核兵器禁止条約不参加に賛成ですか?反対ですか?
唯一の戦争被爆国である日本政府は、国連総会で核禁止条約交渉入り決議が賛成113票で採択される中、反対票を投じました。
核禁止条約交渉入り決議、国連総会で採択 日本は反対
出典 日本経済新聞 2016/12/24
【ニューヨーク=高橋里奈】国連総会は23日、核兵器の使用を禁じる核兵器禁止条約の交渉入り決議を賛成多数で採択した。唯一の戦争被爆国でありながら、米国の「核の傘」の下にある日本は反対した。2017年3月のニューヨークでの交渉開始が正式に決まった。もっとも米国やロシアなど核兵器保有国は反対しており、実効性には疑問が残っている。
決議は賛成113票で採択された。棄権は13票、反対は35票だった。核兵器保有国である中国は棄権した。
決議は10月27日に開いた軍縮を話し合う国連総会の第1委員会で123票を得て事前に採択されており、今回、正式な総会決議となった。日本は第1委員会での採決でも反対した。
皆様は、核兵器禁止条約不参加に賛成ですか?反対ですか?
始めに、核兵器禁止条約とは何かを調べてみましょう。
<核兵器禁止条約>
出典 共同通信
核兵器の開発や実験、使用などを全面禁止する条約。核兵器使用は国際人道法に「一般的に反する」とした1996年の国際司法裁判所の勧告的意見を踏まえている。オーストリアやメキシコなどが主導して、交渉開始に向けた決議案を国連総会に提出。米国などの核保有国は強く反発したが、昨年(注:2016年)12月の国連総会で113カ国が賛成し採択された。日本や米英仏ロなど35カ国は反対、中国など13カ国は棄権した。交渉は今年(注:2017年)3月27~31日と6月15日~7月7日にニューヨークで実施。
核兵器禁止条約は、核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用、威嚇としての使用を禁止することを目指しております。
出典 ウィキペディア
1996年4月、NWCは「モデル核兵器禁止条約」(Model Nuclear Weapons Covention, mNWC)という名で、核兵器の廃絶を求める各国の法律家、科学者、軍縮の専門家、医師及び活動家らが参加する3つの国際NGOから構成されるコンソーシアムによって起草された。mNWCは、核軍縮の可能性を「法的、技術的、政治的要件に沿って検証する」こと目的としていた。(中略)
2007年4月、mNWCはNGOコンソーシアムを招集した核政策に関する法律家委員会(Lawyers’ Committee on Nuclear Policy, LCNP)を通じ、コスタリカ及びマレーシア政府により核拡散防止条約(NPT)運用検討会議の第1回準備委員会(Preparatory Committee for the 2010 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)で改訂版の「NWC」(UN Doc. A/62/650)として提出された。NWCは、以下の項目に渡って核の取扱いを禁止する。
開発(development)
実験(testing)
製造(production)
備蓄(stockpiling)
移譲(transfer)
使用(use)
威嚇としての使用(threat of use)
「核兵器禁止条約」の交渉会議が3月27日、米ニューヨークの国連本部で始まりましたが、日本政府代表で演説した高見沢将林軍縮大使は、交渉への不参加を宣言したのです。
一方、米国のヘイリー国連大使はこの日、英仏や韓国など約20カ国の代表とともに議場外で交渉を強く非難する会見を開いたのです。
「核兵器禁止条約」交渉、日本は不参加表明
出典 朝日デジタル 2017年3月28日
核兵器を法的に禁ずる「核兵器禁止条約」の交渉会議が27日、米ニューヨークの国連本部で始まった。日本政府代表で演説した高見沢将林軍縮大使は、「核兵器国の理解や関与が得られないことは明らかだ。残念ながら、交渉会議に建設的かつ誠実に参加することは困難」と述べ、交渉への不参加を宣言した。
高見沢氏は、会議の序盤の各国の代表者による意見表明の場で、核軍縮と安全保障は切り離せないとの立場を表明。核保有国の参加が見込めないことから「実際に核保有国の核兵器が一つも減らなくては意味がない」「禁止条約がつくられたとしても、北朝鮮の脅威といった現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思えない」などと批判を展開した。
核保有国や「核の傘」の下にある国々のほとんどが会議をボイコットするなか、日本は急きょ出席して反対表明をした。一方、米国のヘイリー国連大使はこの日、英仏や韓国など約20カ国の代表とともに議場外で交渉を強く非難する会見を開いた。
「核兵器禁止条約の国連会議」はどうして生まれたのでしょうか?
