昨年5月国際電気通信連合(ITU)は、世界の情報通信技術のイノベーションに貢献した6人に対して、創設150周年を記念して設けられた「百五十周年賞」を贈りました。

これを日本人として受賞したのが、坂村健・東大教授です。受賞者は世界で6名のみ、しかもその1人が米マイクロソフト社の共同創業者ビル・ゲイツ氏というのですから、その偉業は相当なものといえます。

出典 総務省 平成27年5月15日
  ICT(情報通信技術)のイノベーションを通じて世界中の人々の生活向上に多大な功績のあった個人を顕彰する「ITU150周年賞」に我が国の坂村健氏(東京大学大学院情報学環教授)の受賞が決まりました。同賞は国際電気通信連合(ITU)の創設150周年を記念して設けられたもので、米国のビル・ゲイツ氏など世界から6名が選ばれました。

この受賞を、「もう一つのノーベル賞」と讃えているのが、毎日新聞です。

出典 [東京新聞] 年のおわりに考える もう一つのノーベル賞 (2015年12月30日)
もう一つのノーベル賞とは、今年五月、国際電気通信連合(ITU)が六人に贈った「百五十周年賞」のことです。受賞者の一人が坂村健・東大教授。受賞理由は「IoTの起源となったTRON(トロン)を提唱」でした。
(中略)
トロンというのは、坂村教授の提唱で始まった、大規模なプロジェクトです。内容は多岐にわたっていますが、重要なのが、自動車や電気製品、携帯電話などを制御するコンピューターシステムに組み込まれる基本ソフトのトロンです。パソコンのウィンドウズにあたるもので、シェアは約60%。二十年連続で一位です。人気の秘密は、ソフトの情報が公開され、無料で使えることです。

私が興味深く思ったのは、坂村教授はトロンが成功した理由は「オープン」だとしていることなのです。

出典 [東京新聞] 年のおわりに考える もう一つのノーベル賞 (2015年12月30日)
興味深いのは、坂村教授はトロンが成功した理由は「オープン」だと考えていることです。オープンとは、情報を公開し、誰でも使えることです。「開放」とでも訳すのが適当でしょうか。

さらに、板坂氏はインターネットがここまで普及したのも、そのオープン性にあると指摘しています。

出典 MONOist 2015年12月04日
 坂村氏はインターネットがここまで社会に浸透した理由を「誰でも使える、何にでも使える」オープン性にあるとし、どれだけ可用性や将来性があっても、一団体、一法人が管理運用するクローズドなものでは大きな普及は見込めないだろうという。

ICT分野だけでなく、iPS細胞も無償化されているとして、時代は「オープン」へ変貌したと考えられるのです。

出典 [東京新聞] 年のおわりに考える もう一つのノーベル賞 (2015年12月30日)
◆時代は「オープン」へ
同じようなことを二〇一二年のノーベル賞受賞者の山中伸弥京大教授もやっています。人工多能性幹細胞(iPS細胞)に関する基本特許を京大が取り、大学などの公的機関の研究者は無償でiPS細胞を作ることができるようにしたのです。

わたしは、この時代の流れは、オープンな議論をしてより良い結論を導き出すディベートと合致していると考えております。

例えば、先日ブログで取り上げた「旧五輪エンブレム問題」です。

クローズドの世界ならば問題にはならなかったかもしれないが、インターネットが世界中を結んでいるために情報が一瞬にして共用されて問題が顕在化しました。ディベートを取り入れていれば、未然に防げたかもしれないのです。

また、ブログ「米国大統領選挙とディベート」でも説明しましたが、世界に最も影響力を持つ米国大統領は、候補者同士のオープンな公開ディベートで選ばれているのです。

ここには、日本の首相選のように、派閥同士の話し合いで決まるクローズドな世界はありません。

また、日本の敎育も、先般のブログ「ディベートが大学入試新共通テスト(2020年度導入予定)の根幹となる」でも取り上げましたが、遅ればせながら欧米で実施されているディベートを根幹に取り入れるというように、世界の潮流に合わせなければならなくなってきているのです。

私共は、この世界の潮流を自分自身で見つめなおし、ディベートの必要性を再考すべきであると思うのです。

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