民泊を緩和することに賛成ですか、反対ですか?
民泊緩和の背景
近年、円安などを背景に、外国人旅行者数が大きく増加しています。
2012年以降、日本を訪れる外国人旅行者は増加の一途をたどり、2013年には1000万人を突破。2015 年の訪日外客数は前年比 47.1%増の 1,973 万 7 千人となり、過去最高であった 2014 年の 1,341 万 3 千人を 600 万人余り上回りました。
観光庁の「宿泊旅行統計調査」では、東京と大阪の宿泊施設の客室稼働率は年々上昇し、2015年では東京82.3%、大阪では85.2%となり、東京や大阪の主要なホテルでは宿泊予約が取りにくくなっています。
首都圏では外国人旅行者の宿泊対応に追われるあまり、出張などでホテルを利用したい日本人客が宿泊できないこともあるという状況です。2015年には外国人旅行者が急増したため、一部のツアー会社などでは春や秋の繁忙期に宿泊施設を確保できず、外国人旅行者の予約の受け付けができない事態も起きていました(以上、出典:マンション経営LOUNGE)。
そこで、政府は外国人旅行者の宿泊施設不足への対応策として、一般家庭などに有料で旅行客を宿泊させる「民泊」の規制を緩和する方針を打ち出したのです。
皆様は、民泊を緩和することに、賛成ですか?反対ですか?
「民泊」とは、個人が家の一室などを旅行者に貸し、宿泊場所を提供すること。海外では、インターネット上で宿泊希望者と部屋の提供者をつなげるサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」が拡大し、旅行者にとって「民泊」が宿泊先の選択肢の一つになりつつある。日本でもすでにこのサービスを利用した「民泊」が民間で行なわれているが、日本の旅館業法では有料での宿泊施設の提供はホテルや旅館などに限定されており、「民泊」は現行の法律に抵触するのです。
そこで政府は昨年4月、指定した「国家戦略特区」で旅館業法の規制を緩和する政令を施行。特区に限り、ホテルや旅館に課される厳しい安全・衛生基準の規制を部分的に緩め、家の一室を貸し出せる「民泊」を可能にしたのです(以上、The PAGE 2015.10.06)。
ところが、政府はさらに緩和して、民泊を全面解禁するというのです。
民泊を全面解禁、住宅地で営業認める 政府原案
出典 日本経済新聞2016/5/13 13:32
政府は一般住宅に旅行者らを有料で泊める「民泊」の全面解禁に向けた原案をまとめた。マンションなどを所有する貸主がネットで簡単な手続きを済ませれば、旅館業法上の許可なしで部屋を貸し出せるようになる。いまは禁じている住宅地での営業も認める。都市部を中心に足りなくなっている宿泊施設を増やし、訪日外国人の拡大につなげる。
民泊を緩和することに賛成する意見
民泊緩和のメリットは、大規模な投資もいらずに急激な需要増加に対応出来ることです。
実際、訪日外国人に大人気の京都では、民泊施設の宿泊可能人数は1万人超あり、ホテル不足が指摘される中、受け皿として需要が高まっているのです。
京都の民泊、キャパ1万人超 料金、6001~9000円が最多
出典 日本経済新聞 2016/5/10
日本有数の観光都市である京都市で、住宅の空き部屋などに旅行者を有料で泊める「民泊」が広がっている。市が9日発表した実態調査によると、市内の民泊施設の宿泊可能人数は1万人超だった。ホテル不足が指摘される中、受け皿として需要が高まっている。ただ、市は民泊施設の7割程度は旅館業法上の無許可営業とみており、運営ルール作りが急がれる。
(中略)
割安のイメージがある民泊だが、1人1泊したときの宿泊料金は、6001~9000円が最多で567件(21%)、次が9001~1万2千円の484件(17.9%)で、ビジネスホテルと並ぶ水準になっている。
今回の調査は民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」をはじめとする8サイトが対象で、調査期間は昨年12月から今年3月末。