核兵器禁止条約の国連会議に参加した日本共産党志位委員長によれば、「核兵器禁止条約の国連会議」を生み出しだしたのには、「二つの要素が重なった」、即ち、「核兵器の非人道性に対する理解が、国際社会の共通認識になった」ことと「国連を含む多国間会議の場における核軍縮議論のこう着状態への不満の高まり」があったことと述べております。
「核兵器禁止条約の国連会議」に参加して 志位委員長の報告
出典 日本共産党 2017年4月9日
この「国連会議」を生み出したものは何だったか。「国連会議」のエレン・ホワイト議長は、私たちとの会談で、「二つの要素が重なった」と説明しました。
一つは、「核兵器の非人道性に対する理解が、国際社会の共通認識になった」ことです。広島・長崎の被爆者の一貫した告発、核兵器の非人道性を追及するノルウェー、メキシコ、オーストリアで開かれた3回の国際会議などを通じて、「意図的であれ偶発的であれ核爆発が起これば、被害は国境を越えて広がり」、「どの国、どの国際機関も救援の術(すべ)を持たない」、人道的災厄をもたらすことが共通認識となりました。
いま一つは、「国連を含む多国間会議の場における核軍縮議論のこう着状態への不満の高まり」であります。国際社会は、2000年のNPT(核不拡散条約)再検討会議で、「自国核兵器の完全廃絶を達成するというすべての核保有国の明確な約束」を確認しています。2010年のNPT再検討会議では、「核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みを行う」ことを合意しています。これらは核保有大国も含めた全会一致の合意でした。ところが、その後、核保有大国は、自ら行ったこれらの誓約に背いて、核兵器廃絶を永久に先送りし、自国の核軍備を近代化・強化する態度をとっています。
賛成側の意見
賛成側の基本的な立場としては、核廃絶のような理想を掲げる時、その実施策が現実的に機能するのかどうかが重要である、という点にあります。
即ち、理想は掲げても解決に程遠いならば、少しでも理想に近づける現実的な施策を取っていくべきだと考えるのです。
実効性が重要という観点は、戦争を禁止する国際条約が機能していないことからも理解できます。
実際、戦争を禁止する国際条約は既にあります。まずは不戦条約、そして国連憲章です。国連憲章は国連に加盟している全ての国が守ることになっています。そこでは「武力の行使」が禁止されていまが、国連憲章の制定から60年以上たっても戦争はなくなっておりません。
戦争や武力紛争を全廃させることはできないなら、現実認識に立って、戦乱の中でもできる限り人命が失われるのを防ぎたい。人間の尊厳が踏みにじられることを防ぎたい。
こうした考えに基づいているのが、国際人道法の精神なのです。
人類はついに戦争を禁止した(60年前に)人道的な戦争
出典 リアリズムと防衛ブログ 2009-12-25
ところが、戦争を禁止する国際条約は既にあります。まずは不戦条約、そして国連憲章です。国連憲章は国連に加盟している全ての国が守ることになっています。そこでは「武力の行使」が禁止されています。自らを守る(自衛)の場合を除けば、戦争であれ、他の名目であれ、すべての武力行使はすでに禁止されているのです。
ですがご存知のとおり、国連憲章の制定から60年以上たっても、戦争はなくなっていません。将来においても、当分のあいだ、戦争を完全に無くすことは難しそうです。
現実を踏まえて理想を目指すということ
国際人道法のアプローチは、このような世界の現実を踏まえたものです。
戦争や武力紛争を全廃させることはいまだできていない。未来にわたってもそれは不可能かもしれない。その冷徹な現実認識に立って、戦乱の中でもできる限り人命が失われるのを防ぎたい。人間の尊厳が踏みにじられることを防ぎたい。それが国際人道法の精神である。
だったら、戦争を無くすよう努力するだけでは不十分です。それと同時に、不運にして戦争が起こってしまった場合のことも考えておかねばならないでしょう。
理想として考えれば、戦いのルールを作ることに努力するより、戦いそのものをなくすことに努力すべきだと言われるだろう。しかし残念ながら人類の歴史は、戦いに終わりがないことを示している。理想は理想として、現実に今ある戦いの犠牲者を救う努力が必要であろう。この現実主義こそ、国際人道法の優れた特色である。
さて、本題に戻りましょう。
日本は国連で23年連続して核廃絶決議案を提出しております。
この日本が何故今回の核兵器禁止条約に反対したのでしょうか?
