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酒の安売り規制法案成立へ:賛成ですか?反対ですか?

酒の安売り規制法案成立へ

問題の背景

酒の過剰な安売りを規制する酒税法などの改正案が、今国会で成立する見通しとなりました。

皆様は、この法案に賛成ですか?反対ですか?

酒、安売り規制法案成立へ…価格競争妨げ懸念も
出典 読売新聞 2016年05月25日
 酒の過剰な安売りを規制する酒税法などの改正案が、今国会で成立する見通しだ。
 量販店などの安売りから、規模の小さな「街の酒屋さん」を守る狙いがある。しかし、健全な価格競争まで妨げ、消費者の利益を損なう恐れもある。小規模な酒屋の活性化に向けた効果も少ないとの見方も出ている。
 法案は、財務相が酒類の販売価格の「公正な取引の基準」を新たに定め、これに従わない場合、業者名を公表したり、酒類の販売免許を取り消したりできるようにする内容だ。すでに衆院を通過しており、6月1日の会期末までに参院でも可決、成立する見込みだ。
 採算を度外視した安売りでライバル店を廃業に追い込もうとする「不当廉売」に対しては、公正取引委員会が酒屋に限らず、独占禁止法に基づいて摘発している。また、国税庁は酒類に絞って、過剰な安売りを防ぐための指針を作っている。

始めに、問題の背景を見てみましょう。

従来、既存の一般酒店は「距離基準」「人口基準」のように、手厚く保護されてきました。

酒販売の規制緩和の経緯・流れ
出典 mjdsk.jp  2015/07/25
2001年に「距離基準」が廃止される。
←距離基準とは、酒販売店の間には一定の距離を置かなければならないという規制のこと。距離基準があると、既存の酒店の周りには新規出店出来なくなります。今でも、タバコ販売については距離基準の規制が残っています。
2003年に「人口基準」が廃止される。
←人口基準とは、地域の人口に応じて酒販売の免許枠(数)を制限する規制のこと。距離基準と同様、新規出店を妨げて既存の酒店を保護することが目的でした。
2006年に「緊急調整地域」が廃止され、完全自由化される。
←「緊急調整地域」とは、酒の過剰供給がなされている地域のことで、この地域については新規出店が規制されていました。この規制が無くなることで、酒の販売は完全自由化されることになります。

実は、過去2年間の時限立法で、かえって規制が強化された地域(特別調整区域)が存在していたこともあります。

酒類販売の「自由化」と同時に既存業者を保護することを目的とした議員立法(酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法)が制定され、かえって規制が強化された地域(特別調整区域)が存在するようになった。同法は2年間の時限立法であったため2005年8月に失効しているが、失効前の改正によって規制強化は2006年8月末日まで存続した(ウィキペディアより)。

さて、規制緩和の結果、一般酒販店の小売数量は約92%(1985年)から約15%(2013年)へ激減してしまったのです。

中小酒店保護は嘘っぱち!? 酒税法改正案は誰のためのもなのか
出典 東京Breaking News 2015年04月16日
こうした酒免許の規制緩和によって、各業態の小売数量(シェア) がどのように推移したかというと、次のようになる。
【酒屋(一般酒販店)の小売数量推移】
・85年 約92%
[内訳] 一般酒販店=92.6% コンビニ=4.3% スーパー=0.7% 百貨店=1.0% その他1.4%
・90年 約83%(コンビニのシェアが10%を超える)
・95年 約66%(スーパーのシェアが14%を超える)
・01年~05年 規制緩和による酒の自由化
・05年 約27%(スーパーのシェアが約30%となり、約12%のシェアを持つ量販店という業態が出現)
・ 13年(現在) 約15%
[内訳] 一般酒販店=14.8% コンビニ=11.1% スーパー=37.5% 百貨店=0.7% 量販店=13.0% 業務用卸主体店=9.8% ホームセンター・ドラッグストア=8.1% その他5.0%
参考資料 『酒類小売業者の概況』平成21年度~25年度分

さて、小売数量(シェア)の減少とともに、一般の酒販店数は約5万5千店とこの20年で半分近くにまで減少してしまいました。そこで、自民党は、一般酒販店の急減は地域経済に与える影響が大きく円滑な酒税徴収にも支障が生じる恐れがあるとして、酒販店側の要請を受けて、法規制として導入することにしたというのです。

酒の安売り規制 消費者の利益を損なうな
出典 産経ニュース 2015.4.19
酒類販売をめぐっては、規制緩和で大手スーパーやディスカウント店などが相次いで参入し、一部では安売りが加速している。こうした競争も響いて一般の酒販店数は、約5万5千店とこの20年で半分近くにまで減少している。
 自民党は、一般酒販店の急減は地域経済に与える影響が大きく、円滑な酒税徴収にも支障が生じる恐れがあるとみている。国税庁も過度な安売りをしないように指針を設けて指導してきたが、自民党は酒販店側の要請を受け、法規制として導入することにした。