将来的には、東京オリンピックが開催される2020年に、客室数は年間4万1000室の不足となり、それを解消するには約5700億円もの新規投資が必要になるとの試算があります。
新ビジネスAirbnbとUberを生かす規制緩和を
出典 毎日新聞 平野英治 / メットライフ生命副会長・元日銀理事 2016年3月2日
政府は訪日外国人客数の新たな目標として年間3000万人を掲げましたが、みずほ総合研究所によると、訪日客数が今後も増加し続ければ、20年に全国の宿泊施設の客室数は年間4万1000室の不足となり、それを解消するには約5700億円もの新規投資が必要になると予測しております。
しかしながら、東京オリンピック後の供給過剰懸念から、新たなホテルの開業には慎重になっております。
出典 マンション経営LOUNGE
2010年の上海万博の際、中国では多くのホテルが新たに開業されましたが、現在は客室稼働率が低下しています。首都圏のホテル関係者も、そのような事態を懸念しています。2020年の東京オリンピックという一大イベントが終わった後に、インバウンド需要が大幅に減ると、供給過剰になる懸念があるため、大きな投資に踏み込めないのです。
この解決策として有効なのが、民泊なのです。
民泊ならば、とくに多額の投資をせずにホテル不足を解消出来るのです。
最高技術責任者(CTO)のネイサン・ブレチャージク氏は、Airbnbブラジルのワールドカップでは海外からの訪問客の5人に1人がAirbnbの宿泊先を使ったとし、16年のリオデジャネイロ五輪は公式サプライヤーとして宿泊場所を提供するので、東京五輪でもそうしたいと日本市場への期待を説明しております。
宿泊ネット仲介「日本は非常な人気」 Airbnb戦略
出典 朝日新聞デジタル 2015年4月8日
――日本は重要な市場ですか。
「Airbnbで、日本は目的地として非常に人気が高く、一番伸びが高い。昨年は30万人が日本に滞在した。今年は100万人を超えると予想している」
「2020年の東京五輪に向け、伸びるだろう。16年のリオデジャネイロ五輪は公式サプライヤーとして宿泊場所を提供する。東京五輪でもそうしたい」
「ブラジルのワールドカップでは海外からの訪問客の5人に1人がAirbnbの宿泊先を使った。総額4千万ドル払われた。この成功があって、リオ五輪の話が決まった」
――東京ではどのぐらい宿泊先を提供できますか。
「東京ではいま3千強。パリは4万、ニューヨークは3万あり、東京も同じくらいに増える可能性がある」
一方、民泊を推進することで、合計10兆円台の経済効果が生み出されるとする予測もあります。
シェアリングエコノミー活性化に必要な法的措置に係る具体的提案
出典 新経済連盟 2015年10月30日
2-2 なぜ、いまホームシェアが必要なのか(①経済効果1/2)
ホームシェアによってインバウンド消費を含めた合計10兆円台の経済効果を生み
出し、「『戦後最大の経済、GDP600兆円』の実現」に貢献します。
1 ホームシェア物件数 約200万戸
2 外国人受入可能人数 約2500万人
3 経済効果 合計10兆円台
※以下の仮定を置いて算出
①上記200万戸のうち100万戸を外国人が利用し、その20%が稼働
②1人6泊、1室2名で利用
①ゲストによる消費等 約3.8兆円(次ページ参照)
②ホストによる投資等 約1兆円(次ページ参照)
③インバウンド消費 約7.5兆円
また、民泊推進が、空き家問題の解決策にもなるというメリットもあります。
2-2 なぜ、いまホームシェアが必要なのか(④空き家問題への対応・生産性革命)
出典 新経済連盟 2015年10月30日
現状、空き家問題への対応が急務
全国の空き家の数は820万戸(※)であり、全住宅の13.5%が空き家。何も手を打たなければ今後も上昇することが想定される。 ※平成25年住宅・土地統計調査
人口減少社会においては物件の借手の数を増やすことは難しく、オーナーや不動産管理会社側に物件の活用手段がない。また、オーナーが将来物件を使用する予定がある場合などに短期間だけ物件を活用したいというニーズへの対応手段がない。