元防衛大臣で防衛大臣政策参与の森本敏氏は日本が反対した理由について、今回の核兵器禁止条約が、これまでに国連でなされてきた一連の核廃絶決議とは異なり、核兵器の法的禁止を目指しているからなのです。
今回の非核兵器禁止条約は、署名するすべての国に核兵器の禁止、少なくとも保有の禁止が義務付けられるため、この条約が成立すると、核保有国は参加せず、非保有国だけが加入する条約になってしまうのです。
即ち、核兵器禁止条約は核廃絶という理想に対して現実的な解決策ではなく、5大国の核兵器保有を認めることを前提とした核拡散防止条約(NPT)こそが理想に少しでも近づく現実策なのです。
核兵器禁止条約、日本はなぜ反対したのか
出典 Yahoo! Japan ニュース 2016/12/5
国際社会はこれまで、1968年に作成され、1970年に発効した核拡散防止条約(NPT)の下で核軍縮を進めてきました。(中略)
日本はNPTの優等生です。多額の経費を負担し、原子力の平和利用についても非常に厳しい査察を受け入れてきました。また、1994年から毎年、国連総会へ「核兵器の究極的廃絶に向けた核軍縮」決議案を提出していますが、あくまでも保有国による核軍縮と非保有国への不拡散を目指すNPT体制を前提としています。
ところが、2012年頃から、非保有国の一部から「核兵器そのものの非人道性」という議論が出てきました。同年のNPT再検討会議・第1回準備委員会でスイスなど16カ国が「核兵器の使用は国際人道法に違反する」という内容の共同声明を発表、「核兵器の非合法化」が議論されるようになります。背景には、米ロ関係の悪化による保有国間の核軍縮の停滞があり、非保有国の不満が高まっていったのです。2015年に開かれたNPT再検討会議では、中東問題を巡る非保有国と保有国の激しい対立の中で、残念ながら一切の合意ができませんでした。
対立を考えるとき、重要なことは、NPTは5大国の核兵器保有を認めることを前提としたものであり、5大国には核兵器の保有が国際法上認められていることです。一方、非保有国が進めようとしている核兵器禁止条約は、交渉がこれからなのでまだわかりませんが、法的拘束力を持つものになることが予想されます。そうなった場合、この条約に署名するすべての国に核兵器の禁止、少なくとも保有の禁止が義務付けられるでしょう。ここに深刻な亀裂が生じます。この条約が成立すると、非保有国と保有国の対立を決定的なものにしてしまうのです。
核なき世界は、保有国と非保有国の現実的な協力のプロセスを経て実現されるべきです。核兵器禁止条約の成立を許せば、亀裂が入るだけで、そのプロセスが実現できなくなります。
米国連大使も、「自分の家族にとって、核兵器のない世界を何よりも強く求めたい。けれども現実的でいなくてはならない。」と指摘しております。
米国連大使、核兵器禁止「現実的でない」
出典 BBC News ワールドニュースTV 2017年03月28日
新条約について話し合う会議に、核保有国の米英仏などは欠席した。
ニッキー・ヘイリー米国連大使は、国際社会には信用できない「悪いアクター(当事者)」がいるため、国の安全保障上、核兵器は必要だと記者団に述べた。
「自分の家族にとって、核兵器のない世界を何よりも強く求めたい。けれども現実的でいなくてはならない。北朝鮮が核兵器禁止に賛成するなど、信じている人はいますか?」と大使は述べ、さらに「今のこの時代状況で、悪いアクターに(核兵器を)持たせて、平和と安全を維持しようとしている良い我々に持たせないなど、それで国民を守れるとは正直言い難い」と懸念を示した。
一方、日本軍縮学会会長である、淺田正彦・京都大学大学院法学研究科教授は、核兵器使用の禁止はアメリカの核抑止力に依拠する我が国の安全保障に直結する重大な問題であると指摘しております。
また、隣国が核兵器を持たないことを保証するNPTの存在は、その安全保障にとって不可欠であり、このNPT体制が崩れると、世界の平和と安全は根底から揺さぶられると懸念を示しております。
