最近は働き方改革に大きな関心が寄せられており、毎日のように様々な取り組みが報道されております。

働き方改革の課題として長時間労働の是正がありますが、実際に日本の平均年間総実労働時間は国際的にどのようなレベルなのかを見てみましょう。

労働政策研究・研修機構によれば、日本の平均年間総実労働時間(就業者)は, 1988年の改正労働基準法の施行を契機に労働時間は減少を続け, 2015年は1,719時間となっております。

主要諸外国についても減少, 横ばい傾向を示しており, 2015年にはアメリカ1,790時間, イタリア1,725時間,イギリス1,674時間, スウェーデン1,612時間, フランス1,482時間, ドイツ1,371時間などとなっています。

こうしてみると、既に日本の平均年間総実労働時間はアメリカ、イタリア、イギリスと遜色がないレベルに達しおり、一見すると、労働時間を減らす必要性はさほど重要ではないように見受けられるかもしれません。

しかしながら、実態はかなり違うのです。

日本では、パートタイム労働者が増加した結果、総実労働時間が減少しているように見えるのです。

働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定、首相官邸ウェブページ)の参考資料「年間総実労働時間の推移」によれば、年間総実労働時間は減少傾向にある(1996年1919時間から2015年1734時間)ものの、これはパートタイム労働者の比率が高まったことで見かけ上全体の総実労働時間が減少したもので、一般社員ではこの20年間ほとんど変化はなく未だ2000時間を超えている(1996年2050時間、2015年2026時間)のが実情なのです。

即ち、日本の多くの企業では一般社員が重要な仕事をこなしていることを考えると、この2026時間と他国の比較をしなければなりません。

アメリカ1,790時間と比較をすれば13%、フランス1,482時間と比較すれば37%、日本に似て自動車など製造業が強いドイツ1,371時間と比較をすれば48%も多いのです。

ドイツは、自動車など日本と競合する製品も多くあるので、どのような働き方をしているのかを参考になることが多いはずですので、この点を検証してみたいと思います。

統計的な資料からは、具体的な働き方は見えてきません。

ここで、大変興味深い事例をご紹介します。

それが、2015年にドイツの同業他社との経営統合をした、DMG森精機です。

ドイツの同業他社と経営統合をしたのですから、横並びで、日本とドイツの働き方を比較できるという観点から、参考になることが浮かび上がると思います。

さて、DMG森精機は2015年にドイツの同業他社との経営統合をしたのですが、その取締役社長である森雅彦氏は、(経営統合当時)日本は2400時間近くも働いていたのに、ドイツはたった1650時間しか働いていないことに驚かされたのです。

出典 日経ものづくり 2018年2月号 残業なしで高品質ドイツ流を日本にも

2009年にドイツのGildemeister社(現DMG Mori社)と業務・資本提携を締結して以来、製品の共同開発や「DMG MORI」へのブランド統一、そして2015年に子会社化と、経営統合を進めてきました。その過程で気づいたことがあります。日本とドイツを比べると、品質は互角なのに、労働時間はドイツの方が圧倒的に短いのです。ドイツのフロンテン工場では残業をほとんどしませんが、日本の工場と同じぐらい高品質な製品を造っています。
(中略)
ところが、社員1人当たりの年間総労働時間を見ると、日本は2400時間近くも働いていたのに、ドイツはたった1650時間しか働いていなかったのです。

そもそもドイツでは、1日の労働時間の上限が10時間と法律で定められているので、どんな状況でも作業を中断しなければなりません。これが日本だと、つい夜遅くまでやってしまいがちだというのです。

しかしながら、DMG森精機の取締役社長である森雅彦氏は、ドイツ人は脇目も振らずに業務をこなしていく、その集中力には見らなうものがあると指摘をしています。

また、個々人の働き方にも労働時間を短縮する仕組みが組み込まれているというのです。

出典 日経ものづくり 2018年2月号 残業なしで高品質ドイツ流を日本にも

ドイツは何故短い労働時間で日本並みの品質を実現できるのか。経営統合を黄にドイツの働き方を観察する中で、色々と分かってきました。

まず、ドイツは年間計画や中期計画と言ったスケジュールを作るのが上手です。それは、自分自身の行動を細かくプログラミングしているともいえます。中長期のスケジュールがあるからこそ、その日にやるべき仕事が見えているし、休みも取れるというわけです。

自分で自分の仕事を決めるということに少し驚きを隠せない方も多いのではないでしょうか?

