先日発表された大学入試センター試験に代わる新たなテストのイメージが発表されました。

私はそれを見て、やっと日本の教育にもディベートが根幹となる日が来たと感慨を深めた次第です。

さて、文部科学省はいまの大学入試センター試験を廃止して平成32年度から新たに「大学入学希望者学力評価テスト」を実施する方針を示しております。

出典 NHK NewsWEB 2015年(平成27年)12月24日
大学入試の抜本的な改革を目指している文部科学省は、22日に開かれた有識者会議で、大学入試センター試験に代わる新たなテストのイメージを示しました。文章やグラフを読み解いて自分の考えを書く問題となっていて、こうした記述式をまずは国語と数学に盛り込む方向で検討を進めるとしています。
文部科学省はいまの大学入試センター試験を廃止して平成32年度から新たに「大学入学希望者学力評価テスト」を実施する方針で、有識者会議で検討を続けています。

大学入試の抜本的な改革をする理由として、「知識を覚えることに偏りがちないまの試験から知識の活用や思考力などを総合的に評価するものに転換する必要がある」としています。

出典 NHK NewsWEB 2015年(平成27年)12月24日
大学入試を巡っては、知識を覚えることに偏りがちないまの試験から知識の活用や思考力などを総合的に評価するものに転換する必要があるとして、抜本的な改革に向けた検討が続けられています。
(中略)
センター試験に代わる新たなテストでは学力の3要素のうち「知識・技能」のほかに「思考力・判断力・表現力」を中心に評価し、大学の個別試験では「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を多面的に評価するとしています。新たなテストは▽マークシート方式に加えて記述式の問題を導入することや、▽英語は「読む力」と「聞く力」だけでなく、「書く力」や「話す力」も問うことなどが基本方針として示されました。

こうした改革の方向を具体的に理解するために、「国語総合」を対象に検討した記述式問題のイメージを引用してみましょう。

出典 文部科学省 大学入学希望者学力評価テスト(仮称)
1,400字程度の新聞記事を,一定の目的に添って読み取り,得られた情報を取捨選
択したり,自分の考えを統合したりしながら,新たな考えにまとめ,200~300字で表
現する問題。
(公立図書館に関し,その現状と課題の他,若者の自立・社会参画支援を推進する場,家庭教育支援のための場,地域の人たちの対話や交流の場としての試みなど今後の公立図書館の可能性等について記した1,400字程度の新聞記事を読んで答える問題)
問 今後の公立図書館の在るべき姿について,あなたはどのように考えるか。次の1~3の
条件に従って書きなさい。
条件1 200字以上,300字以内で書くこと(句読点を含む。)。
条件2 解答は2段落構成とすること。
第1段落には,今後の公立図書館が果たすべき役割として,あなたが重要と思
うものについて書くこと。その際,文中に示された公立図書館の今後の可能性の
うち,今,あなたが重要と考える事項を一つ取り上げ,本文中の言葉を用いて書
くこと。
第2段落には,仮にあなたが図書館職員だとした場合,図書館において,第1
段落で解答した姿を実現するために,どのような企画を提案したいかを記すこと。
その際、企画の内容に加えて企画の効果についても記すこと。
条件3 本文中から引用した言葉には,かぎ括弧(「 」)を付けること。

私は驚きました。

何故なら、この設問に求められている内容は、ディベートの試合における肯定側立論そのものだからです。

簡潔に説明するために、ディベートの試合における肯定側立論で述べることと新たなテストで要求されていることを並べてみます。

肯定側立論              新たなテスト
・定義                    ・新聞記事で共有されていると考えられる         
・哲学/目標                ・今後の公立図書館が果たすべき役割
・重要な問題               ・重要と考える事項
・その問題を解決するプラン      ・解答した姿を実現するための企画 
・そのプラン導入によるメリット     ・企画の効果

      

ご覧のとおり、ほぼディベートの肯定側立論に沿った内容が解答として要求されていることがお分かりいただけると思います。

更に驚いたのが、英語です。

英語スピーキングテストでは、ある文章を読んで、その趣旨に賛成か反対かでスピーチをするのです。

なお、賛成はAffirmative、反対はNegativeと英語では言いますので、ご参考まで。

出典 文部科学省 大学入学希望者学力評価テスト(仮称)
~ Speaking ~ (主な受験者層としてCEFRレベルA1~B1を想定)
Here is a statement:
Students in Japan should travel abroad. Do you agree or disagree with this statement? Give one or more reasons why you think so.
You will have one minute to prepare. Then, you will have two minutes to speak.
<60 seconds>
【解答例】(評価3となる回答例)
(Affirmative)
I agree with the statement. Students(in Japan)should travel abroad because traveling is one way to learn. By visiting new places, it is possible to learn about things such as the food eaten there or the language spoken there. Going abroad is the best way to study.
(Negative)
I disagree with this statement. Students(in Japan)do not need to travel abroad. These days it is easy to get information about foreign countries on the internet or television. There are a lot of programs and videos made by people who travel all over the world, so it is not important to go there yourself.

この考え方の基本は、まさにディベートの試合そのものなのです。

新テストの内容が決定されるまでには、紆余曲折があると考えられるので、このままの形で導入されるかは不透明ではありますが、ディベートの考え方が教育の根幹になってくるということが理解していただけたかと思います。

この状況は、別な見方をすれば、欧米教育の基本であるディベートを採用しなければ、日本がグローバル社会で生き残りが難しくなったことを示していると言えるのではないでしょうか?

長年ディベートを啓蒙してきた私にとって、とても感慨深い発見でした。

なお、このブログは、弊社メルマガに登録していただければ、ご覧いただけます。
メルマガ申込みフォーム(無料)

ディベート教育株式会社では、次のような企業研修を行っております。ご参考まで。
————【ディベート企業研修例】————
ディベート研修: 総合的ビジネス力習得
ディベート研修 管理職向け
ディベート研修: 切れる英語力習得

企業研修の総合案内