核兵器禁止条約はNPT体制の弱体化につながる
淺田正彦・京都大学大学院法学研究科教授
出典 Yahoo! Japan ニュース 2016/12/5
今回の決議は「核兵器を禁止する法的拘束力を持つ条約の交渉会議を開催する」という決議です。条約交渉となれば、「核兵器を禁止する」と言ったときに「何を」禁止するのかが問題となりますが、核兵器の製造や保有はすでにNPTで禁止されていますので、使用の禁止が中心課題の一つとなるでしょう。しかし、それはアメリカの核抑止力に依拠する我が国の安全保障に直結する重大な問題です。
さらに、そもそも核保有国はこの条約交渉に参加しないでしょう。5つの保有国はすべて作業部会をボイコットしています。そのような中で核兵器禁止条約を作成しても、保有国と非保有国との間の対立が深まるだけです。それはすでに弱体化を指摘されているNPT体制への大きな打撃となります。
このような結果を生む核兵器禁止条約よりもむしろ、NPT体制の維持・強化こそが重要です。(中略)
NPTは、5つの核保有国以外は核兵器を持たないという差別的な条約ですが、ほとんどの国にとって、隣国が核兵器を持たないことを保証するNPTの存在は、その安全保障にとって不可欠の要素です。NPT体制が崩れると、世界の平和と安全は根底から揺さぶられます。核保有国と非保有国との間の対立を深め、対話の断絶を招きかねない核兵器禁止条約には、慎重な対応が求められるのではないでしょうか。
なお、日本政府が核兵器禁止条約に反対することが、従来の我が国核兵器廃絶に対する姿勢には何ら変わるところはないのです。
実際、平成28年10月28日(現地時間27日)には我が国が国連総会第一委員会に提出した核兵器廃絶決議案,「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」が米国を含む約110か国が共同提案国となり,全体で167か国の支持という昨年を上回る共同提案国,支持を得て採択されております。
我が国核兵器廃絶決議案の国連総会第一委員会での採択について(外務大臣談話)
出典 外務省 平成28年10月28日
1 本28日午前6時35分頃(現地時間27日午後5時35分頃)ニューヨークにおいて,我が国が国連総会第一委員会に提出した核兵器廃絶決議案,「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」が,米国を含む約110か国が共同提案国となり,全体で167か国の支持という昨年を上回る共同提案国,支持を得て採択された(昨年は,106か国が共同提案国,全体で156か国が支持。)ことを大変喜ばしく思います。今後,本決議案は,12月初旬に国連総会本会議において採決にかけられる予定です。
2 現在,国際社会は,北朝鮮の度重なる核実験や弾道ミサイル発射に見られるような,安全保障や軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦に直面しています。こうした中,我が国は,包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進等に向けた取組を積み重ねるとともに,本年4月には核兵器国と非核兵器国が参加してG7「広島外相宣言」を発出し,5月のオバマ米国大統領の広島訪問の際には日米で核兵器のない世界に向けた努力を誓い合いました。この度提出した決議案は,このような取組も踏まえつつ,実践的かつ具体的な措置を通じて,核兵器国及び非核兵器国の双方が「新たな決意の下での共同行動」を行うよう求め,「核兵器のない世界」の実現に向けた現実的な道筋を示すものです。(中略)
4 我が国としては,このような取組等を通じて,「核兵器のない世界」の実現に向け,引き続き国際社会の取組を主導していく考えです。
反対側の意見
核兵器禁止条約が必要なのは、核兵器が非人道であり、禁止すべきだからです。
