英語でビジネスができるようになるには、ビジネスの知識と対話をどのように身につけるかが重要です。
前回は、どのようにして英語でビジネスの知識を習得するかについて考察してみました。
今回は、ビジネスをするための対話について取り上げてみたいともいます。
ここでビジネスをするための対話とは、英会話学校で教えているような、挨拶や道の尋ね方の類ではありません。交渉で経験するような鋭い質問をしたり、答えたりするスキルのことです。
どのような質問がくるか、何を答えるべきかは、英会話学校で教えるような決まったパターンがあるわけではありません。そのため、どんな状況でも対応ができるような基本的思考力を身につけることが大切です。
これを、別な言葉でいると、ロジックを身につけるということです。
ロジックとは平たく言えば論理或いは論理的思考のことですが、様々な解釈がありますので、今回は私が考える論理的思考についてお話ししたいと思います。
欧米人と会話すると、よく「Why?」と聞かれることと思います。何故なら彼らの思考の仕方として、何かを主張するには理由や事実の裏付けが必要なのです。
非常に単純化してしまえば、「Why?」に答えることが論理的思考、ということです。欧米人は子供の時から母親や父親と会話しても「Why?」と聞かれ答えなければなりませんし、学校でも授業中に「Why?」と聞かれ答える練習をしているといっても過言ではありません。
ここに日本人の心理的問題があるのです。
日本人は「ここは触れてはいけないな」と相手をおもんばかることが文化的に大切とされているので、「Why?」を避ける習慣で育っております。
そのため、欧米人に「Why?」と聞かれると、しどろもどろになってしまうのです。
逆な言い方をすると、英語でビジネスがうまくできないのは、日本人は心理的・文化的に「Why?」に答える練習を積んでいないから、うまく答えられないのです。
つまり、英語がうまい下手ではなく、何をどう答えたらよいのか訓練されていないから、欧米人と対話ができないのです。
ここで大変興味深いことが理解できます。
日本人でも、母国語である日本語で論理的思考を身につければ何をどう答えたらよいかがわかるようになるので、英語で対話ができるようになるということです。
この「Why?」に答える練習を身につけるのにとても有効なのがディベートです。
ディベートとは何でしょうか?
ディベートには概ね2つの意味があります。
ひとつは「異なる意見を表明する議論やディスカッション」であり、もうひとつは、「2者あるいはそれ以上の発言者が対立する見解を発言し、しばしば、その問題に対して投票が行われる」ことです。
そして、ディベートの基礎となる考え方が、推論です。
すいろん 【推論】
ある事実をもとにして、他の事をおしはかること。推理や推定を重ねて結論を導くこと。「調査結果から事故原因を―する」
(三省堂提供「大辞林 第二版」より)
即ち、推論することで、自分が経験していないことでも理解できるようになるのです。
定義だけでは解りづらいので、実例で考えて見ましょう。
推論でよく使われる手法に、演繹法と呼ばれる三段論法があります。
三段論法は3つのステップからなります。
1) A—>B
2) B—>C
従って
3) A—>C
数学でならったのを覚えている方も多いでしょう。実は三段論法は論証として極めて有効な推論法なのです。
この三段論法を使って「クリントン元米国大統領は死ぬ」ことを推論してみましょう。
(A—>B)クリントン元米国大統領は人間である。
(B—>C)人間は死ぬ。
従って
(A— >C)クリントン元米国大統領は死ぬ。
「クリントン元米国大統領は人間である」(A—>B)ことを受け入れれば、「人間は死ぬ」ことから、「クリントン元米国大統領は死ぬ」という命題が証明されました。
何故クリントン元米国大統領は死ぬのですかという「Why?」に対しては、「人間はいつか死ぬ」からと答えればよいですね。
これが、論理的思考の基本になります。
さて、ディベートでは、ある問題やテーマに対して、必ず肯定・否定の双方から問題を論じます。
私としては、自分ひとりで肯定・否定の立場を論ずることを、「ひとりディベート」として皆様にお勧めしたいのです。
一般的に、誰でも自分の支持する立場が好きです。その為、自然と、誰もが自分の支持する立場に重きを置いて、問題解決を図ろうとします。
しかしながら、よく陥る罠がここにはあります。
それは、あまりにも自分の立場を擁護するために、ある意味「偏見」が強くなってしまい、バランスの欠けた議論に陥ることなのです。
こうした議論は、残念ながら説得性に欠ける可能性がとても高くなります。
