企業は政治献金をすべきか
先頃、経団連は自民党を念頭にして会員企業・団体に対して政治献金を呼びかける方針を発表しました。
しかしながら、企業が間接的にしても特定の政治家に献金するのは、企業が見返りを期待しているからとはいえないのでしょうか?
ひとりディベート:政治献金再開に関する問題の背景
先頃、経団連は自民党を念頭にして会員企業・団体に対して政治献金を呼びかける方針を発表しました。
経団連:政治献金の呼びかけ再開表明 5年ぶり
毎日新聞 2014年09月08日 20時26分
経団連は8日の正副会長会議で、会員企業・団体に対して政治献金を呼びかける方針を確認した。経団連による献金への関与は5年ぶり。榊原定征(さだゆき)会長は会議後の記者会見で「日本経済再生のための成長戦略を進める健全な政党への寄付を呼びかける」と献金先は自民党を念頭に置いていることを示唆。献金は企業・団体の自主判断に任せるとしながらも、経団連として促す考えを表明した。
政治献金の是非を議論する前に、ディベートとしては言葉の定義をはっきりとしたいところです。
では、政治献金とは何でしょうか?
政治献金(せいじけんきん)
出典:ウィキペディア
政治献金とは政治家や政党に資金を提供すること。政治資金規正法では寄附とされる。
献金の種類は献金する行為者によって分類され、企業(法人)が行う企業献金(団体献金)と個人が行う個人献金(カンパ)がある。
(中略)
現在の日本では政治家個人への献金は原則として禁止されており、政治家に献金する場合は、政治団体(一政治家が一つだけ指定できる資金管理団体や、政治家の後援会など)を通じて献金することになる。これは個人献金のみ可能で、一政治団体に対して年間150万円迄の政治献金が可能であり、企業献金は企業の意を受けた政治家によって政府の施策が歪められる原因にもなるため、一切禁止されている(≒賄賂)。また政党へ献金する場合は、政党(本部および支部)へ直接献金する場合と政党が指定する政治資金団体へ献金する場合の2種類の方法がある。この献金は個人献金だけでなく企業献金も可能であるが、企業が、政治家が支部長を務める政党支部に対して献金するという方法を取れば、政治家が企業献金を受け取ることが可能になることから、企業献金の抜け穴であると批判されることもある。無所属議員は政党を通じて企業献金を受け取ることが出来ず、政党助成金制度ともあいまって、政党に所属する議員と比較して資金力に格差があると言われている。
ここで問題視されるのが、企業献金の抜け穴のところです。
即ち、個人しか、特定の政治家に献金することはできないという前提であるにもかかわらず、「企業が、政治家が支部長を務める政党支部に対して献金するという方法を取れば、政治家が企業献金を受け取ることが可能になる」というのです。
企業が間接的にしても特定の政治家に献金するのは、企業が見返りを期待しているからとはいえないのでしょうか?
