「ディベートによる提案」とは、肯定・否定の両方の立場から議論を組み立て、提案書を作成し提案(プレゼン)することです。

誰でも自分の支持する立場が好きなので、自分の支持する立場だけで、問題解決を図ろうとします。

しかしながら、一方的な立場で構成された考えは、独善的で論理が飛躍しがちで、反感を買いやすく、否定されやすいという問題があります。

そこで、ディベートで課題の両面を検討することで、聞き手の立場を考慮した提案が行えるのです。

また、自分の支持する議論に対して、自ら疑問を呈し、その弱点を修正することで、より説得力のある提案を行えるというメリットも有ります。

こうした、「ディベートによる提案」について、説明していきたいと思います。

さて、現代の社会では、様々な問題があります。

財政問題、円高の対処、年金問題、原発の問題、震災からの復興や失業問題など、取り上げれば、いくらでもあります。

また、ビジネスに携わっている方に対しても、問題は山済みされています。

マーケットシェアの低下、売り上げの減少、高コスト、非効率生産、低い顧客満足など、日々頭を悩ます問題ばかりです。

こうした問題に対して、ディベートでは、提案手法が幾つかありますが、その中から最も基本的な提案である、問題解決型を説明していきたいと思います。

問題解決型の提案は次のような要素から構成されています。

1. 目標設定 【ゴール】
2. 現状変革の必要性 【ニーズ】
3. 解決策の提示 【プラン】
4. 解決策による利益 【メリット】

今回は2. 現状変革の必要性【ニーズ】について反論してみましょう。

まず、提案者は、「問題は深刻で、原因には内因性があり、対策をとらないと問題は解決しない」ことを証明する必要がありました。

これに対して、どのように反論したら良いでしょうか?

そうですね、「問題は深刻でなく、原因には内因性がなく、対処する必要がない」ですね。

この流れを理解するために、具体例を見てみましょう。

論題は、「職場・公共の場所は全面禁煙すべき」」です。

始めに、否定側は「喫煙問題は深刻な問題ではない」ことを示します。

=== 問題の重要性の否定 ===
否定側としては、現状は、健康増進法により既に禁煙や分煙が進んでおり、現状で十分だと考えます。

まず、現在既に80%を超える企業で分煙が実施されております。

2010年10月からの値上げで禁煙する人が急増
出典:ビジネスメディア 誠 2008年10月23日
中央労働災害防止協会 中央快適職場推進センターの調査「職場における喫煙対策の実施状況について(平成22年3月)」によれば、建物内に喫煙室又は喫煙コーナーを設置していると回答した企業は、80%を超えております。

一方、喫煙率は毎年着実に低下しております。平成26年の成人男性の平均喫煙率は30.3%で、昭和41年の83.7%と比較すると、48年間で53ポイント減少しているのです。

成人喫煙率(JT全国喫煙者率調査)
出典 厚生労働省 最新タバコ事情
 たばこ産業の「平成26年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は30.3%でした。 これは、昭和40年以降のピーク時(昭和41年)の 83.7%と比較すると、48年間で53ポイント減少したことになります。 年代別にみると、急激な喫煙率の減少傾向が見られる60歳以上は21.1%で、 ピーク時(昭和41年)より57ポイント減少しました。また、平成26年の喫煙率が一番高い年代は40歳代で38.5%でした。(中略)
 これに対し、成人女性の平均喫煙率は9.8%であり、ピーク時(昭和41年)より漸減しているものの、ほぼ横ばいといった状況です。

分煙対策が80%以上の企業で実施されている上に、喫煙率が近年急激に低下してピーク時の半分程度になっている状況を考えれば、健康増進法にそった現状で十分であると考えます。
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次に、受動喫煙と肺がんの関連性(即ち、内因性)を否定します。

=== 内因性の否定 ===
受動喫煙による肺がんリスクは小さく、大きな問題とは考えられません。こうした考え方を支持する論文を2つ紹介いたします。

始めに、職場禁煙や公共の場における受動喫煙と健康被害との間には統計的に有意な関連性がありません。

出典:日本パイプクラブ連盟
2009年3月に公表された全米経済研究所のKanakaらの報告によると、米国における1990年―2004年の大規模データベースを用い、「職場禁煙や公共の場の喫煙規制」と「心筋梗塞や他の疾患による死亡率・入院」との関係について調査した結果、「職場禁煙や公共の場の喫煙規制」は、「心筋梗塞等による死亡率・入院」の減少に対して、ほとんど統計的に有意な関連を持っていないことが明らかにされました。

次に、家庭において、受動喫煙による肺がんリスクが認められていないことを示します。

出典:日本パイプクラブ連盟
夫からの受動喫煙を受けた非喫煙の妻の肺がんになるリスクに関する疫学論文は、1981年から2003年までに49報ほど、発表されています(平山の論文もこの中に含まれています)。しかしながら、その実態は、図1に示しましたが、受動喫煙の影響が統計の誤差を超えて認められた論文(受動喫煙の影響が認められた論文)は、12%(6報)しかなく、88%(43報)の論文は、統計の誤差の範囲内(受動喫煙の影響が認められない論文)でした。図1において、オッズ比「1」をまたいでいる場合が統計の誤差の範囲内であり、オッズ比「1」を超えて大きい場合が統計の誤差を超えて受動喫煙の影響が認められている場合を示しています。つまり、図1は、受動喫煙による肺がんリスクは大部分の論文で認められていないということを意味しています。

以上より、職場や公共の場、そして家庭での受動喫煙と肺がんの関連性は大変低いと考えられます。

したがって、現状を変えなければならない理由は、特に無いと考えます。
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以上で、提案側の解決策の必要性に対して、反論しました。

「ディベートによる提案」とは、肯定・否定の両方の立場から議論を組み立て、提案書を作成し提案(プレゼン)することです。

これは、一方的な立場で構成された考えは、独善的で論理が飛躍しがちで、反感を買いやすく、否定されやすいという問題があるので、ディベートで課題の両面を検討することで、聞き手の立場を考慮した提案が行えると考えております。

また、自分の支持する議論に対して、自ら疑問を呈し、その弱点を修正することで、より説得力のある提案を行えるというメリットも有ります。

こうした観点から、論題「職場・公共の場所は全面禁煙すべき」」において、賛成と反対の両方の議論を組み立ててきました。

賛成と反対の両方の議論を考えることで、より深く理解ができたでしょうか?

今回は2. 現状変革の必要性【ニーズ】について反論してみました。

次回は引き続き、問題解決型提案の解決策と解決策による利益について反論していきたいと思います。

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