡大政策に乗り出しかねません。依存症対策とは相いれないことです。
 カジノと絡めてギャンブル依存症対策を語るというのが間違っています。カジノが生み出す依存症を防ぐためには、カジノを日本に上陸させないのが一番です。

確かに、日本は先進国の中でも極め付きでギャンブル依存症が多いという調査報告がなされております。

日本のギャンブル障害の有病者数は536万人とされ、イギリスの0.5%、スペインの0.3%、スイスの0.8%、スウェーデンの0.6%、カナダの0.5%、米国の0.42%と比較すると桁違いの高さなのです。

カジノ法案とギャンブル依存症。
出典 ハフポスト2016年12月15日
では、そんなこの国でギャンブル依存症になっている人はどのくらいいるのだろうか。
「日本のギャンブル障害の有病率は、厚生労働省助成の研究班による調査で明らかにされました。2008年の調査で5.6%(男性9.6%、女性1.6%)、2013年の調査で4.8%(男性8.7%、女性1.8%)です。この結果から厚労省は2014年8月、国内の有病者数は536万人と発表しました。ちょうど北海道の人口と同じです。
この有病率は、イギリスの0.5%、スペインの0.3%、スイスの0.8%、スウェーデンの0.6%、カナダの0.5%、米国の0.42%と比較すると桁違いの高さです。アジアでもマカオが1.8%、シンガポールが2.2%にとどまっています」

そのギャンブル依存症の多さを裏付けるのが、なんと世界全体(130カ国あまり)のギャンブル機の60%が日本一国にあるというのです(パチンコ・パチスロ機を含む。これがガンブルであるのかついては次回検証します)。

出典 日本にカジノを
 一目瞭然ですが、全世界の稼働ギャンブルマシン最多国として日本だけ突出しています。GTA(注:オーストラリアの賭博機メーカ団体 Gaming Technologies Association)によると、2011年は全世界で701万1千台のギャンブル機が営業稼働し、その内、日本には421万1千台が設置されているという事ですから、世界に占める日本のシェアは60%にもなります。世界のギャンブル機が6割も日本にひしめいているのです。
 日本のマシン台数は、2位アメリカ(86万2千台)の5倍近くあり、他国を大きく突き放します。

パチンコ、スロットの店舗数は、「コンビニのローソンよりも多く、全国に1万2000館あるというのです。

カジノ法案とギャンブル依存症。
出典 ハフポスト2016年12月15日
まず、パチンコ、スロットが全国津々浦々まで店舗展開しているこの国だが、一体どれくらいの数の店があるのだろう。
実態はと言えば、「コンビニのローソンよりも多く、全国に1万2000館あります。ギャンブルの機器の台数では、世界720万台の3分の2が日本に集中しています。朝は10時から夜も10時まで開店していて、冷蔵庫つきのロッカーや託児所を備えているホールも珍しくありません。ATMの設置もほぼいきわたっています。窮極の至便性と安楽性が実現されているのが、パチンコ/スロットなのです」
世界のギャンブル機器の3分の2が日本に集中しているとは、驚きの数字である。

日本は既に「ギャンブル大国」というのです。

この日本に新たにカジノというギャンブルを解禁すべきなのでしょうか?

更に、カジノ解禁で“若年ホームレス”急増が問題になるという声もあります。

海外では社会問題 カジノ法案が招く“若年ホームレス”急増
出典 日刊ゲンダイ 2016年12月6日
 日本で真っ先にカジノの餌食になりそうなのが、ギャンブルに免疫のない若者だ。厚労省研究班は、国内にギャンブル依存症の疑いがある患者が計536万人いると推計。そのうち20~30代の男性が188万人、女性は15万3000人に上る。若年層が成人全体の約4割を占める。
 カジノ解禁は「若年ホームレス」の急増を招きかねない。若者の貧困に詳しいノンフィクションライターの中村淳彦氏が言う。
「ホームレスとなる若者が増えているのは、非正規雇用の過酷な職場の実態が影響していると思います。派遣切りやパワハラなどでストレスをためた若者がギャンブルに走り、鬱憤を晴らす姿を私はたくさん見てきました。中には依存症になってしまった人もいます。カジノ法案が成立し、さらにギャンブルが身近となれば、若者の貧困にますます拍車が掛かる恐れがあると思います」
 安倍首相は雇用改善に胸を張るが、14年度の若者の非正規雇用の割合は15~24歳が30.8%、25~34歳が28.0%(内閣府調べ)と依然、高止まりしている。若者がバクチに向かう環境は変わっていない。

以上、今回は、統合型リゾート導入によるギャンブル依存症問題を探ってみました。

次回は、統合型リゾート導入ではギャンブル依存症問題が増えるわけではないとする反対の見方を取り上げたいと思います。

 

カジノ法案について賛成と反対から深く論じたひとりディベートは次から御覧ください。

日本でカジノを解禁すべきか

 

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