ここで、政治献金の歴史を紐解いてみましょう。
実は、経団連は、長年に渡り、会員企業に割り当てる「あっせん方式」で年間百億円程度を自民党に献金していたのです。
しかしながら、リクルート事件、佐川急便事件など世論の批判を浴びて以来、経団連は斡旋を廃止し、民主党政権発足後企業献金を中止していたのです。
出典:東京新聞社 社説 2014年09月01日
民主主義の下で企業と政治、カネはどうあるべきか-。考え抜いたあげく、企業の政治献金は廃止すべきだとの結論を出したのは1993年、当時の平岩外四会長だった。
保守合同の五五年以来、経団連は、会員企業に割り当てる「あっせん方式」で年間百億円程度を自民党に献金していた。これが金権腐敗の温床になり、リクルート事件、佐川急便事件、金丸信自民党副総裁をめぐる巨額脱税事件などを引き起こす。
世論の批判で自民党一党支配が終わり、細川連立政権誕生後の93年9月、平岩経団連が公表したのが「企業献金に関する考え方」だった。冒頭を引用する。
「民主政治は、国民全ての参加によって成り立つものである。それにかかる必要最小限の費用は、民主主義維持のコストとして、広く国民が負担すべきである。従って、政治資金は、公的助成と個人献金で賄うことが最も望ましい」
平岩会長は企業献金の廃止を考えていたとされるものの、慎重論もあり、まずはあっせんを廃止。企業献金については「一定期間後、廃止も含めて見直すべきだ」とした。
04年になると奥田碩会長が、各政党の政策を評価して金額を決定する方式で、献金への関与を復活させた。小選挙区制が導入されたのを受け、「二大政党制」定着を目指して民主党への献金も表明したが、この方式は民主党政権発足後、民主党が献金を断り、09年10月から中止されている。
政治資金を語る場合、政党交付金も一緒に考えなくてはなりません。
政党交付金とは
出典:公明党ホームページ
政党の活動を助成するために設けられた制度です。政党が特定の企業や労働組合、団体などから政治献金を受けることを制限する代わりに、税金で政党の活動を支援し、政党の独立性を保とうという仕組みです。
政党交付金は、国民一人あたり250円のお金を選挙の結果によって政党に分配します。
即ち、政党交付金とは、政党が特定の企業等から政治献金を受けると贈収賄を引き起こさないとも限らないので、税金で政党の活動を支援するという制度なのです。
では、政党交付金導入に至った背景について見てみましょう。
政党交付金導入の背景
出典:ウィキペディア
日本において、企業・労働組合・団体などから政党・政治団体への政治献金を制限する代償として1990年代の政治改革論議において浮上し、1994年に政党助成法を含む政治改革四法が成立し導入された。
背景として「リクルート事件」のほか「中曽根税制改革」によって、財界の法人税・高額所得者所得税が20兆円前後減税となり、国民に対して付加価値税(中曽根税制改革では売上税と言う名称だったが反対が多くて廃案になり、消費税と言う名称で再度発議され宇野政権が導入を決めたあと、選挙で大敗した)を新たに課税した他、派遣法の可決などがあり、「財界の企業団体献金は見返りを求めない、贈収賄ではない献金」という前提に深い疑念が生じた事がある。
助成金の総額は国民1人あたり年間250円で決められる額で、直近の国勢調査で判明した人口を元に計算される。例として、2007年の総額は2005年の国勢調査により約319億4000万円であった。
こうした状況下で、経団連が政治献金再開を決定したわけですが、経団連会員でも賛同の輪が広がっている一方、政治との癒着を批判する声が再燃する可能性もあるのです。
出典:(共同通信)2014/09/09 13:44
「大企業に有利な政策を引き出すためという声があるのは、非常に心外で残念だ。そんな考えは全くない」。経団連の榊原定征会長は8日の記者会見で、政治献金を「民主政治を維持するためのコスト」と呼び、正当性を重ねて強調した。
「車の両輪」「二人三脚」「連携強化」。榊原氏は6月の就任当初から政治との関係の重要性を訴えてきた。
(中略)
経団連の会員である大企業の間でも賛同の輪が広がる。政治献金のための支出について、企業は狙いや効果などを株主に説明する責任を負う。経団連の方針に沿ったと主張すれば理解を得やすいという。当初は「年内には方向性を出す」としていた榊原氏だが、会員企業に背中を押される形で再開表明を繰り上げた。企業が献金する時期である年末には、政府、与党による法人減税などの議論も本格化する。それまでに方針を明確にする必要があったようだ。
(中略)
経団連幹部は政治献金再開について「政権に最も分かりやすく協力姿勢を示すメッセージを送った」と説明する。これに対し、政権側は今月5日、榊原氏を「格上」の経済財政諮問会議の民間議員に起用すると決定。経団連は「前進」と評価し、復権への足掛かりは確保したように見える。ただ経済界には、提言を実際の政策に反映させるといった「実効性を伴わないと、単に取り込まれただけになる」(大手メーカー幹部)と警戒する声がある。一方、経団連が求める原発再稼働や労働規制緩和が実現すると、世論が「政策を金で買った」と反発することも予想される。
ひとりディベート:経団連の政治献金再開に賛成派の論理
先頃、経団連は自民党を念頭にして会員企業・団体に対して政治献金を呼びかける方針を発表しました。
経団連会長、政治献金再開を表明 呼びかけ方式を踏襲
出典:日本経済新聞2014/9/8
経団連の榊原定征会長は8日午後の定例記者会見で、政治献金への関与を5年ぶりに再開する考えを表明した。以前の「呼びかけ方式を踏襲する」方針。榊原会長は経済界と政界の連携の重要性を指摘しつつ「政策を買うために金を出すという低レベルな話ではない」と強調した。
経団連は「政策を買うために金を出すという低レベルな話ではない」としていますが、では何故政治献金への関与を再開するのでしょうか?