長期間放置された空き家は倒壊の恐れや衛生上の観点からも問題
空き家をホームシェアに活用し減少させることにより空き家問題の解決に貢献
遊休資産が稼働資産に変わることによる生産性の飛躍的な向上
全国820万戸の空き家のうち、腐朽・破損がなく、ホームシェアに活用し得ると思われる物件数は約391万戸
このうち仮に30%が実際に活用されるとすると、大都市圏を中心として約120万戸の空き家が減少することになる。
さらに、民泊を通じて、ホストもゲストもコミュニケーションを楽しむというメリットも有るのです。
Airbnbが世界で流行るワケ 民泊先進国、オランダに見る普及のヒント
出典 日経ビジネス 2015年12月22日
アムステルダムに住むレンスク・ラットカールスさん(30)も、3年前からエアビーのホストを始めた1人。エアビーを知ったのはその更に2年前だった。「以前、ニューヨークに行った際、直前に予約しようと思ったらホテルの料金が高くて困っていたら友達が教えてくれた」(ラットカールスさん)。その楽しい思い出があったため、自身もホストを始めようと思い立ったのだという。(中略)
アムステルダムのエアビー事情から見えてくるのは、エアビーの「ソーシャル」な魅力。ホストもゲストもコミュニケーションを求めており、ホテルの代替とは考えていない。冒頭のスタヴィノア夫妻は、過去3回ほど海外でエアビーを利用しており、ゲストとホストが入れ替わることが多いのも特徴だ。こうした“コミュニケーション”に魅力を感じるホストやゲストに支えられ、エアビーは急成長してきた。
さらに、ホテル経営者からも民泊を後押しする声もあります。
シェアリングエコノミーが地域と業界を変える (星野佳路氏の経営者ブログ)
出典 日本経済新聞 2016/4/7
私は民泊に基本的に賛成の立場です。しかも、現在のような規制はどんどん取り払うべきだと考えています。今の形では使い勝手が悪く、民泊が本来持つ魅力が伝わりません。(中略)
規制緩和について「既存施設は衛生や安全の厳しい基準に合わせてきた。取り払ったら、既存施設にとって不公平だ」という人がいますが、イノベーションの起こるビジネスの世界では仕方のないことです。もちろん宿泊業界にとって衛生、安全は大切ですが、現在の規制はいきすぎた面もあると思います。自由度を上げる取り組みがあっていいはずです。
民泊を緩和することに反対する意見
始めに、ホテル不足問題ですが、ホテルの新設計画は非常に多いので数年で過剰になるとし、現状のホテル不足は周辺都市の空室情報の提供で解消できるという考え方があります。
民泊問題について
出典 一般社団法人 日本旅館協会 平成27年12月14日
④ ホテル不足は一時的な現象
東京・大阪・京都において、ホテルの新設計画は非常に多く、数年で過剰となることが
予想される。ホテル建設には通常3年~5年は必要であり、急激に増えたインバウンド
に直ぐに対応出来ていないだけである。
⑤ ホテル不足は周辺都市の空室情報の提供で解消
例えばJR京都駅からわずか 10 分でJR大津駅、20 分でおごと温泉駅に着く、この秋
の紅葉シーズンでも大津、おごと温泉では空室があった、大阪近郊や東京近郊のホテル
も余裕がある。空室情報の提供方法を工夫することによりホテル不足は解消される。
また、民泊が全国に広がると、地方小都市のホテルは死活問題になると警鐘を鳴らす声もあります。
「民泊」ルール整備についての問題点と依頼
出典 一般社団法人 全日本シティホテル連盟 平成 27 年 12 月 14 日
5、ホテルの許可制で全国に広がると・・・地方小都市のホテルは死活問題に
地方にある情報発信力の弱い小規模ホテルは、その魅力が充分に海外のお客様に理解
されていない。民泊の前に、既存宿泊施設の活用に尽力願いたい。
現在でも地方のホテル稼働率は50%程度で低迷推移しているところ。全国への展開
は、中小宿泊施設にとって、正に死活問題となる。旅館・ホテルの登録をやめて、民
泊への鞍替え案も・・・。