酒の安売り規制法案成立に賛成側の意見

始めに「酒税の税収確保が阻害される恐れがある」というのです。

猛反発「酒激安規制」の四面楚歌 自民「誤解」火消しに懸命
出典 産経ニュース 2015.5.11
 国税庁は18年に酒類に関する取引指針を定めたが、法的拘束力はない。また、採算を無視した不当な安売りは、公取の独占禁止法で禁止されているが、可能な処分は注意喚起、警告、排除措置命令までで「別の法律の免許を取り消すような罰則もなかった」(公取担当者)といい、効果は疑問視されていた。
 実際、公取が平成25年度に不当廉売として注意喚起した1366件中、酒類は847件と62%を占め群を抜いて多い。放置すれば、街の酒屋や卸売業者の経営が圧迫され、「酒税の税収確保が阻害される恐れがある」というのが自民党の大義名分だ。

また、法案の目的は、大型店の販売価格に口を出し小規模な酒販店を保護するようなものではなく、「原価割れの安売り」だとする論点もあります。

猛反発「酒激安規制」の四面楚歌 自民「誤解」火消しに懸命
出典 産経ニュース 2015.5.11
 ある自民党議員は「勘違いされているんだよ。原価割れのような違法行為を取り締まるのであって、安い原価で仕入れて安く売ること自体は問題ない」と猛反発の火消しに躍起だ。
 例えば、客寄せパンダ商品といわれる商品がある。消費者の関心が高いビールなどを原価よりも安い販売価格に設定して客引きに使う。ビールでは損が出るが、他の商品を買ってもらえば、全体の利益自体は確保できるという慣行だ。これでは一般の酒販店と公正な競争環境にはならない。
 また、特売のために原価をできるだけ抑えようと、中小の卸売業者に取引維持をちらつかせ「卸売業者が原価割れで大規模小売店に酒を卸す事例もある」(国税庁)という。
 自民党は法案で取り締まろうとしているのは、こうした明らかに不適切な行為だ。逆に大型店が大量仕入れでコストを抑え、低価格で酒を販売する手法は何ら問題がないのだ。

また、今回の法案の最大の目的は「WHO(世界保健機関)の勧告に基づきアルコールが原因の健康障害を予防すること」とする論点もあるのです。

出典 テレビ朝日 そもそも総研 放送日2015/06/11
街の声を踏まえて、玉川さんは「街の酒屋さんを守る国会議員の会」会長の自民党・田中和徳衆院議員にお話を伺いました。田中議員によれば、今回の法案の最大の目的は「WHO(世界保健機関)の勧告に基づき、“アルコールが原因の健康障害”を予防すること」なのだそうです。

実際、日本では飲酒による死亡者は34,988人(2008年)で、総死亡の3.1%を占めており、その社会的費用は4兆1483億円と推定されているのです。

出典 ウィキペディア アルコール乱用
日本においては、飲酒による死亡者は34,988人(2008年)で、総死亡の3.1%を占めており、その社会的費用は4兆1483億円と推定されている(2008年)。
アルコール依存者は80万人と推定されているが、うちその95%が未治療のままであった。
・多量飲酒者 857万人
・アルコール依存者とその予備軍 440万人
・治療が必要なアルコール依存者 80万人 (うち、治療につながった患者は5%)

では、「法改正ではなく、独禁法で取り締まればいいのでは?」と疑問を持たれる方も多いと思います。

こうした疑問に対して、独占禁止法にくわしい籔内俊輔弁護士は、「仕入価格割れの安売りであれば、独禁法違反とまでは判断されない場合もある」と指摘をしています。

「酒の過度な安売り」法律で規制へ…なぜ国が価格設定に口出しできるのか?
出典 弁護士ドットコムニュース
「独禁法違反の不当廉売といえるためには、単に仕入価格を下回って売っているだけではなく、一定程度の継続性があり、ライバル企業の顧客を不当に奪って事業活動を困難にさせるおそれも必要とされています。そのため、顧客の来店誘引のために、短期間に限って行われている仕入価格割れの安売りであれば、独禁法違反とまでは判断されない場合もあると思われます。
改正法では、酒類に関する公正な取引の基準が定められることになっており、独禁法上問題となる不当廉売より、広く安売りを規制する狙いがあるのだと思います。この基準の制定にあたっては公取委との協議を経なければならないとされていますので、過剰規制にならないように公取委の事前チェックは入る予定です。

酒の安売り規制法案成立に反対側の意見

初めに、「酒屋が急減すると、酒税の円滑な徴収が阻害される」ことはありえないとする意見を紹介します。

酒の安売り規制、自民法案準備 「まちの酒店」働きかけ
出典 朝日新聞2015年4月24日
 今回の規制案は、目的に「酒税の保全」を掲げる。「まちの酒店」の経営が傾くと、メーカーからの税の徴収が難しくなるというのだ。酒税の税収は13年度までの20年間で3分の2ほどに減った。だが、その主な原因は、酒店の経営難や店頭価格の低下ではなく、高齢化やアルコール離れで消費量が減ったことだ。酒税は酒の種類と販売数量に応じて税額が決まる。ビールなら350ミリリットルあたり77円。店頭での価格には左右されない。