政治献金再開に係る考え方を、経団連の発表した資料から読み取ってみたいと思います。
始めに理解すべきことは、今日本国民は、日本復活に向けた最大かつ最後のチャンスを迎えていることです。
この日本復活のチャンスを、経済と政治とが「車の両輪」となって、掴みとっていくことが必要なのです。
政治との連携強化に関する見解
出典:一般社団法人 日本経済団体連合会 2014年9月16日
わが国経済は、20年近くにわたるデフレの継続により、経済規模は縮小し、国際社会における存在感も低下するという閉塞感に包まれた時代を経験した。しかし、2012年末に発足した第二次安倍政権は、三本の矢からなるアベノミクスを大胆かつスピーディに実行し、その結果、わが国はデフレからの脱却を果たしつつある。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックという目標もでき、国民や企業のマインドも大幅に改善しつつある。
まさに今こそが、日本復活に向けた最大かつ最後のチャンスといっても過言ではない。このような時にあっては、経済と政治とが言わば「車の両輪」となって、国民一人ひとりが将来への希望と自信を持つことができ、国際社会から信頼される国づくりを力強く進めていく必要がある。
さて、この日本再生のチャンスを掴みとっていくため、「車の両輪」の一方である政治について考えてみましょう。
民意を代表する政治家が健全な政治活動を継続できなければ、民主政治が機能しないのは言うまでも有りません。
その政治家の活動費は政治資金と呼ばれていますが、寄付、政治資金パーティー、そして政党交付金で賄われております。
しかしながら、残念なことではありますが、政治家として活動していくには、現実的にはかなりのお金がかかるのです。
例えば、国会議員になるにはまず選挙で勝たなければなりません。そのため、議員の候補者は選挙区の人々に支持してもらえるように、さまざまな場で自分の考えを説明しなければなりません。また、自分を応援してくれる政治団体を作って運営していかなければなりません(公明党ウェブサイトより)。
その為、政治家は活動費を得るために、本来の議員活動に割くべき時間を政治資金パーティーや寄付を募る為に割いたり、最悪の場合、多くの贈収賄事件のように、賄賂を受け取ったりしてしまうのです。
つまり、政治家の活動費が健全な形で得られなければ、本来の民主政治の健全なる発展が阻害されてしまう危険性があるのです。
一方、日本における企業活動は、民主政治の健全なる発展がベースにあるわけで、民主政治の恩恵を受けて発展している企業は、タダ乗りすべきではなく、当然ながらそのコストを応分に負担すべきです。
即ち、企業の政治寄附は、「車の両輪」の一方である民主政治を適切に維持する為のコストを負担することであり、企業の社会貢献の一環として考えるべきなのです。
政治との連携強化に関する見解
出典:一般社団法人 日本経済団体連合会 2014年9月16日
一方、政治寄附については、経団連はかねてより、民主政治を適切に維持していくためには相応のコストが不可欠であり、企業の政治寄附は、企業の社会貢献の一環として重要性を有するとの見解を示してきた。
政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展、政治資金の透明性向上を図っていく上で、クリーンな民間寄附の拡大を図っていくことが求められる。
この企業の社会貢献を促進するために、経団連は、会員企業・団体に対し、自主的な判断に基づき、日本再興に向けた政策を進める政党への政治寄附を実施するよう呼びかけることにした訳です。
政治との連携強化に関する見解
出典:一般社団法人 日本経済団体連合会 2014年9月16日
そこで、経団連は、会員企業・団体に対し、自主的な判断に基づき、自由主義経済のもとで企業の健全な発展を促進し、日本再興に向けた政策を進める政党への政治寄附を実施するよう呼びかける。また、経団連としての政党の政策評価も実施していく。