また、民泊緩和で空きマンション営業を認めるなら、現在旅館ホテルに適用されている規制を撤廃し、イコールフッティングにすべきとの指摘があります。
民泊問題について
出典 一般社団法人 日本旅館協会 平成27年12月14日
② 厳しい旅館営業許可
現状旅館営業をする場合、旅館業法だけでなく、不特定多数が利用するという観点から
消防法や建築基準法の厳しい規制が適用されている。時折査察があり、詳細にわたり指
導があり、時に莫大な改修費が必要となっている。民泊という名の違法空きマンション
営業を認めるなら、現在旅館ホテルに適用されている規制を撤廃し、イコールフッティ
ングにすべきである。
法律を遵守している旅館ホテルが不利益を被るというのは、法治国家としておかしいの
ではないか。
さらに、一般マンションの部屋がAirbnbで貸し出された時の、住民との問題があります。
民泊をめぐっては、近隣住民らからの苦情・通報が少なくとも368件寄せられていたということがわかりました。
出典 読売新聞 2015年12月31日
マンションの空き部屋などに宿泊する「民泊」を巡り、旅館業の
許可権限を持つ政令市など全国95市区のうち33市区に2012年度以降、
近隣住民らからの苦情・通報が少なくとも368件寄せられ、
うち9割が京都、東京、大阪に集中することが読売新聞の調査でわかった。
具体的には、一般マンションの部屋がAirbnbで貸し出され、外国人旅行者がゲストとして利用する場合で、夜騒ぐ、ゴミ出しがデタラメ、などルールを守らないことに対しての苦情が多いのです。
出典 ITMediaビジネス オーナーが同居しない空き部屋シェアリングは規制強化せよ
日本で一番批判が強いのは、一般マンションの部屋がAirbnbで貸し出され、外国人旅行者がゲストとして利用する場合である。いわく「しょっちゅう違うガイジンたちが出入りして気味が悪い」とか、「隣の部屋でほとんど毎晩パーティをやって騒ぐのでうるさい」「曜日に関係なくゴミ出しがされて、しかも分別や置き場所がデタラメ」などといった苦情が絶えないそうだ。
また、民泊では火災発生の確率が高まる上、火災や大規模地震が発生した場合に適切な避難誘導ができないとの問題点を指摘する声もあります。
いわゆる民泊に対する要望について
出典 一般社団法人日本ホテル協会 平 成 2 7 年 1 2 月 1 4日
「民泊」も、私どもホテルや旅館業と同じように不特定多数のお客様に宿泊
(滞在)いただくことになりますが、例えば、マンションの一室を外国人観光
客に提供することを考えますと、ホテルの客室とは異なりガス等の調理器具が
お客様自身で自由に使用できますので、火災発生の確率が高まると思われるこ
と、また、火災や大規模地震が発生した場合に適切な避難誘導ができないので
はないかということ、部屋の中での怪我や病気、感染症等が発症した場合の対
応が取れないのではないか等、大きな問題を内包していると考えます。
また、民泊で何らかの事件が起きた場合の責任の所在を明確にすべきとの指摘もあります。
「民泊」ルール整備についての問題点と依頼
出典 一般社団法人 全日本シティホテル連盟 平成 27 年 12 月 14 日
1、安全・安心の確保・・・・何らかの事件が起きた場合の責任の所在を明確に
特にテロリストや犯罪者の温床化を防ぐには、ホテル従業員との面談・情報提供の協
力なくしては不可能なものであり、警察庁・消防庁の見解は如何に。各種保険も。
以上、民泊緩和について賛成と反対の意見を見てみました。
皆様は、民泊を緩和することに賛成ですか、反対ですか?
なお、行政に携わる地方自治体の方々と住民側として社会行政問題に関わる方々に対して、懸案問題に対して賛成と反対の両面から検討することで、問題の本質を掴み、内因性を理解することで、合理的で本質的な解決策を見出していくことを目指す、ディベート教室をご提案致します。
ひとりディベートをより深く学ぶには、eラーニング「ひとりディベート講座」をお勧め致します。
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