生物兵器、化学兵器、地雷、クラスター爆弾、これら非人道兵器は、国際的に使用を禁止する条約がありますが、核兵器を禁止する条約は、未だ存在しないのです。
規制が議論されている兵器
出典 ウィキペディア
国際人道法上の観点より、無用に人体に苦痛を与える兵器は使用が禁止されており、1868年のサンクトペテルブルグ宣言をはじめとして、ハーグ陸戦条約やジュネーヴ諸条約の追加議定書 (1977年)においても、兵器の使用が無制限ではないことが確認されている。特にジュネーヴ諸条約第一追加議定書第35条において、総括的な規制がなされており、無用の苦痛を与える兵器のみならず、自然環境を過度に破壊する兵器についても禁止が謳われている。
BC兵器
B (biological) – 生物兵器
C (chemical) – 化学兵器
通常兵器
400g未満の爆発性弾丸
ダムダム弾
目潰し用レーザー兵器 (BLW: Blinding Laser Weapon)
対人地雷
クラスター爆弾
さて、上記の通り、非人道兵器は国際的に使用を禁止されておりますが、一体人道的兵器と非人道的兵器はどのように区別されるのでしょうか?
それは、国際人道法で定められているのです。
即ち、「戦争時に、武器を所持していない民間人を殺してはいけない」「不必要な苦痛を与えてはいけない」、これらに反する行為を非人道的だとして禁じているのです。
第26回:「非人道兵器とSRI」 2010年6月8日
目加田説子氏中央大学総合政策学部教授、地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)理事
出典 大和証券グループ本社 対話で考えるCSR
河口:
でも、通常のミサイルとか大砲とか他の兵器も人を殺すのは同じという気もするのですが。そのなかで、クラスター爆弾や地雷が特別「非人道的」と呼ばれるのはどうしてですか。
目加田氏:
確かに、兵器はすべて非人道的だともいえますが、防衛上必要な兵器もあります。なにをもって非人道と定義するのか。それは、国際人道法(*2)で定められています。「戦争時に、武器を所持していない民間人を殺してはいけない」「不必要な苦痛を与えてはいけない」、これらに反する行為を非人道的だとして禁じています。
国際人道法:武力紛争(戦争)において、人道的な取り扱いを定めた国際法のこと。「国際人道法」という名称の条約は存在せず、ジュネーブ諸条約を中心としたさまざまな条約と慣習法の総称が「国際人道法」と呼ばれる。
河口:
国際関係論の素人からすると、兵器に人道的と非人道的があるというのは、すぐには理解しづらいところがありますが、非人道兵器は、その中でも人道的にひどすぎるということですか、
目加田氏:
そうです。広範囲に飛び散るクラスター爆弾は攻撃の的を絞ることが難しいために、民間施設や民間人が犠牲になってしまいます。その無差別性が、非人道と呼ばれる理由のひとつです。
また、「不必要な苦痛を与えてはいけない」という定めにも抵触しています。損傷の激しさや、紛争が終結した後にも不発弾が長期に渡って人びとの生命を脅かし続けることが問題視されてきたのです。
河口:
人間ってこれほど残酷な兵器をよくも思いつくものですね。そして最後には、罪のない人々や子どもたちが一番被害にあう。
目加田氏:
大人が命を落とさないまでも、子どもはほとんど助かりません。交通網や通信手段が十分に整備されていない途上国では、病院に行くまでに時間がかかりますから、その間に大量出血で命を落としてしまうのです。
河口:
そういう、話をきいてると胸がつまりそうです。
河口:
日本は平和が長く続いたため、戦争や兵器の話は自分たちには直接関係がないと思ってしまいがちです。
目加田氏:
そうですね。けれども、日本でも自衛隊はクラスター爆弾を保有しています。また、在日米軍はクラスター爆弾の実弾を用いた演習を行っています。つい最近、2010年5月にも実施したばかりです。
河口:
米軍が。どこに投下したのですか?