また、価格競争から守ることが街の酒販店の育成や存続につながるかどうかも疑問だとするのが、東京新聞です。

酒安売り規制 晩酌の楽しみに影が…
出典 東京新聞 社説2015年4月25日 
 そもそも安売り規制を強化したところで街の酒屋救済につながるのかという根本問題もある。大量仕入れするディスカウント店やスーパー、ネット通販などは確かに価格は安いが、消費者の支持理由はそれだけではない。
 購買行動が大きく変化しているのである。酒屋で買うより、量販店でほかの買い物と一緒に求めたり、深夜でも買えるコンビニ利用が増えた。安売りを禁じても、量販店の豊富な品ぞろえやコンビニの二十四時間営業の便利さに対抗できるかだ。結局は消費者をつかむ創意工夫次第ではないか。

また、 “アルコールが原因の健康障害”を予防すること」ならば、国税庁に取り締まりをさせるのか理解に苦しむという意見もあります。

出典 テレビ朝日 そもそも総研 放送日2015/06/11
“国民の健康維持”は厚生労働省の管轄なのに、なぜ国税庁に取り締まりをさせるのか? また、国民の健康を守るのが目的ならば“安売り規制”ではなく“酒税アップ”などでも対応できるのではないか?」というものでした。

一方、莫大な販売奨励金を注ぎ込む必要がなくなり、収益力が飛躍的に向上するビール会社から利益の一部を自民党に献金させると共に、延命策を施す酒屋の組合からもタップリ吸い上げる二兎作戦だと考える見方もあります。

弱者の味方は大ウソ!? 法改正で“酒の安売り禁止”の本当の狙い
出典 週刊実話 2015年05月10日
なぜ酒の安売りを規制するのか。自民党の野田毅税調会長は法案提出の方針を承認したことを受け、「安売り競争で小売酒販店が廃業に追い込まれていくという悲惨な状況が続いてきた。何でもありは見直さないといけない」と強調した。まるで町の酒屋さんの利益代表を買って出た図式だが、「本当の狙いは別では」と量販店関係者は指摘する。
 採算を度外視したような安売り競争がなくなれば、ビール会社は莫大な販売奨励金を注ぎ込む必要がなくなり、収益力が飛躍的に向上する。だからこそ「利益の一部を自民党に献金させる魂胆ではないか。むろん、延命策を施す酒屋の組合からもタップリ吸い上げる二兎作戦」と疑っているのだ。

「自民党も票集めのため業界を使おうとしているようにみえる」との批判もあります。

酒の安売り規制、自民法案準備 「まちの酒店」働きかけ
出典 朝日新聞2015年4月24日
規制を強く求めたのは、中小の酒店でつくる政治団体「全国小売酒販政治連盟」(酒政連)だ。水口尚人政策部長は「公正な取引の土壌が整って、初めて店の創意工夫が生きる」という。採算を無視した不当な安売りは独占禁止法が禁じているが、「公正取引委員会の注意にも是正しない業者が多い」との声がある。(中略)
 酒政連の資金力は落ちたが、政権交代後の13年から政治家への働きかけを再び強める。酒政連と同大阪府支部の13年の政治資金収支報告書によると、自民党の議連「街の酒屋さんを守る国会議員の会」会長の田中和徳衆院議員が代表の自民党支部に計20万円、事務局次長の有村治子女性活躍相の後援会に10万円を献金した。(中略)
 青山学院大の三木義一教授(税法)は「工夫を怠り免許で守られようとする発想が、業界の改革を遅らせた。自民党も票集めのため業界を使おうとしているようにみえる」と批判する。(青山直篤)

ダイレクトに「来年の参院選をにらんだ業界対策で大義名分は後付け」と批判する向きもあります。

猛反発「酒激安規制」の四面楚歌 自民「誤解」火消しに懸命
出典 産経ニュース 2015.5.11
これに対し、消費者や大手販売店からだけでなく、酒類大手メーカーからも「販売数量減につながる危険もある」と警戒する意見も出ている。もともと法案が中小の酒販店でつくる政治団体「全国小売酒販政治連盟」が自民党に働きかけた。酒販店の経営者は地元の名士であることが多く、自民党の支持母体でもあるだけに「来年の参院選をにらんだ業界対策で、大義名分は後付け」(関係者)と指摘する向きもある。

以上、今回は酒の安売り規制法案成立に賛成と反対の意見を検証しました。

皆様は、酒の安売り規制法案成立に賛成ですか?反対ですか?

なお、行政に携わる地方自治体の方々と住民側として社会行政問題に関わる方々に対して、懸案問題に対して賛成と反対の両面から検討することで、問題の本質を掴み、内因性を理解することで、合理的で本質的な解決策を見出していくことを目指す、ディベート教室をご提案致します。

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