「立論構成の最適化」でニーズに合った提案
提案は相手に納得され、受け入れられなければ意味がありません。
効果的な提案行うためには、事前に相手の課題を把握し、そのニーズに合った立論構成を考えることが重要です。
立論構成の最適化|動画解説
立論の基本構成
提案立論の基本構成は下記の通りです。
- 目標設定 【ゴール】
- 現状変革の必要性 【ニーズ】
・具体的問題
・その原因=現状の制度や仕組み - 解決策の提示 【プラン】
・実現性
・実効性 - 解決策による利益 【メリット】
・問題の解消
・付加的利益
お母さんの立論構成
「ロジック3点セット」でのお母さんの主張を、提案立論構成に当てはめてみましょう。
- 目標設定【ゴール】 >「健康で楽しい人生を過ごして欲しい」
- 現状変革の必要性【ニーズ】 >「あなたは良い大人になれない」
・具体的問題 >「成績が悪く、良い大学に入れそうにない」
・その原因=現状の制度や仕組み >「サッカーばかりやっていて勉強しない」 - 解決策の提示【プラン】 >「サッカー部をやめなさい!」
・実現性 >「レギュラーではないので誰も困らない」
・実効性 >「勉強する時間ができる」 - 解決策による利益【メリット】 >「あなたは良い大人になれる」
・問題の解消 >「成績が上がり、良い大学に入れる」
・付加的利益 >「けがのリスクが少なくなる」
調査に基づき想定反論を推察する
提案に際し、どのような反論があるかを検証しておくことは、提案を行う上でのもっとも重要なステップです。
誰もが提案企画する時には詳細な調査を行い、その提案の妥当性やメリットを深掘りしますが、反対意見やデメリットについては耳を塞ぎがちです。
ディベートでは、反論するための資料の探索にも同等以上の時間を費やし調査を行います。
下記のような調査を行うことで、反論を克服するための議論を展開でき、提案企画の説得力を高めることができます。
【定量調査】 対象者に対するアンケートやインタビュー
【定性調査】 本音や本人も意識していなかった深い認識を引き出すためのグループインタビューやデプスインタビュー
【観察調査】 対象者を直接現場で観察し、事実データを集める
【覆面調査】 一般客を装って、店頭での接客態度や対応を調べる
【統計調査】 各種統計データやそれに基づく分析
【専門調査】 その分野の専門家から情報や意見を聞く
子供の反論(調査に基づく仮説)
お母さんも食事の時にさりげなく息子から部活の状況などを聞き込み、息子のサッカー熱がかなり真剣であることに気付かされました。
息子の話からその反論を推察してみると…
- 目標設定【ゴール】 >「健康で楽しい人生を過ごしたい」
- 現状変革の必要性【ニーズ】 >「それでも僕は良い大人になれる」
・具体的問題 >「良い大学に入る≠良い大人になれる」
・その原因=現状の制度や仕組み >「勉強できなくても良い大人になれる」 - 解決策の提示【プラン】 >「サッカー部を続けたい!」
・実現性 >「レギュラー候補で期待されている」
・実効性 >「時間ができても勉強したくない」 - 解決策による不利益【デメリット】 >「むしろ良い大人になれない」
・問題の不解消 >「サッカーをやめても良い大学に入れない」
・付加的不利益 >「やる気がなくなり、さらに成績が下がる」
お母さんの修正立論
そして息子の毎日の生活を観察していたもうひとつ気付いた点がありました。
サッカーの練習で疲れて勉強ができないと言いながら、スマホのゲームには熱中しているようなのです。
そこでお母さんが考えた息子への提案は…
- 目標設定【ゴール】 >「健康で楽しい人生を過ごして欲しい」
- 現状変革の必要性【ニーズ】 >「あなたは良い大人になれない」
・具体的問題 >「成績が悪く、良い大学に入れそうにない」
・その原因=現状の制度や仕組み >「サッカーとゲームばかりやっていて勉強しない」 - 解決策の提示【プラン】 >「勉強する時間も作りなさい!」