目加田氏:
沖縄近海です。鳥島射爆撃場(*3)等の演習で使用されたことが確認されています。
(*3)鳥島射爆撃場:島全体が米軍の演習場となっており、実弾による射爆撃訓練が行なわれている。
河口:
その島には不発弾がたくさん残ってるだろうから、だれももう上陸できなくなっちゃいますね。
目加田氏:
もちろん立ち入り禁止にしています。しかし、不発弾が漁業中の船舶と接触する危険はあります。
御存知の通り、シリアが最近化学兵器を使用した疑いがあり、この行為は国際的に非難されております。
米国は、対抗措置として巡航ミサイル59発をシリアの空軍基地に発射したことを覚えているかと思います。
この非難の理由は、化学兵器使用は非人道的で許されないからです。
公明新聞:2017年4月8日(土)付
シリアでまたしても非人道的な化学兵器が使われた疑いが濃厚となっており、看過できない。
同国北西部のイドリブ県は、アサド政権と6年に及ぶ内戦を繰り広げている反体制派が支配する地域。ここで4日、空爆があり、少なくとも80人以上が死亡し、350人以上が負傷したという。
現地を撮影したとされる映像には、目を見開いたまま動かなくなった子どもや、激しくけいれんしながら口から泡を吹く人の様子が映し出されている。見るに堪えない、あまりにも恐ろしい光景だ。化学兵器特有の症状であると見られ、断じて許されない。
米国は、この空爆をアサド政権軍によるものであると断定し、対抗措置として巡航ミサイル59発をシリアの空軍基地に発射した。シリア国営通信によると、シャイラート空軍基地に損害が出たという。同空軍基地は、化学兵器の使用が疑われる攻撃に関わった戦闘機が離陸した基地であると米メディアは伝えている。(中略)
米国とアサド政権側の主張は真っ向から対立しているが、忘れてはならないのは、シリアは今や、化学兵器禁止条約の加盟国であるということである。(中略)
化学兵器禁止条約は、化学物質の兵器への転用防止も加盟国に義務付けている。その義務をシリアは果たしていないことは明白だ。アサド政権と反体制派は、現在進められている和平プロセスで、同条約の順守体制の確立についても話し合うべきである。
80人以上が死亡し、350人以上が負傷したと言われる化学兵器使用でさえ、国際的に避難されるのです。
数十万人、いや数百万人の命を瞬間に奪い去る核兵器が人道的に禁止されるべきなのは、当然なのです。
そもそも、今回の核兵器禁止条約は、いつまでも「核なき世界」を実現できないNPT体制にしびれを切らした非核百数十カ国が、アメリカやロシア、中国、フランス、イギリスなど既存の核保有国に対して取った、大胆な「抗議行動」だと指摘するのが、春原剛・上智大学グローバル教育センター客員教授です。
核兵器禁止条約、日本はなぜ反対したのか
出典 Yahoo! Japan ニュース 2016/12/5
非保有国の大胆な「抗議行動」だ
春原剛・上智大学グローバル教育センター客員教授
NPTは1968年に作成され、その2年後に発効しました。その前提となっていたのは、核保有国も含め、非人道的な核兵器を廃絶することは全世界・全人類のコンセンサスという「虚構」でした。だから、「非保有国は核を持たない(不拡散)」「保有5大国は核兵器を削減する(核軍縮)」という二つの文言が NPTの「金科玉条」になったのです。