また、一方的な考え方で構成された論理は、飛躍が多く、容易に否定されたり、あるいは、後で重要な問題が発覚する危険性もあります。
こうした危険性は、誰でもが問題の両面を同時に見ることで、自ら排除することができるのです。
つまり、自分の支持する議論に対して、自ら疑問を呈し、時にはその論理を修正することで、より説得性のある論理が構成できるようになるのです。
ひとりディベートのテーマは、身近な話題でよいのです。
例えば、今国会で論議されている、「日本にカジノを導入すべきか否か」、「消費税を来年10月に10%へ増やすべきか否か」、「受動喫煙防止条例を決議すべきか否か」等々、皆様が興味を持たれたテーマを取り上げればよいのです。
手順としては、あるテーマ、例えば「日本にカジノを導入すべきか否か」であれば、賛成側と反対側の両方の論理を検証することになります。
賛成側では、何故カジノを日本に導入すべきか、そのメリットは何かについて、新聞や書籍、或いはインターネットで調査をしてしっかりとロジックを組み立てます。
反対側では、カジノ導入が必要ではない理由やカジノが導入されるときにおこる弊害について、やはり新聞や書籍、或いはインターネットで調査をしてしっかりとロジックを組み立てます。
そして、両方のロジックを比較して、賛成側として弱い点を補強し、反対側も弱い点を補強して、両者ともより説得力のある論理を作り上げていくのです。
「ディベート教育株式会社」のウェブサイトには、「ひとりディベート」と「最新事情研究」で十数件のテーマを挙げて、賛成と反対の両方の議論を掲載しておりますので、参考にしていただければ幸いです。
今回は、英語でビジネスをするために必要な「対話」ができるように、論理的思考力をどのようにして身につけたらよいかを取り上げてみました。
前回取り上げた、「英語で学ぶ」と今回の「対話」を一人で身につけていくのには、続けていく気力が必要ですし、多大な時間がかかるかもしれません。
そこで、次回には、「英語で学ぶ」と「対話」を短時間で効率的に身につける手法について論じてみたいと思います。
英語でビジネスができるようになる「ハイブリッド・ディベート研修」
今直ぐに、英語でビジネスをしなければならないという緊急のニーズを満たすために、提案するのが弊社開発の「ハイブリッド・ディベート研修」です。
英語でビジネスができるようになるためには、英語の文法がよくわかっている、或いは発音がネイティブに近いとかは、英語をする上では大して重要ではありません。
英語でビジネスをするための知識と対話を身につけることが必要なのです。
ビジネスをするための知識を身につけるには、「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」に変わる必要があります。
次には、英語での「対話」を身につける必要があります。即ち、ロジックを身につけるということです。ロジックとは平たく言えば論理或いは論理的思考のことです。
欧米人と会話すると、よく「Why?」と聞かれることと思います。何故なら彼らの思考の仕方として、何かを主張するには理由や事実の裏付けが必要なのです。
ここに日本人の心理的問題があるのです。
日本人は「ここは触れてはいけないな」と相手をおもんばかることが文化的に大切とされているので、「Why?」を避ける習慣で育っております。
つまり、英語がうまい下手ではなく、何をどう答えたらよいのか訓練されていないから、欧米人と対話ができないのです。
さて、知識とロジックを同時に身につけるのに最適なのが、ハイブリッド・ディベート研修なのです。
研修では、あるケースについて大量の資料を準備します。それも同じ資料を日本語と英語で準備しているのです。
初日はすべて日本語で研修を実施します。
チームに分かれ、ある提案を実施することに対して、資料を読み込み、賛成と反対の両方のロジックを作り上げることです。
日本語で行うことで、英語力に関係なく、参加者はロジックに集中できるのが大きなメリットになります。
参加者は、ロジックを組み立てた後、賛成側と反対側との2チームで、試合(課題に対して問題の定義とその解決策を提案し、それに対してQ&Aをして、その問題点を指摘する)を行います。
このプロセスを通じて、チームワークが体得できるだけでなく、個人としてもプレゼンテーション、傾聴力、質問力などが体得できるのです。
翌日に、同じ内容を英語で実施するのです。
体験していただければわかっていただけるのですが、日本語でロジックができていると、英語に直すのは、たやすいのです。
即ち、たった2日間でいつの間にか、英語でビジネスを疑似体験してしまう訳です。
このスピードが「ハイブリッド・ディベート研修」のもうひとつの特徴です。
詳しくは、次のリンクからご覧下さい。