こうした経団連献金関与に対して、読売新聞はその社説で「政党の運営費を、政治が使途を決める税金(即ち政党交付金)に、過度に依存する現状は問題が多い」と支持を表明しております。
[読売新聞] 経団連献金関与 企業の政治参加を促す契機に (2014年09月10日)
日本経済再生に向け、経済界と政治が連携を強化する契機としたい。
経団連が5年ぶりに政治献金への関与を再開することを決めた。会員企業に、自主的な判断に基づく政治献金を呼び掛ける。判断材料として、政党の政策評価を示す方針も明らかにした。
経団連の榊原定征会長は記者会見で、「経済と政治が手をつないで日本を立て直さなくてはならない」と述べた。
自民党の谷垣幹事長も、「民主主義の健全な発展のためには、社会貢献の一環として、企業も責任を果たさねばならないということだろう」と指摘した。
(中略)
経済の主役である企業が、ルールを守った透明な献金を通じ、政治に参加する意義は大きい。
読売新聞社説は、政党の運営費が、自らが使途を決める税金である党交付金に過度に依存する現状から脱却すべきと、企業献金再開の意義を説明しています。
[読売新聞] 経団連献金関与 企業の政治参加を促す契機に (2014年09月10日)
経団連は戦後、企業・団体に献金額を割り振る「あっせん」を続けていたが、ゼネコン汚職などを受けて1994年に中止した。
2004年に、政策評価を目安に献金を促す方式で関与を再開したものの、09年の民主党政権発足を機に、これも取りやめた。
政党への企業献金は激減し、自民党本部の場合、年間収入140億円の1割ほどだ。代わりに政党交付金が約7割を占める。
政界には、企業献金は不要とする意見もあるが、政党の運営費を、政治が使途を決める税金に、過度に依存する現状は問題が多い。企業や個人による献金の比率を高める方策を考えたい。
ひとりディベート:経団連の政治献金再開に反対派の論理
東京新聞は、その社説で「企業献金に関する考え方」をもう一度読むべきと、反対を表明しております。
政治献金 経団連の再開に反対だ
出典:東京新聞 2014年09月01日
民主主義の下で企業と政治、カネはどうあるべきか-。考え抜いたあげく、企業の政治献金は廃止すべきだとの結論を出したのは一九九三年、当時の平岩外四会長だった。
保守合同の五五年以来、経団連は、会員企業に割り当てる「あっせん方式」で年間百億円程度を自民党に献金していた。これが金権腐敗の温床になり、リクルート事件、佐川急便事件、金丸信自民党副総裁をめぐる巨額脱税事件などを引き起こす。
世論の批判で自民党一党支配が終わり、細川連立政権誕生後の九三年九月、平岩経団連が公表したのが「企業献金に関する考え方」だった。冒頭を引用する。
「民主政治は、国民全ての参加によって成り立つものである。それにかかる必要最小限の費用は、民主主義維持のコストとして、広く国民が負担すべきである。従って、政治資金は、公的助成と個人献金で賄うことが最も望ましい」
(中略)
〇四年になると奥田碩会長が、各政党の政策を評価して金額を決定する方式で、献金への関与を復活させた。小選挙区制が導入されたのを受け、「二大政党制」定着を目指して民主党への献金も表明したが、この方式は民主党政権発足後、民主党が献金を断り、〇九年十月から中止されている。企業と政治、カネの問題は「政策を買う」との批判と政治改革の中で揺れ動き、経団連の献金は中止に至っている。にもかかわらず再開するのは何のためか。
見えてくるのは政権との関係修復とアベノミクス推進の算術だけで、民主主義や政党政治への見識はうかがえない。再開の決定は九月以降となる。その前に榊原会長には「企業献金に関する考え方」をもう一度読んでほしい。選ぶべきは再開ではなく廃止ではないか。
すなわち、企業献金を中止すべきとの方向を示したのは、平岩外四会長(当時)が率いる経団連そのものだったのです。