ところが、「前者ばかりが強調される一方で、後者がまったく進まないではないか」という不満が非保有国の間で急速に高まってきました。今回の核兵器禁止条約は、いつまでも「核なき世界」を実現できないNPT体制にしびれを切らした非核百数十カ国が、アメリカやロシア、中国、フランス、イギリスなど既存の核保有国に対して取った、大胆な「抗議行動」なのです。
広島市の陸軍施設で被爆したサーロー節子さんは、日本の不参加を「裏切り」と、厳しく批判するのも納得できるのではないでしょうか。
被爆者、日本の不参加批判 核禁止条約で「裏切り」
出典 共同通信 2017/3/29
【ニューヨーク共同】核兵器の非合法化と廃絶を目指す「核兵器禁止条約」制定に向け、ニューヨークの国連本部で開催中の会議で28日、カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(85)が演説した。被爆者は日本政府による交渉への不参加表明で「自分の国に裏切られ、見捨てられた」と感じたと厳しく批判した。
声を震わせて被爆体験を語りながら条約制定を訴えたサーローさんに、会場から大きな拍手が起こり、しばらく鳴りやまなかった。条約推進派の国々や「核兵器なき世界」を訴えてきた被爆者と、不参加を決めた日本政府の間に大きな隔たりがあることが、改めて印象付けられた。
ピースボート共同代表で核兵器廃絶国際キャンペー ン(ICAN)の国際運営委員の川崎哲氏は、ある国の核に対抗するために他国の核が必要だという議論を認めたら、北朝鮮が言う、なぜ我々だけが核を保有することを許されず厳しい制裁下に置かれているのか、不平等ではないか、という議論を認めることになるとNPT体制の限界を指摘しております。
「核保有の不平等」こそが不安定化の要因 核兵器禁止条約、日本はなぜ反対したのか
川崎哲・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員・NGOピースボート共同代表
出典 Yahoo! Japan ニュース 2016/12/5
日本政府が、核兵器禁止条約に向けた交渉開始を求める決議に反対したことに、非常に怒っています。残念で、憤りを感じています。
(中略)
「アメリカの核の傘の下にいる以上、日本の安全保障の観点から核兵器禁止に賛成することができない」という声があることも承知しています。しかし、日本にとっての脅威とされる北朝鮮は、2006年に最初の核実験を行って以来、核実験を繰り返し、ミサイルの開発を続け、わずか10年で事実上核保有国になりました。その間、米国の核がなかったわけではありません。
ある国の核に対抗するために他国の核が必要だという議論を認めたら、北朝鮮が言う、なぜ我々だけが核を保有することを許されず厳しい制裁下に置かれているのか、不平等ではないか、という議論を認めることになります。核軍縮は、核兵器の削減と拡散の抑止を目指すNPT体制の下で進めるべきだという議論もありますが、核保有5大国に強制する規定もなければ、罰則もありません。NPT体制には限界があります。
核兵器禁止条約によって、保有国と非保有国の分断を深め、国際情勢が不安定になるという意見がありますが、逆です。核兵器が一部の国に認められている仕組みがあるために国際情勢が不安定化している事実とどう向き合うか、です。核兵器の使用の危険性が現実的に極めて高い状態にあるならば、「どの国にも平等に核兵器は違法である」というルールをつくることは、実は安全保障上もプラスに働くはずです。
皆様は、核兵器禁止条約不参加に賛成ですか?反対ですか?
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