良い判断をするには、次の4つのステップが必要となります。

選択肢を作る
判断基準を作る
判断基準で選択肢を評価する
決断をする

これまで、「選択肢を作る」、「判断基準を作る」、「判断基準で選択肢を評価する」、「決断する」について説明してきました。

今回は、「腑に落ちない」について説明したいと思います。

過去、判断基準と選択肢で、マトリックスを作り、それぞれの升目を5段階評価しました。

選択肢
選択肢A:都心にあるフレンチ・レストラン
選択肢B:都心にある和食・ダイニング
選択肢C:家の近くにあるイタリアン・レストラン

判断基準
1.家から1時間以内で行かれる
2.予算はひとり8千円以内
3.お洒落な雰囲気がある
4.両親はワインが飲めるメニュー
5.子供が好きなお肉があること

そして、評価結果は次のようになりました。

合計13点 選択肢A:都心にあるフレンチ・レストラン 
合計13点 選択肢B:都心にある和食・ダイニング 
合計16点 選択肢C:家の近くにあるイタリアン・レストラン 

でも、家族の結論は、「車で行かれるデパ・地下で惣菜とワインを買う」でした。
せっかく判断基準を作り、選択肢を考えて、マトリックスで評価したのに、決定されたのは、ここにはなかった選択肢D「車で行かれるデパ・地下で惣菜とワインを買う」だったというのは、練習問題としては、はなはだショックなことです。

ここには、2つ考えさせられる点があるかと思います。

1つ目は、選択肢Dが無かったことです。

始めからこの選択肢Dがあれば、問題はなかったのでしょうが、何故無かったのでしょうか?

これは、外食するという前提があったので、選択肢から自然と外れてしまっていたのです。

つまり、ある前提をもっていると、選択肢が自ずと狭まってしまうと言う危険性をはらんでいる事を意味しています。

前提条件を事前に考えることは重要です。

これは、前提条件がなければ、実情にあった選択肢にならなかったり、あるいは選択肢の数が多すぎて、判断に時間がかかり過ぎるからです。

しかし、ここでの問題は、前提条件が狭すぎて、最もよい選択肢が選べなかったということです。

2つ目は、判断基準の問題です。

レストランを選ぶと言う例で言えば、実は「1時間以内」と言う評価をしたものの、実は「ワインを飲んで酔って帰ってくる」のが面倒と言う隠れた理由があったのです。

また、予算も実はもう少し、安くしたいという気持ちがどこかにあったのですが、家族の手前、格好をつけてちょっと言い出し難かったのもありました。

何故このように判断基準が十分に検討できなかったのでしょうか?

このケースで言えば、「本音」ともいえるべき、判断基準がなかったということです。

父親が「家で食べよう」というと、家族から「ケチ」と猛反対を受けるかもしれません。

つまり、家族の前で「格好をつけたい」と思うと、「本音」がでてこないのです。

これは、ビジネスでも大いに当てはまると考えられます。

さて、論理的な結論が納得できないという状況を、よく「腑に落ちない」と表現します。

ここで、「腑に落ちない」とは、次のようなことを意味します。

腑に落ちない :納得できない。合点がゆかない。
出展:「大辞林 第二版」

私は、「腑に落ちない」ことがおきるのは、人の脳の構造にあると考えております。

俗説的には、右脳と左脳の違いについて次のように言われております。

右脳:感覚的で直感的
左脳:分析的で論理的

この右脳と左脳の違いは科学的にはさほど明快には解明されてはいないようですが、私がこの俗説を取り上げたのは、人は感覚(直感)と論理(分析)の両方の能力を持っており、この2つの能力は別々の脳の場所が司るということです。

ここで「腑に落ちない」という議論に戻ってみましょう。

「腑に落ちない」気持ちになるのは、往々にして論理的に導かれた結論に対してです。

論理的結論とは、限られた条件のなかで最適な解ということです。

つまり、あらゆる組み合わせでベストな解を見つけたわけではなく、有効であろうと考えた限られた範囲でのベストな解ということです。

論理を積み重ねた解は、論理をたどれば、確かにベストではあります。

しかしながら、前提を変えたり、考える範囲を変えれば、別な解がベストとなる可能性があるのです。

左脳(分析的で論理的)で導かれた結論に対して、右脳(感覚的で直感的)も「そうだね、同感だ」といってくれれば、すっきりするのですが、右脳が「なぜか違う」と反応することがあります。

この右脳が「なぜか違う」と反応することが、「腑に落ちない」であると私は思うのです。

別な言葉で言えば、右脳は「この論理的帰結は前提なりが誤っていて結論に納得性が欠けてるよ」と危険信号を送ってくれているのです。

今回のレストラン選びの場合では、「本音」が言えなかったことが、「腑に落ちない」原因となっていました。

「本音」は分析的で論理的(左脳)というよりは、感覚的で直感的(右脳)が司る問題です。

このため、結論に「腑に落ちな」かったわけです。

さて、こうした場合に、どのように対処したらよいでしょうか?

私は、もう一度内容を検証することが肝要ではないかと思います。

そうすることで、誤りが見つかったり、あるいは何故「右脳」が納得できなかったが分かるのです。

こうした再検証を済ませた後の結論には、より説得性が増すと思うのです。

皆様も、「腑に落ちない」場合は、潔く再検証をすることをおすすめする次第です。

今回で、ディベート的判断力の説明を終了したいと思います。

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