平岩外四会長が発表した「企業献金に関する考え方」には、明確に「民主主義維持のコストは企業献金に依存しない仕組み作りにすべきであり、公的助成と個人献金で賄うことが最も望ましい」と理念を示した上で、「経団連は、来年以降、その斡旋は行わない」ことを明言しているのです。
企業献金に関する考え方
出典:経団連 会長・副会長会議 1993年9月2日
民主政治は、国民全ての参加によって成り立つものである。それにかかる必要最小限の費用は、民主主義維持のコストとして、広く国民が負担すべきである。従って、政治資金は、公的助成と個人献金で賄うことが最も望ましい。
これまでのところ、わが国では、公的助成が未発達であり、他方、個人が政治資金として自発的に浄財を寄附する風土も十分に育っていなかった。このような状況の中で、企業は、政党や政治家に対して資金の一部を拠出してきたが、経団連では、政治家個人への献金が腐敗を招くこともあったため、透明度の高いクリーンな資金の斡旋を、自民党を中心に行ってきた。このことは、自由主義経済体制の維持、議会制民主主義の発展にあたって、重要な役割を果たしてきたと考えている。
しかし、昨今の国民的な政治改革気運の盛り上がりの中で、国民の間で、企業献金への依存度を引き下げるべきとの意見が高まり、政界においてもそのための環境整備が図られつつある。
経団連としては、こうした動きを歓迎し、企業献金に依存しない仕組み作りに積極的に協力していくべきであると考え、以下の見解を明らかにすることとしたい。
(1) 今後は、政治資金を公的助成と個人献金で賄い、企業献金に過度に依存しない仕組みを確立していく必要があり、政府は、そのための環境整備を早急に行うべきである。
(2) 企業献金については、公的助成や個人献金の定着を促進しつつ、一定期間の後、廃止を含めて見直すべきである。
(3) その間は、各企業・団体が、独自の判断で献金を行うこととし、経団連は、来年以降、その斡旋は行わない。
なお、1993年分については、既定方針に従い処理する。
(4) 新しい時代における議会制民主主義のあり方、その中での経営者、企業人の役割について検討を深めるため、特別委員会を設置する。
以上
経団連の提言に応ずるように、「企業献金に関する考え方」が発表された2年後の1995年から、政治と特定企業・団体の癒着防止のために政党交付金が毎年300億円交付されており、岩手日報は、献金はこうした政治の姿をゆがめる恐れがあると指摘をしています。
経団連が献金再開 政治と政策をゆがめる
出典:岩手日報 10月26日(日)
政党助成法に基づく政党交付金は、政治と特定企業・団体の癒着防止のために1995年に導入され、今年20年目を迎える。
総額は毎年300億円を超え、制度に反対する共産党を除く政党に交付されている。最大勢力の自民党は2013年度に約150億円を受け取っている。
国民の税金が政党活動を支える基盤となっていることは疑いがない。制度自体にも問題はあるが、根底にあるのは政党が「国民のための政治」を行うという期待だ。
献金は、こうした政治の姿をゆがめる恐れがある。むしろ、政策提言などを通じて政党への影響力を増すことが、経済団体としての王道ではないか。
(中略)
ただし、経団連の利益は、そのまま国民の利益とは重ならない。消費税の再増税、原発再稼働、法人税減税、労働法制の緩和などの課題は国民の間でも議論がある。
伊藤忠商事元社長の丹羽宇一郎氏は、企業献金再開反対の理由として、「政党交付金を制度として残したまま、企業献金を再開するというのは政党にとっては「二重取り」で、企業は消費者に説明できない」ことを指摘しております。
経団連の政治献金再開には賛成できない (丹羽宇一郎氏の経営者ブログ)
出典:日本経済新聞 電子版014/9/24
私としては、経団連の呼びかけによる企業献金の再開には、一般国民の立場に立てば素直に賛成はできません。献金再開は安倍政権との連携を強める狙いがあるようですが、そもそも経済界はあまり政治に頼るべきではありません。基本はあくまで経済合理性であり、企業おのおのの力で競争力をつけるべきです。政治の役割は規制緩和の実行や他国との投資保護協定の締結など経済界が活動しやすい環境の整備が本筋です。