上司や周りの都合で日々新たな仕事が飛び込んできたり、明日までお願い、など督促で急な残業を強いられる日本の会社の働き方とは、全く異なる状況ですね。

また、DMGの取締役社長である森雅彦氏は、ドイツ人は、個別の議論をする前に、全体構造の議論に時間を欠けるとも指摘をしています。

出典 日経ものづくり 2018年2月号 残業なしで高品質ドイツ流を日本にも

日独の代表者を集めた会議に集積する機会があるんですが、(中略)そのような会議で、ドイツの人々は個別の議論より全体構造の議論に時間をかけます。いきなり技術や製品お話から入るのではなく、「IoTやAIを活用する社会の仕組みはどうなっていくべきか」とか、「社会の仕組みに合わせて法律の構造をどう変えるべきか」とか、そういった大枠を決めてからでなければ次の議論に進みません。

DMGの取締役社長である森雅彦氏は、(ドイツを拠点とする欧州の)SAP社のERPパッケージのような非常に複雑なITシステムを実現できるのも、全体構造の議論を重視する文化があるからではないか、と受け止めております。

こうした、ドイツ人の働き方を参考にして、働き方改革を実行していった結果、DMG森精機では、事業は好調である一方、有給取得も上がり、労働時間も短くなっていったのです。

出典 日経ものづくり 2018年2月号 残業なしで高品質ドイツ流を日本にも

2015年は社員1人当たりの有給取得が13日でしたが、2017年には17.5日に増えました。一方、月平均残業時間は2015年が34時間だったのに対し、2017年は20時間と、短くなっています。年間総労働時間も2017年には2000時間強なので、2015年の2400時間に比べてだいぶ短くなりました。

勿論、ドイツの1,371時間と比べれば、まだまだ改善の余地はあるとは思いますが、ドイツから学ぶことは大いにありそうです。

さて、以上ドイツの同業他社との経営統合をしたDMG森精機をケースとして見てきましたが、「残業なしの高品質ドイツ流」には、働き方改革を推進する上で大きなヒントが隠されていると私は思います。

こうした新しい観点から、自社の働き方を点検してみるのも良いのではないかと思う次第です。

働き方改革の事例をもっと見るには次のリンクから。

働き方改革を進めるには人財への投資が必須です。企業研修は次のリンクから。

さて、私は、本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきと考えております。

厚生労働省による平成17年度「能力開発基本調査」によると、過去数年の間に人材育成費を増やした企業のうち、売上高が増加している企業の割合は51.2%と半数以上を占めている一方、人材育成費を減らした場合、売上高が増加している企業の割合は24.1%にと留まっていることから、人財投資をすることは企業業績を向上させることがわかります。

では、どのような企業教育をすべきでしょうか?

私が提案をしたいのが、ディベート研修です。

ディベートを学ぶことで、働き方改革を実現するために不可欠な6つの基本能力を獲得することができます。

1.論理的思考力

ディベートの基本は、「ロジック3点セット」。
全ての主張は、証拠と理由に基づかねば説得力を持ちえないという原則です。
「ロジック3点セット」がディベートの基礎であり、これをマスターすることで、あなたの議論はグローバルに通用するものとなります。

2.分析力

全ての議論を「ロジック3点セット」に照らし合わせて分析することで、その議論の強みと弱みをあぶりだすことができます。
また、「立論構成の最適化」の考え方に照らし合わせて議論構成をチェックすることで、その議論を的確に改善・強化できます。

3.洞察力

相手のロジックを推察する洞察力が身につくことで、相手のロジックを乗り越え、さらに高みのある議論に発展させることができます。

4.質問力

質問によりロジックを掘り下げ、議論をさらに深堀する技術。これをマスターすることで、実務現場で議論を推進し、より深みのある解決策を発見することができます。

5.問題解決力

ディベートの最終目的は問題解決。問題解決策をソリューションプランとして企画・立案できる能力を獲得できます。
原因分析に基づく解決策の提案で重要なコンセプトが「立案構成の最適化」。
これを学ぶことで、相手のニーズに合わせて、最も効果的なプランを提案できるスキルが身につきます。

6.コミュニケーション能力

ディベートでは実際に試合、あるいはプレゼンテーション、質疑応答といった演習を通じて総合的なコミュニケーション能力をブラッシュアップできます。思いがけない反論や、時間のプレッシャーの中で、いかに効果的に議論を進めてゆくべきかについて、身を以て学ぶことができます。

さて、働き方改革は、日本の産業を強くして競争力を取り戻すための絶好のチャンスです。そのための課題は、従業員一人一人が時間当たり労働生産性を向上させること、そして収益性の高いビジネスを開拓することです。本当の働き方改革実現の為には、社員が従来の慣習にとらわれず、効率的により良い成果を出せるようなスキル研修を積極的に実施すべきです。

詳細は次のリンクを御覧ください