・実現性 >「ゲームの時間は減らせる」
・実効性 >「勉強する時間ができる」 - 解決策による利益【メリット】 >「あなたはもっと良い大人になれる」
・問題の解消 >「成績が上がり、良い大学に入れる」
・付加的利益 >「実は良い大学はサッカーも強い」
2つの立論アプローチ
これでお母さんの提案立論の基本構成が決まりました。
重要なのは、自分の都合の良い立論構成を一方的に作るのではなく、相手のニーズに合わせて課題を克服できる提案を準備するということです。
そのように準備された立論構成には、大きく2つの重要な要素が含まれています。
- 現状変革の必要性【ニーズ】で定義される現状の問題、解決すべき課題
- 解決策による利益【メリット】で定義されるプラン導入による恩恵、具体的利益
提案における【ニーズ】と【メリット】は表裏一体の関係にあります。
ニーズが解消、あるいは満たされた状態がメリットであり、そのどちらを強調するかにより、立論のアプローチが異なります。
- 【ニーズ】を強調する場合 > 問題解決型アプローチ
- 【メリット】を強調する場合 > 利益追求型アプローチ
問題解決型アプローチ
現在重大な問題がある場合、或いは将来大きなリスクがある場合に適用するアプローチです。
問題解決型の構成要素は下記の通りです。
- 重大な問題やリスク
- 内因性(現状では問題解決はできない)
- 解決策(プラン)
- 解決策導入によるデメリットの克服
【問題解決型】お母さんの修正立論
お母さんの修正立論を問題解決型アプローチで修正してみましょう。
- 現状変革の必要性【ニーズ】 >「あなたは良い大人になれない!」
・具体的問題1 >「成績が悪く、良い大学に入れない」
・具体的問題2 >「だから良い会社に入れない」
・具体的問題3 >「だから健康で楽しい生活を楽しめない」 - その原因=現状の制度や仕組み >「サッカーとゲームばかりやっていて勉強しない」
- 解決策の提示【プラン】 >「勉強する時間も作りなさい!」
・実現性 >「ゲームの時間は減らせる」
・実効性 >「勉強する時間ができる」
利益追求型アプローチ
現状には重大な問題は存在しないが、より有利な方策がある場合に適用するアプローチです。
利益追求型の構成要素は下記の通りです。
- 得られる具体的利益
- 利益達成の過程
- 将来得られる利益の重要性
- 解決策(プラン)
【利益追求型】お母さんの修正立論
お母さんの修正立論を利益追求型アプローチで修正してみましょう。
- 解決策による利益【メリット】 >「あなたはもっと良い大人になれる!」
- 具体的問題の解消 >「成績が上がり、良い大学に入れる」
・付加的利益1 >「実はよい大学はサッカーも強い」
・付加的利益2 >「勉強できるサッカー選手はもてる」
・付加的利益3 >「勉強するとサッカーも上達する」 - 解決策の提示【プラン】 >「勉強する時間を作ろう!」
・実現性 >「ゲームの時間は減らせる」
・実効性 >「勉強する時間ができる」
この他、案件によっては【目標達成型】【プラン追求型】などのアプローチの方が良い場合もあります。
立論構成の最適化が提案力を高める
提案は相手に受け入れられ、実行されなければ意味がありません。
そのためには、事前に相手のニーズや課題を知り、どのような解決策が最適かを確認し、相手の思考回路に合わせたアプローチを行うことが重要です。
調査を進めていくと、相手のニーズが必ずしも本当の課題ではないことがわかることがあります。
相手も気付いていない本当の課題と原因が分かれば、相手の期待以上の提案を行うことができます。
ディベートは、常に期待以上の提案を企画・実行できる力を育成するための役に立つツールなのです。
ディベート教育株式会社では、ディベートで提案力を強化できる企業研修を行っております。
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