(中略)
すでに政党交付金という制度の下で政党は透明度の高い政治資金をまかなっているのだから、支持する政党に献金したいなら、別に企業献金という形ではなく個人献金すればいいだけの話です。一度はやめた企業献金を再開するというところに、政治と密接に結びつきたい、影響力を行使したいという願望が露骨に表れています。繰り返しになりますが、政治に近づきすぎて競争力が低下することが懸念されます。また、政党交付金制度が生まれた過去の経緯と照らし合わせると、企業献金の再開は株主や国民に対して、なかなか説明がしにくいのではないでしょうか。
1993年、経団連はゼネコン汚職などをきっかけにして、業界ごとに献金額を割り当てる「あっせん」を廃止しました。献金とりまとめや「あっせん」をする財界と政界との癒着の構造が問題となり、批判が高まったためです。政党交付金が導入されたのは翌1994年。企業や労組などからの政治献金を制限する代わりに、税金を政党交付金として充て、透明性の高い政治を目指したわけです。
この政党交付金を制度として残したまま、企業献金を再開するというのは政党にとっては「二重取り」であり、国民から見れば、税金と企業の2つのルートで政治に対して二重に払わされているということになります。献金を再開したり増やしたりする企業は、株主や消費者に対し、説得力ある説明ができるのでしょうか。
また、「法人は誰の利益を代表して政治献金を行うのかという問題がある」と指摘をする意見もあるのです。
経団連による「政治献金呼び掛け再開」への疑問
出典:大西良雄(経済ジャーナリスト)2014年9月16日
そもそも法人(その経営者)は誰の利益を代表して政治献金を行うのかという問題がある。会社法上の法人の所有者は株主だが、一方、法人は株主だけでなく従業員、消費者、取引先などステークホルダー(利害関係者)のものであるという考え方が強まっている。政治献金の再開、増額を決断する経営者は法人の所有者ではない。株主やステークホルダーの代理人に過ぎず、経営者が決める政治献金が多くの株主やステークホルダーの利益につながるか疑問だ。
たとえば、株主は政治献金を支払うカネがあるなら配当を増やせと主張するかもしれない。この主張に対して経営者が「献金が成功して望む政策が実現すれば会社の利益が増え株主配当も増える」と株主に説明すれば、経営者は「政治献金で政策を買う」ことになり刑法上の贈賄罪の予備軍になりかねない。
逆に献金実施後、「残念ながら献金の効果がなく政策が実現できず株主配当を増やせなかった」と言えば、経営者は特別背任罪に問われることになる。会社法では「自己もしくは第三者の利益を図り、(中略)、当該株式会社に財産上の損害を加えた時」には特別背任罪が成立するとしている。経営者が第三者の利益(ここでは安倍自民党への献金)を図り、(献金目的を達せず)会社に損害を与えた場合には特別背任罪に問われるという見方もある。
さらに経営者が、従業員、消費者、取引先などステークホルダーの意見を代理できるかといえばそうではない。従業員は政治献金をする金があるならベースアップに回せ、消費者なら製品値下げに回せ、取引先が下請け企業であれば下請代金引き上げに回せというかもしれない。従業員、消費者、取引先の中にはアベノミクスや安倍政権の特定秘密保護法や集団自衛権行使容認に批判的で自民党への政治献金を望まない人が多々存在するかもしれない。経営者はそうしたステークホルダーの代理人になれないはずだ。
以上、今回は経団連の企業献金再開に反対の議論を整理しました。
なお、行政に携わる地方自治体の方々と住民側として社会行政問題に関わる方々に対して、懸案問題に対して賛成と反対の両面から検討することで、問題の本質を掴み、内因性を理解することで、合理的で本質的な解決策を見出していくことを目指す、ディベート教室をご提案致します。
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